うん、もうなにもかもが・・・・・・(人形争奪戦 其の捌)
こんにちは、シストです。
どこで間違えたのでしょう。
どこまで遡ればいいのでしょう。
時間の感覚さえ失われ。
僕は一人立ち尽くす。
◇
ういうい、円なの、だ。
何台もの警察車両。
何人もの捜査員。
キープアウトの線の中。
「・・・・・・あ、あああ、あ、揚羽、ちゃん、あ、あ、いいいいやああああああああああああああ」
蚕がその場で泣き崩れる。
「・・・・・・・・・揚羽」
吊されていた。
指は全て折れ曲がり。
顔の皮はなく頭蓋が見えている。
私達はそれをじっと見上げる事しかできなかった。
「・・・・・・こ、殺す。・・・・・・殺す、絶対殺す、殺してやる、殺してやる、揚羽ちゃんと同じ目にあわせてやる、殺す、殺す、殺す」
蚕がフラフラと立ち上がり、譫言のように呟く。
「・・・・・・相当苦しませてる、のだ。一体どいつ、だ。ここまでする必要があるの、か」
「体の傷が例の家を印すもの・・・・・・だから三姉妹の誰か。ヴァセライーターにしては部位が多すぎる。この前の奴なら吊したりしない。つまり、これは真ん中だよ」
私は目を離さない。
しっかり焼き付ける。
握った拳に爪が食い込む。
その夜、蚕が私達の前から消えた。
◇
こんにちは、シストです。
「・・・・・・母さん達との連絡は?」
「駄目。誰も繋がらない」
瑞雀さんが深手を負って病院に担ぎ込まれた。
シルバーメダルとヌードナチュラルも同様。
でも、全員命に別状はない。
「あちらのメンバーに犠牲者が出た。これでもう後戻りはできない」
戦力を極限まで強化したのはあちらを圧倒するためだ。
はっきりいってこの諍いはこちらの都合。
できるだけ犠牲は出さずに人形だけを奪いたかった。
そんな中、また頭の痛い出来事が飛び込んでくる。
「・・・・・・シストくん。また死体があがった。今度は白い方。これも酷い扱いで死んでたよ」
目黒ちゃんの声が重い。
「母さん達を止めないと。このままでは大変な事になりそうな気がしてならない」
しょうがない。
あれをやるか。
正直あれをやると頭痛がしばらく鳴り止まない。
でも、今見ておかないと取り返しのつかない事になりそうだ。
「みんな、悪いけどこれから一人になる。引き続き母さん達の居場所を捜索してくれ」
人払いをし、周囲に静寂が訪れた。
目を閉じる。
現在の事象。双方の動き。イレジュラーは排除。
こうして僕は深く深く思考する。
登場人物が動き出した。
◇
ういうい、円なの、だ。
今、私と種の二人で確認にきたのだ。
真っ白だった蚕が真っ赤に染まっている。
「馬鹿な、の、だっ!」
一人で揚羽の仇をうちに飛び出し。
そして返り討ちにあったの、だ。
最後の最後まで抵抗したのだろう。
傷は揚羽よりも深い。
「私達がいうのもおかしいけど。これは明らかに過剰だよ。目的のためじゃない個人のためにやってる」
そうなの、だ。
これまで私達は敵対しているとはいえ。
キラキラはあくまで最低限の節度は守っていたのだ。
それはこちらも同様、二つの間には暗黙の了解があった。
ぶつかって命を落とすことはあるかもしれない。
でも、これはあんまりなの、だ。
骨は折れ曲がり、肌は切り刻まれ、抜かれ、くり抜かれ、剥がされ。
「キラキラ、見損なったの、だ」
下を向く。
「・・・・・・円ちゃん、多分、違う。実は・・・・・・」
種が何かを言いかけて。
ここで私に連絡が入った。
「円ちゃんっ! 拠点がバレたっ! 早く、早く戻ってっ!」
雲美の酷く慌てた声。
「っ! 種っ!」
「うんっ!」
人形は隠してはあるが拠点に置いてある。
一応、螺苛と刺苛を置いてきたが、後は雲美のような非戦闘人ばかり。
これまで慎重に数回、移動を繰り返してたのだ。
それなのに。
拠点についた私達が見たものは。
辺り一面血の海であった。
「・・・・・・お前らあぁあ」
激しく睨み付ける。
その真ん中にいたのが。
「うぴゃうぴゃ」
この前の骨皮女。
「あらぁ、遅かったのねぇ」
そして角にはヴァセライーター。
「え~、もう来ちゃったの。今まだ楽しんでるとこなのに」
奥からもう一人の声。
「人形ももう頂いたわぁ」
「なんだ、とっ!」
この時、私はとっさに下に目線を落としてしまった。
「あぁ、下にあるのね。後でゆっくり探すわぁ」
「・・・・・・誰が渡すか、なの、だ。あれは姉御のだ」
ナイフを取り出す。
「・・・・・・もうなにもかも遅いよ。じゃあね」
種がスマホで会話しながら私の隣につく。
スマホを床に叩き付け踏みつけた。
「もう逃げ場はない。外は囲まれているよ」
「そうよぉ。あれ、なんだったかしら、ゾディなんとかってのに抑えてもらったわ。あそこ人数だけはいるし。あとは瑞雀ちゃんの仲間とかね」
もうやるしかないの、だ。
「円ちゃん、ごめん。私、役に立たなかった。この人達を甘く見てた。殺人鬼連合だけならなんとかなったんだけど」
戦力、情報力、資金力、何もかもが下回った。
これがキラキラの一族。
「まだ、わからんの、だ。ここでこいつらを全員殺して、外の連中も皆殺し、だ」
「・・・・・・そうだね。やってみようか」
種もハサミを取り出す。
「あらあら、やる気なのねぇ。お馬鹿さん達、かかってきなさい」
「うぴゃうぴゃうぴゃああああ、糞ガキ、潰してやる」
「あ~、待って、こいつでもう少し遊びたいのに~」
奥から出てきた妙齢の女も加え。
赤い赤い部屋で。
六つの目がさらに赤く光る。
顔が揺れる度それは斬光のように輝いた。
どれだけ抗っただろう。
私が目を覚ました時にはすでに体は縛られていた。
「あら、目を覚ましたのねぇ」
「うぴゃ、痛い、痛い、こいつ後で殺す」
私達が拠点に戻った時にはメンバー達はまだ全員生きていた。
しかし、それは慈悲ではない。
「ちゃんと、見てなさい。今から目の前で一人ずつ殺していくわぁ」
私の前に虫の息のメンバー達が並べられている。
「た、種、ら、螺苛、刺苛、く、雲美・・・・・・み、みんな」
すでにかなり損傷している。
「じゃあ、私はこの子にするわぁ」
「ほんじゃ、私この子」
「うぴゃぴゃ、どれでもいい、早く殺したい」
三姉妹の口角が上がる。
こいつらが動く度悲鳴が耳に飛び込む。
「や、やめる、のだ」
必死にそう言うが三人は聞く耳を持たない。
「いやぁあああああああああああああ、いだいあいだあああ」
「うぐあああああああああああああああああああああああ」
頭に響く絶叫。
「や、やぁめて、痛い、痛、い、痛い、いやいあたい」
「もう、こ、ころし、て。ああぁ、ひぃいぎぎっっっっっっっ」
非戦闘員にさえ容赦はない。
「やめ、てくれ。もう、私達の、負け、だ。た、頼む」
懇願は届かない。
目の前で仲間達が蹂躙されていく。
「あぁ、この子、中々・・・・・・これ持ち帰ろうかしら」
「ほら、出ちゃったよ。ほらほら、もっと出そうか、きゃきゃ」
「うぴゃうぴゃ、こいつもう死んだ。次はどいつだ」
必死に拘束を取ろうと残った力を振り絞るがビクともしない。
「ま、円ちゃん。ご、ごめんね。本当、姉様にどん、な、顔で逢いにいけ、ば・・・・・・」
「種っ!」
倒れる種。
目と目が合う。
その手が伸ばされる。
「いいハサミねぇ。とても痛かったわ。これ返すわね」
頭上からハサミが落とされる。
突き刺さった瞬間、種の目が瞼の上へと吸い込まれた。
ゆっくりと腕が下がっていく。
「あああ、ああ、た、種」
暗幕が落ちる。
「それじゃあ、そろそろいいかしらぁ」
カリバがナイフを握る。
あれは私の、姉御の、ナイフ。
「これで完成するわぁ」
切っ先が私の顔に近づいてくる。
「・・・・・・や、やめる、の、だ」
目に飛び込んでくる。
そして。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
私の顔にナイフが差し込まれた。
次回から分岐します。




