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8話 諸侯会議

1.台詞多くなったので書き方変えました。

2.似非関西弁注意。


それでは8話です。お楽しみいただけたら幸いです

 勇者による魔族領侵攻。

 それは、勝手気ままに暮らしていた魔族中に、大きな衝撃をもって知れ渡った。


 それまでにも、魔王を頂点とし、魔族の士族たちがそれぞれの領地を治めるという形で一応の統制はあった。最低限の交流はなされ、小競り合いはありつつもそこそこ平和だった。

 

 だが、勇者をはじめとする征魔軍の侵攻の前に、魔王は魔族たちをまとめあげた。士族の長と交渉し、軍を作り上げ、人間たちとの戦いに挑んだ。






 魔王城にある、とある一室 。

 真ん中には長大な机が置かれ、壁際にはメイドたちが控えている。

 いまからここで行われるのは、魔王軍の主だった面子による会議だ。


 最初に入ってきたのは、すらっとした背の高い美男子。さらさらとした灰色の髪を肩ほどまで伸ばし、さながら貴公子のような風貌。その甘いマスクは女性の心を掴んではなさないだろう。

 魔王軍第四師団長、ルガル・アルフノク。若くして誇り高き人狼たちをまとめあげる最強の狼。優しげな振る舞いとは裏腹に、魔王軍の中で最も苛烈な男。


「どうやらまだ私しか来ていないようですね」


 少し困ったようにつぶやくと、優雅に椅子に座る。


 次の来訪者は、天井から現れた。


 上半身は長い長い黒髪の妖艶な美女。下半身は大きな蜘蛛。

 魔王軍第三師団長、アラクネ。種族名をその名に冠する唯一の女。古よりその名をかたられる生ける伝説。蟲、と呼ばれる者たちを束ねあげる。


「久しぶりね、ルガル。相変わらずかっこいいわねぇ」

「お久しぶりです、アラクネ様。お変わりなく美しいですね。最近はいかがお過ごしでしょうか?」

「そうねぇ、最近だと、アリアちゃんをからかって遊んだりしてるかしら。反応が良くて楽しいのよねあの娘」

「あぁ、聖女の」

「そうそう。あなたも一回会ってみたらどうかしら? いい娘よ」

「そうですね、この後にでも一度」


「やー遅れてすんません! ちょっとどたばたしてもうてなー」


 あわただしく入ってきたのは、黒いローブに身を包んだ骸骨。邪悪な瘴気を身にまとい、色濃く死の気配を漂わせる。

 魔王軍第二師団長、カルワーリア・デル・クラン・エソー。ノーライフキング、命無き者たちの王。あらゆる魔法を極めつくし、命すらもその手に操る。


「やーやーみなさんお久しゅう! 元気にしてはりましたやろか」

「お久しぶりですカルワーリア様。人間たちがうるさいことを除けばまぁいつも通りですよ」

「あーやつらはうるさくてかなわんからなぁ。あきまへんわ。しかし、最近めっきり冷え込みましたなぁ。骨身に染みる寒さはこういうことやって、ほんまようわかりましたわ。それこそダイレクトにこたえますわー」

「ははは、そうですね」

「あなたの駄洒落の方がよっぽどさむいわ。あなたの住む洞窟と違ってこっちの方は暖かいのに、一気に冷えたじゃない」

「おっさんは親父ギャグ言われへんと死んでまう種族やさかい、堪忍したってくださいな。これでもなんぼか場を和ませようとしてはるんですがなぁ」


 カタカタと音を立てて笑うカルワーリア。珍しく青筋をたてるアラクネ。柔和な笑みを浮かべるルガル。

 もはや恒例のようになっている小競り合い。互いに理解しているため、大事になることはほとんどない。


 続けてドアを開けて二人の人物が到着した。


 人二人分はあろうかという巨大な体躯。血のように赤い肌は、まるで倒した相手の血が染み込んだかのよう。二本の黒く長いつのを生やしたその顔は不機嫌そうに歪められていた。

 魔王軍第五師団長、ヘムート・クラハーク。荒野の荒くれ、鬼種を束ねる鬼王。逞しいその体躯をもって数多の敵をなぎ倒す。暴力の化身。


 その後ろから入ってきたのは、これまた筋骨逞しい男。豊かなひげを蓄え、作業着を着流している。ヘムートとは対照的に、その口は楽しそうにゆがめられていた。

 魔王軍技術班班長シド・アルベド。低身長しかいないはずのドワーフ族の中で、何がどうなったのか大きく成長した変わり者。天才的な職人。その手に作れぬものは無し。


「あらあら、どうしたのヘムート。そんなに不機嫌そうな顔しちゃって」

「どうしたもこうしたもねぇだろうがよ! 人間どもが迫ってきてるってのに呑気に会議だと? そんな悠長なことやってねぇで前線に出て人間どもをぶっ殺したほうがよっぽど有意義だろうよ!」

「がはは、まぁそう憤るなよ。魔王様だってなにかしらの考えがあるからこうして集めなさったんだ。それともおめぇ、魔王様にそんな意味ねぇことすんなって言う気か?」

「ぐ……まぁそれもそうだろうけどよ! ったく、さっさと終わらせろって話だ!」


 荒々しく椅子に座るヘムート。体の大きい彼のために特別作った椅子であるのだが、あまりの勢いにギシギシと不穏な音を立てる。

 シドはその隣に座る。筋肉二人が並んだ姿は非常に暑苦しい。


 そして、集合時間ちょうど。扉を開けて、三人が到着した。


 燃えるように逆立つ赤髪。筋肉質のがっしりとした体躯を、金の刺繍された豪奢なローブで覆っている。その身から漏れ出すのは、圧倒的覇者のオーラ。

 魔王軍第一師団長、ガランディア・グラノルトース。魔族領のなかで最強を謳われる竜種、それらをたばねる頂点に君臨する最強の火竜。魔王に続き、二番目に魔族領で強い男。その拳は陸を砕き、そのブレスはすべてを溶かす。


「全員そろっているようでなによりだ」


 ガランディアが口を開いた瞬間、部屋の中に緊張が満ちる。名目上は軍の師団長の立場は平等。しかし、この圧倒的覇者の前ではその建前などを通せるものなど、最も永く生きているアラクネと、魔王のみだ。


「久しぶり、ガラン。あなたも相変わらずいい男だこと。強い男ほどいい男が多くてうれしいわね」

「貴様は何年たっても変わらんな」

「見つめあってねぇでさっさと入れ! おっさんデカいんだから道ふさぐことになるの理解しろっ」

「おぉ、すまないな坊主」


 ガランディアを蹴り飛ばしながら、入ってきたのはおどろおどろしい山羊の面を被った少年。

 闇のごとく黒いローブを羽織、豪奢な杖を携えている。

 その少年こそ、魔族領最強の男。魔を統べる魔王。魔族としては若いながらも、圧倒的な力によって魔王の座につくことを認めさせた規格外。


 その後ろからついてくるのは、小さな老人。しわくちゃになった顔は好好爺のように穏やかな笑みを浮かべている。

 宰相ゼフ。その卓越した頭脳により、脳筋ばかりの魔族を軍隊と呼べるものに仕立てあげた影の功労者。また、ひとたび杖を持てば、歴戦の猛者ともなる。


「全員いるな、よしよし。ほらおっさんいつまで立ってんだ、さっさと会議始めんぞ!」

「魔王さま、ガランディア様相手にそのようなしゃべり方では……」

「いや、気にすることはないぞ、ゼフよ。魔王さまは我が主と認めた男。些細なことは気にすまい」

「寛容なお心に感謝いたします」



「さて、それじゃあ会議を始めるぞ。とりあえず現状報告だな。ヘムート、人間たちの様子はどうだ」

「変わらずだ。徒党をくんで、やれ正義は我らにだの、聖女様を返せだの叫びながら突っ込んでくるな。勇者がいない人間軍など恐るるに足らん」

「ふむ、そっちの方はお前に任せて大丈夫だな?」

「おうよ! 俺ら鬼族で必ずや人間どもを殺し尽くしてみせらぁ!」


 威勢良く叫ぶヘムート。実際に、彼の力ならば強がりでなく人間たちを殺せるのだろう。ここまで手こずっているのは、人間たちの数が膨大なためだ。

「それじゃ次は――」


 淡々と報告を済ませていく。魔族領に住まう者達の動向、反乱分子の抑制、作物の出来栄えなどなど。

 魔族とて、生きている。そのあたりは人間となにもかわりはしない。


 一通りの報告が終わってから、本題と銘打って魔王が切り出した。


「今回の会議で一番大事なことだな。勇者パーティーが城まであと三日くらいのとこにきてるな。あぁ、別にヘムートを責める気は全然ないぞ。あいつらはこそこそと動いてたみたいだからな」


 前線から勇者の侵入を許すという失態を犯したと知らされ、焦るヘムートをなだめ、魔王の話は続く。


「まぁ、今までと対応は変えない。奴等の狙いが聖女奪還なのは間違いない。城までまっすぐくるだろう。だから、城で迎え撃つ。それだけだ」


 敵が迫っていようといまいと、魔王は余裕を崩さない。そこにあるのは、魔王としての絶対的な自信。


「それでだ。人間を抑えてるヘムートはそのまま。あとの奴は城に残って迎撃だ。まぁ、念のためだな」

「俺だけ勇者と戦えないのか!? 俺が人間どもと戦って負けるとでも言うのか!?」

「誰もそうは言ってねぇだろう、ヘムート。お前には前線で人間を止めろと命令したはずだ。それとも、鬼族ってやつは俺の命令を無視して勝手に戦うとでもいうのか?」


 豹変。部屋のなかが重苦しい殺気で満ちる。先ほどまでの軽い調子はなりを潜め、圧倒的覇者の威圧が顔を出す。

 決してヘムートが弱いわけではない。ただそれ以上に、魔王が規格外なだけ。ヘムートは脂汗をながしながら首を垂れた。


「ぐっ……。鬼族は強者には服従する。俺が悪かった」

「申し訳ありません、だろ?」

「がっ! も、申し訳ありません」


 ヘムートが平伏するのを確認してから殺気を収める。雰囲気が元に戻ったことを悟り、一息つく一同。


「しかし、そんなに戦力を投入するほど勇者とは強かったですかね? それほどでもなかったと記憶していたのですが」


 疑問を呈すルガル。その疑問は、この場にいる全員が思っていることでもあった。


「念には念を、だな。前に俺が奴ら襲った時よりも、さらに強くなってやがる。神、とやらの加護で、怪我の治りも異様に早いし。ま、実質ただの特殊体質なんだがな」

「とは言っても、脅威には違いありませんがね」


 魔王の言葉に苦笑を返すルガル。


「それと、俺一人でやりあうよりも、他に何人も強い奴がいるのを見せて奴らの戦意を折るのも狙いだな。人間どもとこのまま戦争しても互いに疲弊するだけだし、それよりも和平した方が利は大きい。俺らにない技術を奴らが持ってることもあるしな。ここらで戦力の差を見せつけて、降伏させちまおうって話だ」

「なるほど。そのためにですか。たしかに人間を全部殺すってのも骨ですからねぇ。我らが出ると、地形が変わってしまいますし」

「あぁ。あんまり影響及ぼすのもな。楽して多く利益を出すのが一番方法ってやつだ」

「そらええですなー。商人の基本でっせ。安く買って高く売る! それが最も利益を出すコツっちゅーやつでんな。魔王はん、やっぱりワイと一緒に商人目指しまへんやろか? 才能ありまっせ」

「いや、そいつはやめておくよ」


 熱心に勧めてくるカルワーリアを苦笑交じりにかわす魔王。幾度となく誘われたものだが、魔王に商人をやる気などない。


「じゃ、そんなとこだ。なにかほかにある奴はいるか?」


 各々、もう話すことはないと首を振る。


「ないなら解散だ。お疲れ!」


 魔王の号令でぞろぞろと解散する。

 そうして、会議は終わった。



 



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