1-2-1 第十五話 原虎胤さんのお屋敷、ご訪問!
お待たせしました。武田二十四将の一人、原虎胤登場です。
天文十八年四月上旬 夜 場所:甲斐国 甲府 富士屋
視点:律 Position
平次「ねぇねぇ、ご当主さま~」
夕食後に平次が話しかけてきた。
律「あ、ご当主ってアタシ!?なんだか呼びなれないわね……」
アイツとアタシは二人で店の共同代表ってことになっている。
平次「実はちょっと伝えたいことが……」
そう言って律を引っ張って二人きりになった。
律「一体どうかしたの?」
平次「実はお使いの途中で小林屋の連中に会ったんだよ」
律「小林屋というのは?」
平次「甲斐の東側を拠点としている馬借の店だよっ。その店の連中が、最近ではどんな馬でも奉行様が高く買い取ってくれるから、うちの店は万々歳だって酒場の辺りでうるさかったんだよ……」
律「そんな……富士屋とは正反対じゃない!」
平次「どうもそうみたい……、ところで……何かご褒美は?」
平次がねだるような目で見てくる。
律「はぁ……、子供のうちからそんな図々しいようじゃあ、先が心配だよ」
平次「毎度~」
銅銭を一枚渡すと平次は戻って行った。
でも顔があまり知られていないあの子だから、探れることもあるかもしれない。
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翌日
京四郎が出かける準備をしているのを見て、律は慌てて話しかける。
律「えっ、出かけるの?待って、アタシも支度するから!」
京四郎「いや、いい」
律「どうして?原虎胤様の屋敷に行くんじゃないの!?」
京四郎「今日は行かないよ。屋敷に行くのは明後日だよ。昨日、平蔵さんがアポを取ってくれた」
律「はあ……、じゃあ何をしにどこへ?」
京四郎「聞きたい?」
律「そりゃ、もちろん!」
京四郎は咳払いをする、
京四郎「それはだな……、ひ・み・つ」
律「別に隠すほどの事でもないでしょ!」
京四郎「まぁ、また今度のお楽しみってことで……」
そういって、そそくさと出かけてしまった。
仕方なく律は、この日はお留守番となった。
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今日は原虎胤様のお屋敷に行く日だ。
早速、平蔵さんと一緒に歩いて向かう。
武家屋敷は甲府の町の北の方に位置する。
律「わかったわ。歌集を使って値上げの取引をするつもりでしょう?」
京四郎「いや、歌集を取引材料にする所までは正解だけど、そこからは違う。仮に一時的に値上げに成功しても奉行が変わったら意味がないし、小林屋はそのまま競争相手として居座り続けるだけだ」
律「そう言われれば、確かに」
そうだ、つかの間の改善では、せっかくの甚内さんの歌集が無駄になってしまう。
原虎胤様の屋敷にたどり着いた。
下男に屋敷の庭に通されると、二人の老将が弓で勝負しているようだった。
平蔵「ご無沙汰しております。原美濃守[1]様。」
原虎胤「おう、平蔵か。久々よな」
平蔵「こちらが、うちの店を継ぎました京四郎と律にごいす」
京四郎「竹屋改めまして、富士屋の当主松本京四郎にございます」
そう言うと、京四郎はリュックから何やら取り出した紙の様な物を、原さんに渡す。
京四郎「こちらは、私どもの名刺[2]になります」
名刺!?アンタ、もしかして昨日店にいなかったのって、それを作っていたから!?
まぁ確かに、ビジネスパーソン必須のアイテムだけどさぁ!
律「あ、山本律です。」
あっけにとられていたので、若干雑な挨拶になってしまった。
原虎胤「ふん……。して何用か?」
気難しそうな人だ。50代くらいだろうか?
律「実は……桑原甚内さんから冷泉卿の歌集を預かりまして、原虎胤を頼れと言われたもので……」
原虎胤「さて……どうだか……。たまたま歌集を手に入れた泥棒ではないのか?わしならば騙せると思って来たのであろう!?ご恩賞目当ての盗人め!」
そうして弓を構えて、こちらに矢先を向ける。
当然、かわせる距離ではない。
えっ……、甚内さん。いったいどうなってるの!?
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[1]美濃守:原虎胤が名乗った役職。美濃出身というわけでもない。
[2]名刺:まだ戦国時代には存在しない。江戸時代ごろにはあったともされる。ちなみに世界最古の名刺は、中国三国時代の呉の名将である朱然の墓の副葬品として出土している。
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二人の運命は果たして!?




