大探偵『勝田 麟太郎』参上!!~グリーンランド編~
ワイの名前は、勝田 麟太郎。
日本、いや世界に轟く大探偵...になることを夢見て、大阪の雑居ビルで今日も浮気調査とか迷い犬探しに奔走しとる探偵や。
孤高に生きるストイックな生活を続けて、早十数年。
実家戻っても、親から孫の顔見たいとか言われることがなくなってきた、中年の独身貴族や。
ワイは今、大富豪「多田 和正」の遺産相続争いに巻き込まれとる。
多田のおっさんが残した遺言に、暗号を解いたら全財産を相続させるみたいな内容が書いてあって、相続人の一人から暗号解読依頼を受けたっちゅうわけや。
誰もが解けない暗号を華麗に解いて、颯爽とその場を去る...みたいになれればいいなとか思ってた頃が懐かしいわ。
いや実際、暗号自体はワイが華麗に解いたんや。
ただ、暗号を解いて出てきた遺産ってのが一つやなかった。
解いても解いても次のが出てきよる。
しかも、日本だけで終わらんかった。
アフリカ行ってサウジアラビア行って、で、今がここ。
グリーンランドや。
グリーンランド。
正直な話、全く馴染みのない場所。
まさか、こんなに寒いとは知らんかったわ。
コペンハーゲンに寄ったから、勝手にヨーロッパにあると思っとったわ。
独立した国やなくて、デンマーク領らしい。
そやからコペンハーゲン空港に寄ったんか...なるほどな。
まぁ、ええわ。
結局やること変わらんし。
グリーンランドがどんなとこか分からんけど、ちゃっちゃと片付けて次の指輪見つけに行こうや。
...にしてもサーヤはんら、遅いな。
何か作業があるとか言うてどっか行ったけど、まだ終わらんのかいな。
そんな風にぼやいていたワイ。
しばらくボケーっとしていたら、人がガヤガヤし出した。
「サーヤはん、戻ったんか。そろそろ行かんか?」
そう声をかけたワイに向かって不機嫌そうな声でサーヤが答えてきた。
「無理。当分、動けないわ。」
「はぃ?」
「使えないのよ、アプリ。電波が全く入らないからスマホに電源入れても意味ないのよ。」
えーっと、どういうこと?
サーヤはんが言ってるアプリっちゅうのは、サーヤはんの会社で作っている「歩数特定アプリ~地球の裏側まで行ってみ~」のことやな。
起点から方角と歩数を入れると探し物の場所を特定するっちゅう、何のために作ったのかよう分からんアプリや。
ま、今回の指輪探しには役立っとるけどな。
「電波が入らんっちゅうのは、どういうこっちゃ?今時、大体の所は電波入るやん。ジャングルでさえ電波入っとったよな。なんで入らんのや?」
黙り込むサーヤ。
「グリーンランドってジャングルより近代化されとるやん。意味分からんのやが?」
「...衛星が故障したみたいなのよ。」
「衛星?」
「うちの製品は全部、衛星電波を利用して動かしてるの。だから衛星が止まるとどうしようもなくなるわ。こんなこと今までなかったのに。」
「衛星?衛星っちゅうたら宇宙に飛ばして周回させとる衛星か?でもあれって、確かアメリカからの電波を受信して使うもんやなかったか?壊れたってかなりヤバい状況じゃね?全世界のGPSが使えんようになるで。」
「うちの衛星が壊れたの...。」
サーヤがぼそっと小さな声で呟く。
「サーヤはんのとこの?」
「多田家で打ち上げている衛星だけが壊れたみたい。他の国のものには影響ないわ。」
「へ?」
え、衛星って、個人が勝手に打ち上げていいもんなんか。
知らんかったわ。
アホみたいな金かかるんやろうが、さすが多田財閥。
で、その多田衛星が壊れたと...。
アプリが使えないっちゅうことは場所特定が出来ないってこと?
いやいやいや、それはヤバすぎやん。
グリーンランドってジャングルほどやないけど、それでも日本の何倍あると思っとんねん。
冗談やないで...ってあれ?
そういやぁ、サウジアラビアでアプリを使ったから、ここに来たんだよなその時のデータがあれば、特定できるやん。
全く、冗談がきついで~
「サーヤはん、サウジでここ特定したんでっしゃろ。そん時のデータ出せば場所特定できますやん。データくらいやったら電波使えんでも取り出せるでしょ。さっさと行きましょうや。」
「ないのよ...データ。」
「えっ?」
「...とにかく、しばらく動けないわ!」
そうワイに怒鳴って向こうに消えていくサーヤ。
「な、なんでや。なんでデータないんや。それくらい取っとくもんちゃうんか。なぁ、三崎くん?」
パッと振り返りながらワイは声をかけた、が、誰もいない。
あれ?いつもならここら辺りで後ろに立ってるはずやんやけどな。
「説明しましょう。」
ビクゥッ!
ワイの右耳にボソッとした声が聞こえてきた。
な、なんでそっち?
「せ、説明してくれ。」
「はい。実は、サウジアラビアでサーヤお嬢様はもちろん、我々もテンションが上がり過ぎてしまいまして。指輪が見つかったその場でアプリを使い次の場所を特定したのはいいのですが、その後の記憶があまりございません。ほぼ無意識にグリーンランドまで来てしまったのです。」
そういやぁ、何時間もマイムマイム踊ってゾーンに入ってたな、こいつら。
完全にトリップしてたってわけかい...アホか。
「えーっと、ってことはマジでデータないってことやんな?どうやって探すんや、ここバカでかいで。衛星直るまで待つっちゅうんか?」
「それが理想的なのですが、どうもすぐ直るような故障ではないようです。何か他の方法がないか、最適解を現在検討中ですので、申し訳ございませんが、しばらくお待ちください。」
そう言ってサーヤの元へ走って行く三崎。
はぁ...マジか。
どうするんや、この状況。
いつ終わるんや。
ワイはいつ日本に帰れるんやろな...。
『まるまり』...今どうなってんのやろ。
1時間経過。
やることもなくボケーっとしていたワイの元にサーヤがやってきた。
「サーヤはんか、方針は決まったんか?」
「えぇ、決まったわ。悪いけどしばらくここで滞留よ。」
「しばらくっていつまでや?」
「そんなに時間はかからないわよ。1か月もかからないと思うわ。」
「...長いやん。衛星の修理ってそんなにかかるんか?」
「修理はすぐには出来ないわ。それこそ1か月でどうこう出来るもんじゃないしね。」
「修理しないんでっか?えーっと、ほなどうするんで?」
「人海戦術で探すことに決まったわ。」
「じ、人海戦術?」
そう言ってサーヤとボディガードたちを見る。
ワイを入れても10人程度。
「この人数では無理でっしゃろ。いやほんま、どうするんで?」
「日本から招集するわ。」
「へっ?」
スマホの電波が使えないってことで、国際電話を使って日本に連絡入れてたようだ。
日本全国に散らばっている、サーヤの私設部隊を呼びつけることにしたらしい。
「彼ら彼女たちが今の仕事を一旦止めて、私に合流するのに1か月はかかりそうなの。だからそれまでは動けないのよ。」
なるほど、それで1か月か。
まぁ、しゃあないの。
ワイらだけで探すなんてどう考えても無謀やし、少々時間かかっても人集めても結果的に効率的になるやろからな。
...................
1か月が経った。
さすがに1か月も過ごしていると何となく良い所だと...は思えなかった。
寒いんだよ、普通に。
ワイ、寒いの苦手なんよ。
暑すぎるのも嫌やけど、ここは寒すぎる。
氷点下とか...北海道なんかよりはるかに寒い。
はよ、違うとこに行きたい。
そう思ってた頃、周辺がガヤガヤし出し始めた。
いつの間にか、大量の人間がいた。
な、何人いるんや、これ?
サーヤはんが私設部隊を呼ぶとか言っとったけど、何人呼んだんや?
「鱗太郎。」
サーヤがワイを見つけて、こちらにやってきた。
「うちの者が揃ったから、そろそろ捜索準備に入るわよ。」
「あぁ、分かったで、やっとやな。ところで、何人呼んだんや、滅茶苦茶人多いんやけど?」
「3000人はいるわね。」
「3000人?多くない?」
「多い方が、効率的でしょ。」
いや、まぁ、そうなんやけど。
そんなにいるんか私設部隊って。
日本全国に散らばっているって話やったけど、普段何やってるんや、コイツラ?
あれ?いつも一緒にいるボディガードたちが指示出しとる。
あれ、ひょっとしていつもいる奴らって結構偉いさんだったりする?
ハッと自分の周りを見渡すワイ。
誰もいない、いや油断するのはあかん。
...さすがに来ないか、三崎くんも指示を出しとるし。
「どうしたの、鱗太郎?」
「いや、気にするな、大したことやない。それで、このメンバーで探すってことやけどいつから始めるんや?」
「準備が出来次第、出発するわ。だけど、私と鱗太郎はお留守番ね。」
「えっ、そうなんで?場所特定できたら動くってこと?スマホ使え...あぁ、無線でっか?」
「そうよ。見つかり次第連絡取って、そこに行くわ。それまではここで待機よ。」
それから1時間も経たない内に、彼らは5人のチームに別れて捜索に向かっていった。
...................
「鱗太郎。」
ワイを呼ぶサーヤの声がした。
「なんでっか?」
そう答えるワイに向かってサーヤが話かけてくる。
「あんた、お腹空いてない?今、この地域の名産が手に入ったのよ。」
「名産?グリーンランドの??」
「そうよ、ここでしか食べることが出来ないもの。日本はもちろん、世界のどこへ行っても簡単には食べることが出来ない食べ物よ。」
「ほ、ほぉ、そんなもんがここにあるんか。限定品かなんかか?」
「もちろん限定品。ここに住んでる人でも滅多に食べることが出来ないわ。何かお祝いのときにだけ食べる、凄く特別な食べ物よ。」
「そんな特別感のある食べ物かぃ。そりゃええのう。でも、何か祝い事なんかあったか?」
「前祝いよ、遺産相続の。次で3個だし、そろそろ先が見えてきたしね。」
「ほうほう、それもそうか。ほな、ワイもご相伴させてもろて...。どこにあるんや、それ?」
「こっちには持ってこれないわ。広い場所が必要な料理になるから、場所を作っているのよ。一緒に来て。」
そう言い、ワイを誘うサーヤ。
ワイは何も考えずについて行った。
サーヤについていくとかなり大きめのテントが張ってあった。
テントの周りには何もなく、テントだけがぽつんとある。
「このテントの中か?何もないんだな、普通祝いならもうちょい派手にせんか?」
ふと思ったことを呟くワイ。
「いいからいいから。とても味わい深い食べ物よ。私も大好きなの。さ、早く入って。」
そう言い、ワイをテントに放り込むサーヤ。
「そ、そんな無理やり放り込まんでも。うん?何やこの臭い?」
テントに入ったワイ、妙な臭いに戸惑う。
ワイがテントの中に入ったことを確認し、サーヤがテントのチャックを閉め鍵をかけた。
...鍵?テントに外から鍵?
普通、中からかけるもんとちゃうんか?
外からかけたら、出られへんやんけ。
まぁ、ええわ。
戸惑いながらもテントの中を見る。
中央に何人か人がいる。
おや?あれは三崎くんやないか、朝から見てないなと思ってたらここにいたんか。
「おーい、三崎く...ん...、うっ!」
な、なんや、この臭い?
何かが腐ったような、糞みたいな強烈な臭い。
三崎くんのいる方から臭ってくる。
「勝田様、ようこそ。ささっ、こちらにどうぞ。ちょうど食べごろですよ。」
三崎がこちらに歩み寄りながらそう語りかけてくる。
「臭い!近づくな!何やこの臭い!?」
「最初は慣れないかもしれませんが、大丈夫、その内慣れますよ。どうぞお食べください、とても美味しいですよ。」
そう言って、手に持っているものを差し出す三崎。
「や、やめい、それを近づけるな!もういい。ワイは外に出る!」
急いで踵を返す。
テントの外に出ようとしたが出ることが出来ない。
そういえば、さっき外から鍵かけていたな...っておい!
「ふ、ふざけるな!開けろ!ここから出してくれ!」
喚き散らすワイの体を押さえつけ、ソレをワイの口の中に放り込む三崎。
ウギャァァァッッッッッ!
...................
...あれ?
ワイは何を...??
確か指輪探しにグリーンランドに来て。
何か大切なことをしていたような...なんだっけ?
「あら?目を覚ましたわね、鱗太郎。」
声をする方を見ると、サーヤがいてこちらを覗き込んでいた。
...あ!
思い出したわ、ワイはサーヤにテントに放り込まれて。
「サーヤはん、何してくれとんのや!死ぬかと思ったで。」
そう怒鳴りだすワイに対して、「大げさね。あんなの大したことないでしょ。それに食べたいって言ったのはあんたよ、鱗太郎。」
「うっ、それはそうやが。あんなもんとは言うてなかったやろ!」
「言ったわよ、この地方でしか食べることが出来ない特別なお祝い料理だって。嘘はついてないわよ。それにアレ、臭いはキツイけど、美味しかったでしょ?」
「...ま、まぁな。確かに味は濃厚で美味かったけど。アレ、何や?」
「キビヤックよ。聞いたことない?」
「キビヤック...あぁキビヤックか。臭いで有名な。」
「そうよ、そのキビヤック。グリーンランドかアラスカでしか食べることが出来ないわ。良い思い出になったんじゃない?」
「良い思い出になんかなるかぃ!まぁ、話のネタには出来そうやから、それはそれでアリやけどな。」
「ま、ええわ。それより、まだ捜索チームからの連絡はないんか?」
そう言いながらサーヤの元へ行こうとしたワイ。
ゴツン
痛。何や、壁?
透明な壁みたいなもんがあるやん。
あれ?ワイ、透明なガラスに囲まれた部屋に閉じ込められとるやん。
「な、何やこれ?」
「悪いけど、近寄らないでくれない。臭いのよ。」
「はぁ?」
「キビヤック、美味しいんだけど、臭いが続くのが難点よね。」
そうブツブツ独り言を呟くサーヤ。
「悪いんだけど、しばらくそこにいて。大丈夫、トイレやシャワーは専用のブース作ったからそこ使ってくれていいから。」
「ちょ、ちょっと待てや!いつまでこんなとこに入っとかなあかんねん。」
「1週間もすればとれるわ。三崎もそこにいるからしばらく一緒にいてね。」
「私もいますよ。」
後ろから声がした。
お、おお、いたんかい。
「しばらくここで過ごしましょう。いずれ消えますので、それまでのんびりしましょう。」
...いや、のんびりできんやろ。
ガラス張りやでここ。
めっちゃ外から見えるんやけど。
あれ?トイレとかシャワーが使えるって言ってたけど。
まさか、それも丸見えってことは...ないよな、信じてるで。
...................
1週間経ち臭いが取れた。
ワイらは解放された。
全く、ほんまにふざけた話や。
ま、これもまた経験。
良い話のネタが入ったと思えばありか。
ってなことを考えていたら、捜索チームからモニュメント発見の連絡が入った。
やっぱりあったんか、モニュメント。
まぁ、ここだけないっちゅうのもおかしいしな。
サーヤたちいつものメンバーとワイは、発見されたモニュメントに向かって行った。
そいつは、石でできたモニュメントやった。
高さ5メートルくらいで幅は3メートルくらいのモニュメント。
まぁ、いつものやつやな。
毎度毎度、よう建てるなぁこんなもん。
どうせ、許可なんて取っとらんのやろうけどな。
さっさと暗号解いてしまおうか。
「これは!?三崎、あんたこれ解ける?」
サーヤが三崎を呼んでいる。
「暗号ですか?お嬢様。...ほぉ、これは、なるほど。これなら、私でも解けますね。」
おや?今回は三崎くんが暗号解くんか。
ま、たまにはそういう回があってもええやろ。
いつもいつもワイが解くのもおもろないしな。
ゴゴゴゴゴ
扉が開く音がする。
「やるじゃない!さすが、西天満大学首席卒業だけのことはあるわね!」
西天満大学の首席?ひょっとして三崎くんって頭良い子なの?
「大したことはございませんよ。たまたまその年に選ばれただけですので。」
...ちっ、エリートかよ。ただの面白要員やなかったんか。
「次の暗号ね。三崎、これも解いて!」
「はい、かしこまりました、お嬢様。」
何か盛り上がっとるなぁ。
まぁ、ええわ。
「くっ、そんなバカな。なぜ、解けない?」
...うん?おやおやぁ?
「どうしたの、三崎?」
「も、申し訳ございません。もう少し時間をいただければ...。」
ふっ、有名な大学の首席だろうが何だろうが。
所詮は、頭でっかち野郎に過ぎないのだよ。
この大探偵『勝田 麟太郎』に解けない謎はない!
仕方ない、手を貸してやろうじゃぁないか。
「そろそろ代わろうか。ワイが暗号なんぞ、チャチャッと解いたるわ。」
「くっ、かしこまりました。それでは勝田様お願いします。」
ふふっ、任せい、任せい。
さて、暗号はっと。
『-・-・ ・-・-・ -・ ・-・-・ -・・ ・-・- ・・- ・・--・・』
「モールス信号かいな?」
「いえ、似てはいますが、違うようなのです。」
ワイの呟きにそう答える三崎。
「似ているが違う?どういうことや。」
「これを見てください。」
そう言いながら一つ目の扉までワイを誘導する三崎。
そこには一つ目の暗号が書かれてあった。
『- ... ..- --. .. / . / ... ..- ... ..- -- .』
「こちらはモールス信号でした。私でも簡単に解けまして、解答は『次へ進め』というものでした。」
「なるほど、それで次へ進んだら、さっきの暗号が出てきたっちゅうわけか。」
「はい、モールス信号だと思い、解こうとしたのですが...。」
「が?」
「CÄNÄDÄU?とかいう、よく分からない言葉になってしまいまして。」
「なぁるほどな...そういうことか。ま、この大探偵『勝田 麟太郎』に任せんしゃい。こんな暗号一瞬で解いたるわ!」
そう言って暗号を解くワイ。
ほんまに、簡単やわ。
ゴゴゴゴゴ
扉が開いた。
「嘘!?す、凄いじゃない、鱗太郎。三崎が全く分からないって言ってた暗号を本当に一瞬で解くなんて...。」
「くっ、す、凄すぎます。私では全く手も足も出なかった、この暗号を。」
そう言いながら羨望の眼差しでワイを見てくるサーヤと三崎。
「ふふっ、当たり前や、ワイを誰やと思っとんねん。」
...なんてな。
まぁ、三崎くんが知らんのも仕方ないやろな。
和文モールスなんて、今時誰が分かんねん。
このデジタル時代、モールス信号自体マニアックになってる。
国際モールス信号を、三崎くんが知ってたのはほんま意外やったが、さすがにこっちはな。
前から思っとるけど、多田のおっさん、マニアック過ぎるって。
「ワイのことはどうでもええんや。それより指輪やろ。そっちが大事ちゃうか?」
扉が開いて出てきたいつもの宝石箱に、指輪が1個入っている。
「えぇ、そうね。では早速。エンゲージ!!」
サーヤの大いなる言葉に反応し、針が飛び出る3個の指輪。
左手が血で真っ赤に染まる。
痛そうやな。
何回見ても、慣れんわこの光景。
サーヤはん、痛くないんかのぅ指。
めっちゃぶっ刺さっとるやん。
目がキラキラして口元に笑みが浮かんどるわ。
完全にトランス状態になっとるがな。
ほんま、変な一族。
ま、これで3個目。
次はどこかいな。
そのとき、モニュメントがガタガタと震えだした。
「へっ?」
な、なんかヤバないか?
早く離れた方がええで。
「三崎くん、トランス状態になっとるサーヤはんを連れて扉の外に出ろ!ワイもすぐ離れる。」
そう言いながら扉の外に出るワイ。
続けて、サーヤを連れて逃げ出してくる三崎。
バキバキバキッ
ドスン
何かが割れる音がして、モニュメントが崩れていく。
おいおい、なんやこれ?
今までこんなことなかったやん。
なんで壊れたんや?
「思ったより早いですね。」
三崎がボソッと呟く。
「早い?」
「えぇ、実はモニュメントは役目を終えると潰れるのです。」
「へっ?いや、今までのモニュメントは潰れずに残っとったよな?」
「いえ、全て潰れました。」
「えっ?いやいや、宝箱開けても特に何も起きんかったやん...ひょっとしてあの後潰れたんか?」
「はい、アフリカもサウジアラビアも我々が離れて数時間後に潰れて消滅してしまったという報告が上がっております。」
「マジ?そうなんや、けどなんで潰れるんやろ?」
「恐らくは、証拠隠滅のためではないかと。」
「証拠隠滅?」
...まぁ、無許可やろうし、色々ヤバそうやったもんな。
「あ、でもサウジアラビアは建物の中にあったよな。あれ、どうなったん?」
「建物ごと消滅しました。もう何もございません。存在自体が消え去りました。」
「そ、存在自体が消え去った??」
こ、怖いって。何その話。建物ごと消えるとかどういうカラクリ?
意味が分からん、いや、考えるだけ無駄や。
コイツらのやることに一々反応してたら、体がもたん。
あれ?そういえば、次の目的地は?紙とか入ってるんじゃなかったっけ??
「あら、鱗太郎、どうしたの?」
トランス状態から目が覚めたサーヤがこちらに向きながら言った。
「いや、次の目的地が書かれた紙とかないんかなと思って。」
そう答えたワイに、紙を差し出してきたサーヤ。
「はい、ここに書かれてるわよ。次はフランスね。」
「...この紙、どこにあったんでっか?」
「指輪と一緒に入ってたわ。指輪を嵌める前に服のポケットに入れておいたの。」
フランス...。
確か、結構日本のアニメが好きな国だよな。
文化も食も華やかで、オシャレさんが集う国。
といっても、南の方は田園風景が多く残っていて、結構のどかだって聞いたことがある。
...あるんだろうな、モニュメント。
問題はどこにあるかやな。
南フランスなら何とかなるかもしれん。
頼むで、パリとかリヨンとかマルセイユとか。
そういう有名どころは避けてくれよ。
人が多い街にあんなけったいなモニュメントは建てんでくれ。
もう、サウジみたいな経験はしとうないんや。
...................
飛行場に着いた。
これからコペンハーゲンに行き、フランスへ向かう。
何時間もかかるからしばらく寝てていいと言われるワイ。
まぁ、次はフランスやからな。
大丈夫やろ、とりあえずはな。
「Paris-Charles de Gaulle」(パリ・シャルル・ド・ゴール空港)
...ってパリかーい。
いやいや、まだ行き先がパリとは決まってない。
さすがにこんなとこにあんなもん建てられん。
「鱗太郎、場所が特定できたわ。」
そう言いながらワイの元に寄ってくるサーヤ。
「どこや?」
何か嫌な予感がしつつサーヤに尋ねるワイ。
「パリよ。」
「えっ?聞こえんかったわ、もう一回言ってくれんか?」
「だから!パリよ!」
パ、パリやて!
あ、アホか、パリのどこにあんなもん建ってんねん。
滅茶苦茶問題なるわ、そんなもん。
嫌やで、ワイこんなとこで通報されるの。
「さっさと行くわよ。4個目の指輪を手に入れるために!」
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彼が再び日本の地を踏めることになるのは一体いつの日だろうか。
いや、そもそも帰ってこられるのだろうか。
誰にも分からない。




