うん、なんとかしたいですね。(分岐 続人形争奪戦 其の一)
うん、もうなにもかもが・・・・・・(人形争奪戦 其の捌)あたりから分岐してます。
こんにちは、シストです。
「・・・・・・はぁあっ! うっ・・・・・・」
思考を終えると待っていたのは激しい吐き気だった。
口を押さえ、なんとか耐える。
加えて酷い頭痛も追いついてきた。
「・・・・・・参ったね。やっぱりあまりやるものではない」
しかし、この代償分は得られたか。
シストシミュレーション。
今の状況を垣間見てその先を可能なかぎり予想する。
それにより頭の中の登場人物は勝手に動き出し因果律に従ってシストの知り得ない行動も取る。
あまりの情報量、僅かでも世界を動かすといっても過言ではない。
これは未来視ではない。あくまで予想で脳の処理能力は膨大。常人なら精神崩壊も招きかねない。
そのため予想されたビジョンは高速で断片的、必要ない部分はできるだけカット。
はっきり覚えている部分は限られるが。
「・・・・・・このままでは最後に僕は死ぬ」
これだけは目に焼き付いた。
しかし僕を殺したのは誰だ。
パズルのピースはいくつも抜け落ちている。
途中の経過から考えれば切り裂き円が濃厚だけど。
僕に辿り着いたって事は他のメンバー、そしてゾディファミも壊滅したって事だ。
「とりあえずこの最悪な結末だけは回避しなければならない」
こうして僕はすぐに行動を起こすことにした。
◇
ういうい、円、だ。
真っ白だった蚕が血で真っ赤に染まっている。
「馬鹿な、の、だっ!」
一人で揚羽の仇をうちに飛び出し。
そして返り討ちにあったの、だ。
最後の最後まで抵抗したのだろう。
傷は揚羽よりも深い。
「キラキラ、見損なったの、だ」
下を向く。
「・・・・・・円ちゃん、多分、違う。実は・・・・・・」
種が何かを言いかけて。
ここで私に連絡が入った。
「円ちゃんっ! 拠点がバレたっ! 早く、早く戻ってっ!」
雲美の酷く慌てた声。
「っ! 種っ!」
「うんっ!」
人形は隠してはあるが拠点に置いてある。
一応、螺苛と刺苛を置いてきたが、後は雲美のような非戦闘人ばかり。
これまで慎重に数回、移動を繰り返してたのだ。
それなのに。
襲ってきたの誰であれ今はまずい。
頼りの螺苛も刺苛も血色との戦闘でかなりのダメージを負っている。
とにかく今は拠点に戻る事を最優先。
拠点についた私達が見たものは。
外で二つの勢力が争っている真っ最中であった。
「ど、どういう事なの、だ?」
「・・・・・・片方の黒い連中は分からないけど、もう一方はゾディファミだね」
その証拠に中央で激しい戦闘を繰り広げているのは。
二本の斧を持ったツインテール。
ゾディアックファミリーの殺戮のベアトリス。
相手は。
「うぴゃぴゃ、その髪毟り取ってやるっ!」
「お断りします。これは私のアイデンティティですので」
長すぎるボサボサの髪を振り回す以前見たバーサーカー女。
そして拠点の入り口付近。
突破口を死守するように立つは。
「悪いけどもう少し足止めさせてもらうよ」
ゾディアックファミリーのボス、ニルヴァーナ。
「あらあら、これどういう事なのかしらぁ~?」
「姉さん、どうでもいいよ。早く殺そ?」
対峙するはキラキラとバールの母ちゃん、カリバことヴィセライーター。
隣のは誰だ。顔は知らんがヴィセライーター並の存在感を醸し出している。
ニルヴァーナがこちらに気付いた。
ヴィセライーター達に見つからないように目線だけで私達に合図を送る。
「円ちゃん、状況はどうあれ今は人形が最優先だよ、裏に回ろうっ」
「そ、そうなの、だ」
裏口から中へ入る。
裏口といっても少し離れた地面から、だ。
皆は、無事か。
人形は。
部屋に入ると、シスターズ全員が健在だった。
「円ちゃん、すでに逃走ルートは抑えてある、急ごうっ!」
雲美が慌てて声をかける。
他のメンバーがすでに人形を移動できるように準備をしてくれていた。
「よしっ、人形は螺苛、刺苛、種、スリーマンセル、他は各自バラバラに移動、連絡があるまで身を隠すの、だっ!」
私は逃走を見届けてから、だ。
◇
こんにちは、シストです。
今僕とタシイは再びお祖母様の元へ。
正直今の僕達では母さん達を止められない。
それは戦力的な部分もあるけど。
もっと大きな問題が。
「しかし、そうか、円さん達、瑞雀さんを退けたか」
瑞雀さんは元々父さんの子飼い部隊。
こうなった以上味方ではない。
正直、ここで少しでも瑞雀さんが行動不能になったのは大きいね。
門を潜る。
「さぁ、タシイ、僕のために死ぬ覚悟はあるかい?」
「何をおにねー様、いまさらだよ」
タシイだけじゃない、それは僕自身にも必要な覚悟。
◇
こんにちは、蓮華です。
「はぁ~、忙しいですねぇ。円さんはどこで何をしているのか」
仕事をこなす人材が白頭巾だけなので溜まっていく一方です。
噂ではあの人形を巡って殺人鬼連合、というかシストくんのお父さんと奪い合ってるとか。
どこで見たか知りませんが、人形に心を奪われた以上、シストくんのお父さんが止まる事はありませんね。
そうなると、結末は最悪な形になるでしょう。
そして、ヴィセライーター、その姉妹も動いている。それ即ちあの一族の大部分が関わっているという事です。
正直、あの一族と正面切って当たりたくありません。
あそこが本気になれば明日から私はここに存在しないでしょう。
極力関わりたくない。
それでも・・・・・・。
もし、あの子が手を差し伸べてきた、その時は。
◇
円達の拠点だった場所は今はモノケの殻。
当然人形もない。
「まんまと逃げられたわね~」
「・・・・・・姉さん、なんであいつらは私達を直前で裏切ったのかな」
こちらが引き連れてきた瑞雀部隊は戦闘経験が豊富のプロ集団。
いくら名の知れた殺人集団でも歯牙にかけない。
「独自に動くとは思えないわね~、となると考えたくはないけど誰かに命令されたって事かしら~」
「・・・・・・なら一人しかいないね。どういう事かね」
本来味方のはずの人物が意味不明な行動をとった。
「直接本人に聞くしかないわ~。それはそうと愚妹は?」
「あぁ、トリムは外でまだ遊んでるよ」
窓から外を覗きこむ。
すでに決着はついていたが。
「うぴゃうぴゃっ! どんどん出てくるっ!」
馬乗りになった体から両手を真っ赤に染めて臓物を引き出している。
切り開かれた胸から腹。
「うぴゃうぴゃ、長い、どこまで伸びるっ」
無邪気に死体で遊ぶトリム。
「はぁ~、あの子は相変わらずねぇ」
呆れるカリバの前に黒い集団が集う。
「敵勢力完全に殲滅しました」
「ご苦労様ぁ、あ、後、瑞雀ちゃんの様子はどうなのかしら?」
「隊長は両太股にかなりの傷を負いましたので戦線復帰に今しばらく掛かるかと・・・・・・」
「彼女ならそれくらい大丈夫よ~、最低限の治療を終えたらこちらと合流させて頂戴。例え本来の半分くらいの力でも瑞雀ちゃんに敵う者はごく少数よぉ~」
両手の包丁をくるくる回してまだ乾いていない血を吹き飛ばす。
「切り裂きちゃん、精々逃げ回りなさ~い。どこにいても見つけてあげるから」
◇
ういうい、円、だ。
なんとか今回は凌いだが。
もう逃げられないとうすうす気付いていた。
多分、血色との戦闘をそうしなければならなかったとはいえ総力戦で行ったのが間違いだった。
その時メンバーの誰かがロックされたの、だ。
今はそれを特定する時間も、その手段もない。
合流地点を後回しにしたのはこの懸念があったから。
それが人形を任せたあの三人の内の誰かならすでにアウトだが。
逆にあの三人ならある程度対処も可能。
ロックされたのが一人とは限らない。
複数かもしれないが。
「まぁ、それでも一番可能性が高いのは・・・・・・」
他でもない私なの、だ。




