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ういうい、まずは、なのだ(人形争奪戦 其の二)

 今回はしょった部分は後ほど。

ういうい、円なの、だ。


 無事、姉御の人形を拠点へと運びだす事ができた。


 いくつかルートを分け、そのほとんどを囮にしたが。


 キラキラもそれは承知と抑えにきていた。


 陸路、空路、海路、さらには個人のプライベート、そして軍用機、なんでも使用した。



 数刻前。



「HAHAHA、ストロベリーの弟子じゃこっちも断れないネー」


「ういうい、助かったの、だ」


 私は母国の某軍事基地に降り立つ。


 しかし、これもまた囮。


 葵シスターズで顔が割れてるのは今の所、私と種だけだから。


車を借りてこのままここを離れれば・・・・・・。


案の定、基地を離れたタイミングで襲撃を受けた。


 散々引っかき回したが、最終的にまききれず車は壁に激突、走行不能。


 体は無事。


 すぐに車から降りると。


「久しぶり、人形はこれに乗ってる?」


 私の前には二つの人影。


「・・・・・・ニルヴァーナ、か」


 そして、隣にもう一人。


「・・・・・・・・・・・・」


 青と黄色のオッドアイ、そして半分から綺麗に別れた青と黄色のサイドテール。


 ゾディファミの武と知。

 

 殺戮のベアトリス。


「もう一度聞くよ? これに人形は乗ってるの、乗ってないの?」


「さぁ? なの、だ、あるかもしれないし、ないかもしれない、のだ」


 二本のナイフを取り出し、交差で構える。


「そうかい、じゃあお前を殺してからじっくり調べよう」


 ニルヴァーナの静かな声、後に続く怒号。


「ベアトリスゥウウウウウ、殺せ、殺せ、挽肉にしてやれっ!」


 頷く、飛び出す、ほぼ同時。


 手にするは大きな斧。


 軽々振り回す。


 空を切り裂く、連動するようにテールが靡いた。


 あんなのいちいち受けていたらナイフも腕ももたない。


 重い一撃、されど自身の体を回転させながらの連続攻撃には隙がない。


 斧と一体になりながら踊るように攻撃してくる。


「っ!」


 しかし、早い。


 遠心力をフルに使ってグルグル回る。


 躱す、躱し、躱す、躱し、てか躱すしかできない。


 こいつ、スタミナ無限なの、か。


 上半身を海老反り、相手の肩ほど飛躍、右に左に瞬時に避ける。


 とにかく間が開かない、だから反撃のタイミングが一切ない。


 それでも周囲を見る。


 目を掠める標識、それに当てさせれば手は止まる、はず。


 そう思い、じょじょに誘導。


 横薙ぎの斧。


 両足を地面につけるほど大きく開いてそれをやり過ごす。


 斧は私を空振り、背後にあった標識を叩く。


 これで止まるを思った。


 甲高い音が耳に届き。


 斧は何も無かったかのように振り抜かれた。


 標識はいとも簡単に真っ二つ。


「っ! いよいよ、ヤバいの、だっ」


 一度くらいならナイフ二本でなんとか受け止めれるかと思ったが。


 その選択肢は消えた。


 もし、受け止めようものなら両腕ごと持っていかれるの、だ。


 これは嫌でも長丁場になりそうな予感。



 こんにちは、シストです。


 抑えたルートの一つ。


 そこを見張らせていた仲間から連絡が。


「シストさん、大女とベリーショートの女が。明らかに堅気じゃないっす」


 多分、葵シスターズのメンバーか。


「交戦は可能かな?」


「いや~、ありゃ、うちらじゃ無理っすね。あの二人は噂の実行部隊っすよ。このまま追跡くらいしかできないっす」


「そうか、なら、瑞雀さんを向かわせよう。それまで目を離さないように」


「了解っす~」 


 葵シスターズの実行部隊。紅子と奏だけじゃ荷が重いか。


 そんなやり取りの中、また連絡が。


「シストさん、真っ白い女と真っ黒の女、でかい荷物を持って船から下りました。明らかに堅気じゃないです」


 こっちもか。


「交戦は可能かな?」


「ん~、どうでしょう。見た目はただの小娘二人ですが・・・・・・」


「顔を把握するためにも軽く接触してみようか、やばそうなら撤退してくれ」 


「了解です」


 対処するのはシルバーメダルとヌードナチュラルの二人。


 葵シスターズは役割分担できちんと分けられているはず。


 実行部隊は多くても三人程度。


 こっちが裏方専門ならこの二人でも充分対応可能。



 そうこの時の僕はまだ葵シスターズを甘くみていた。



        ◇


「揚羽ちゃん、な、なんか来たよ」


「そうだね、蚕」


 二人の前に長身の男、そしてコートを羽織った女が急に現れた。


「その木箱はなんだ?」


「何でもいいさ、貴方達、それを置いて消えなさい」


 二人の目つきは異常そのもの。


 絡め取られるような殺人鬼のそれ。


「あぁ、殺人鬼連合だよ」


「そうだね、殺人鬼連合だ」


 蚕はそれを見て少し体が震えだした。


 しかし、それは決して畏れからではない。


 それは揚羽も充分承知。


「思ってたより・・・・・・」


「そうだね、大した事なさそう」


 二人は愉悦に笑う。



    ◇


 同刻。


「ビンゴかも、実質ナンバー2のシード・ザ・プラントに当たった」


 殺人鬼連合、キラープリンスこと叶夜が出会ったのは。


 叶夜はいちいち連絡はしない。


 自分の判断で動く。


「やぁ、久しぶり。種だっけ?」


「・・・・・・キラープリンス。叶夜くんか。久しぶり~」


 お互い顔なじみ。


 それどころか一時協力関係にあった。


 それゆえ互いの実力はある程度知っていた。


「あの人形はあんた達にとってとても大事な物だ。だから輸送するにしても切り裂きかあんたが見ている可能性が高い」


「どうだろうね~。またゲームで勝負する? 私に勝ったら教えてあげる」

 

「いや、今回はやめとくよ。こっちにも事情があってね」


「ふ~ん? ならどうする気」


 種はハサミを取り出す。


 だが、叶夜の表情は全く変わらなかった。



     ◇


 時刻、不明。


 ういうい、円なの、だ。


 人形を部屋の中央奥へと掲げる。


 ここまで色々あったが、こうして第一段階を終えた。


 部屋には私の他、葵シスターズの面々が集まっていた。


「まずはこちらの勝ちかな」


「そうだ、な」


 決して無傷とはいかなかったが人形はまだこちらにある。


「さぁ、円ちゃん。いよいよ二段階目だね」


「・・・・・・・・・・・・」


 人形はここにある。だがこれは完成されてはいない。


 無言の私に変わり、種が声を上げた。


「姉様はこれを未完成で終えたっ! しかしその意志は残された私達が継ぐっ!」


 他のシスターズも大きく頷いた。


「象徴となる人形は我らの元にっ! そして姉様自身が後継者と認めた円ちゃんがいるっ!」


 全員の視線が私に集まる。


「姉様が神なら、円ちゃんは我らが王。これより円ちゃんの指揮の下、第二段階に入るっ!」


 第二段階。


 それは。


 ここで、種に変わって私が口を開いた。


「この人形に相応しい目。それは二つなの、だ! 一つは姉御自身の目っ! そして・・・・・・」



        ◇


 再びこんにちは、シストです。


 完全にあっちを見くびっていました。


 いや、違いますね。決して見下してなんていませんでした。


 ただ、あちらの戦力が予想を遙かに超えたものだっただけです。


「参ったね。でも初見で未知数の相手じゃしょうがないか。だけど」


 これでうっすら輪郭は見えた。


 次はこうはいかないよ。 


「人形を奪う計画はまだいくらでもチャンスはある。そしてそれと同時にやることがある」


 初動はこちらの完敗。


 今はメンバーを全員呼び戻し仕切り直し中。


 何人か、戻ってきてないけどね。


「人形は奪う。そして、それに入れる両目も同時に手に入れる」


 人形は未完成。


 でも、葵さんの中ではもう決まってたんだ。


 でも、入れなかった。


 それには理由がある。


 入れたくても入れられなかった理由。


 それは。


「両目の一つは、葵さん自身の瞳。そしてもう一つは・・・・・・」



       ◇


 奇しくも。


 二人の発言は同時だった。


 別々の場所で。


「片方の瞳、それは、姉御が愛してやまなかった人物・・・・・・」


「片方の瞳、それは、葵さんが唯一愛した人物・・・・・・」


 時間こそ同じだったが、言葉は異なった。


「ちゃんリョナさんの目、だ」


「円さんの瞳だ」

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