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*完結* Dearest  作者: Terra
Beginning To Unfurl ~綻ぶ花弁~
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5




         *




 暗い森に、太い白銀の閃光が奔り、闇が退かされていく。光はそのまま、煙の如く宙に漂うと、再び押し寄せる闇に、そっと呑まれかける。

 それに抗おうと、光は銀の靄となり、球のように纏まった。次第に何かの姿を成し、やがて、コヨーテに変わる。




 コヨーテは銀の被毛を震わせると、足を止めた。銀の眼光越しに、木々の合間から嘲笑う三日月を仰ぐ。雲が嵩張り、月の笑みを包み隠そうとしていた。




 夏の訪れを押し退けるように、風は周囲を凍てつかせる。音を立てる木々に、他の動物達が甲高く騒いだ。銀の眼光をした飛禽(ひきん)が、雲に覆われた星々に代わり、流星を描いていく。


 彼等は宛てもなく叫び、空を騒音で濁した。眠りを忘れ、引っ切りなしにわななけば、後からまた、別の動物達が目を覚ました。木や岩の麓から飛び出した小動物達もまた、騒々しい空に威嚇しながら、牙から銀の液を細く滴らせる。我を忘れ、乱暴に土を漁り、そこら中を駆け巡っては、鼻を忙しなくひくつかせた。餌を求めるそれとは違う、もっと別の何かを欲しがるような、狂気的な行動だ。




 銀に浮かび上がるコヨーテは、岩の上から、喚き回る動物達を見下ろしていた。辺りの興奮する声に、白銀の被毛を逆立て、身体は縫い針の玉のようになる。


 再び胴震いすると、岩から軽やかに飛び降りた。岩肌から地面に鼻を擦りつけながら、のろのろと進んでいく。気になる臭いは、鼻腔の奥を貫き、脳にまで一早く達した。それは、己から行き渡らせた銀の体液のほか、熊の血、そして人の血の臭いが入り混じったものだ。


 コヨーテは、夕方に起きた、この場の騒動を聞きつけていた。熊は我武者羅に猟師を追い、嚙み殺そうとしていたものの、結局始末されてしまった。


 鼻先をそのまま、隣の土にずらす。そこには人の血が僅かに付着し、湿っていた。目を凝らすと、まるで霜が降りたような、白みがかった汚れが紛れている。否、銀に瞬く細かな光が、確かにこびりついていた。


 コヨーテの眼光が、更に細く絞られる。その細い光は、歪な血液の在り処に射した。そこに見える銀の汚れは、まるで意志でもあるのか。血と争うかのように、確かに蠢いていた。それは、みるみる血に覆い被さり、呑もうとする。黒く乾きかけた痕跡と臭い諸共、抹消しようとしているのか、音もなく地面に拡がっていく。


 その光景に、コヨーテは牙を垣間見せた。漏れ出た光が、辺りを更に照らした時、地面の蠢きに、己の銀の液を垂らした。その滴りは、狭い無音の戦場に落ちると――止めを刺すかのように、人の血を殺した。









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