第38話 大戦犯クレメンス(追放側視点)
第二章は第26話からです。
今回は久々の追放側視点になります。
引き続き無属性魔法使いをお楽しみください。
クレメンスが妖精を捕まえ換金していた一方でイシュタッド王国ではロクサーヌ王国にて死体が見つからなかった事を不審に思い国王陛下はドメストに捜索命令を下していた。
「ドメストよ…彼奴の死体はロクサーヌ王国では見つからなかったようだ。」
「はっ! 私も聞いております。」
「ワシの面子を潰し、恥をかかせただけではなく謝罪の一言も無いとは……。」
「誠に遺憾に感じられますね。」
「もし彼奴が明日までに現れず、国外へ逃げていたなら罰を与えねばならんな!」
普段温厚なイシュタッドの国王陛下はクレメンスに対して御立腹の様で怒りを顕わにしていた。
その頃、クレメンスはというとサーメイル王国のギルドで風呂場を借り汚れを洗い落としサッパリしていた。
「ふぅーい、これくらい洗えば磯臭さは消えただろ!」
(ったく……あの店、俺様が臭えからって理由だけで追い出しやがって! 客を何だと思ってやがる!)
「にしても、先に服を買ってて良かったぜ。」
クレメンスは今有る金銭に目をやり、難しい顔で呟く。
「残り6400ゴールドか……ぼったくりも良いとこだな……。 ロクサーヌ王国に大剣を置いてきちまったし武器も買わねえといけねえのに……。」
仕方なく始めに訪れた店とは別の店に入り、食事を摂る事にするがスペシャルセットと書かれたメニューに惹かれ3000ゴールドを払い食べる事にした。
「中々、美味そうなのが有るな! これにするぜ!」
「有難う御座いまーす! スペシャルセット入りましたー!」
「おう、任せときな! 腕によりをかけてやるぜー!!」
厨房からは五月蝿いくらいの大声が店の中で谺する。
「うるせぇな、この店……。」
しばらくすると肉、野菜、魚介類、穀物など、これでもかと言うほどにごちゃ混ぜにした様な料理が目の前にズドンと置かれ、せっかく風呂に入ったばかりだと言うのにソースが飛び散り服が汚れてしまう。
「おい! 何してくれてんだ、そっと置けよ! 服が汚れちまったじゃねえか!!」
「何言ってんですか! 男は黙って料理にかぶりつく~、さあ、さあ、さあ!」
(駄目だコイツ、話しの通じねえ奴だ……。)
クレメンスは、ウェイトレスを睨みつけるが話しが通じそうにないと分かると目の前のスペシャルセットを食べる事にした。
「痛ぇっ!? この魚、骨ばっかじゃねえか! 肉も何で生焼けなんだよ!? それに野菜も硬ってぇ……。」
「あっちゃ~、お客さん全部外れ引くなんてついてないね~。」
「ああ!? 外れって何だよ?」
「スペシャルセットは、お客さんが引いたみたいに大外れと全てが最高に美味しい大当たりがあるの!」
「ざけんじゃねえ! 誰がこんなもんに金なんて払えるか!!」
あまりにも、いい加減な態度に腹が立ちクレメンスは金を払わずに店を出ようとするが後ろから物言わない殺気が押し寄せ、近くには料理人と思しき人物が耳打ちをしてくる。
「ふーん、無銭飲食する気なんだ……そういや肉が足りないんだよね……一人くらい消えてもバレないか……。」
その台詞を聞いただけで全身に鳥肌が立ち、仕方なくスペシャルセットに3000ゴールド支払い無理矢理にでも元を取る為、完食した。
「有難う御座いました~、またのお越しを~!」
「二度と来るか! こんな店、潰れちまえ!!」
クレメンスの手には残り3400ゴールドが残っているが、後は使い慣れた大剣を買いに武器屋へと足を運ぶ。
「へい、らっしゃい! 何にする?」
「お、良いもん有るじゃねえか! こいつは幾らだ?」
「お兄さん、お目が高いねぇ! そいつぁ伝説の鍛冶職人の最後の一振り! 特別に3400ゴールドでどうだい?」
「3400ゴールドだと!? もう少し安くできねえのか?」
「そう言われてもねぇ、伝説なんだ……これ以上はまけられねぇな!」
悩むクレメンスだったが、伝説と聞いて衝動を抑えられなくなり二つ返事で大剣を購入し金が底をつくのだが彼には、まだ金を稼ぐ方法が残っていた。
「うし、これで魔物討伐で稼ごうと思えば稼げるな。 早速、良い感じの依頼がねえかギルドにでも行くか。」
ギルドの中は妖精で金を稼ごうと話し合っている者や夜に子供が連れ去られてると言って噂話でいっぱいだった。
「妖精ねぇ、さっき捕まえたのが最後なんじゃねえか? 全く持って他には見ねえし。 お、何だこれ……ナヤルック村近辺に出没する巨人退治? 面白そうじゃねえか!」
クレメンスは依頼書を手に取るとギルドの受付嬢に渡し受注した。
「あー、この依頼……本当に受けるんですか?」
「勿論だとも! 50万ゴールドも懸賞金がかかってるならSランク冒険者の俺様ぐらいじゃねえと倒せねえだろうからな!!」
「Sランクの冒険者でしたか……、そう言って帰って来た人が一人もいませんが本当に受けるので?」
「やれやれ、俺様は他の無能な冒険者共とは一線を画する存在だぜ? アンタは黙って仕事しりゃ良いんだよ、だーはっはっはっ!」
「分かりました、では無事を祈ってますね。」
受付嬢は呆れながら受注処理を済ませクレメンスに依頼を受けた事を証明する為のタグを渡す。
「さーて、いっちょ巨人退治にでも行きますか!」
クレメンスはサーメイル王国をでて北東にある巨人の目撃情報のあるナヤルック村へと移動している最中、黒い影の妖精を発見する。
「何だ、見たことねえ妖精だな……こいつ捕まえても1万ゴールドだし巨人退治して50万ゴールド手にした方が明らかに楽だな!」
小言を言いながら先へと進むと影妖精は、いつの間にか大群でクレメンスの周囲を飛び回っていた。
「おいおい、飛びすぎだろ? 巨人退治するよりこいつら捕まえた方が大金持ちになれるんじゃねえか?」
そんな事を考えていると遠くの方からズシンズシンと大きな音をたてて三メートル程の影が近づいて来る。
「おいでなすったな! テメェが噂の巨人か? 思ってたより小せえんだな!」
「何だオメエ、おれっちと遊びたいのか?」
「はっ、遊びで終われば良いがな! 一撃で楽にしてやるよ!」
クレメンスはバクムーマに対し武器を構え斬りつけ続けるが全く効いてはいないのだが、何故か推してると勘違いしていた。
「どうだ? 痩せ我慢したところで限界が来るのは分かってるぜ! 留めだ!!」
バクムーマは馬鹿を見る目でクレメンスを見ながら周囲の影妖精に左手でサインを出し鱗粉を振り撒かせ眠らせる。
「何だ、急に……眠気が………ぐぅ…………。」
「こいつ頭おかしいんじゃねえか? ん?」
バクムーマは眠らせたクレメンスを持ち上げると夢を覗き込み息を吸うように夢を喰らう。
「こ、これは! 今まで喰ってきたガキ共の夢に負けず劣らずのでかい夢を見やがる! 良いね、良いねぇ……いただきまーす!」
クレメンスの見る夢を気に入ったバクムーマは、そのまま眠ているクレメンスを丸呑みにすると三メートルから五メートル程に巨大化するのであった。
次回はバクムーマとの戦いになります。
いつも、お読みくださり有難う御座います。
楽しんでいただけましたら幸いです。
 




