うん、六人目に会いにいきます。
こんにちは、シストです。
僕は今、一人。
勿論、ゾディアックファミリーからの熱い視線も振り払っております。
これから僕は。
この一連の事件の主犯格。
幻の六人目に逢おうとしております。
まずこの事件を振り返ってみよう。
最初は、バラバラに活動していた殺人犯がこの街に集まってきた。
ブラッドヘアーだけは別だったけど、拠点は元々この街の近く。
殺人犯は当然のように人を殺す。
で、今回この殺人犯達の被害者は各自一人ずつ。
六人目は不明だったから、明白な被害人数は五人。
殺人犯達は次に移る時点で、切り裂きサイド、もしくは僕達にやられている。
この連中、仲間という割りには、全く協力せず単独行動をしていた。
そして、誰も仲間全員の詳細を知らない。知ってたとして一人だけ。
それも名前くらいなもので。
僕達はそんな僅かな痕跡を追っていたのだけど。
ここに来て、完全に途絶えた。
判明すると思われた六人目は闇の中。
全てが謎。
そもそも本当にいるのか。
これだけ探しても糸口すら見えない。
僕だけでは辿り着けなかった。
もう一人の助力がなければ。
◇
こんにちは、種ちゃんです。
ブラッドヘアーを仕留めた私は情報を聞き出すため色々したのだけれど。
「・・・・・・おかしい、おかしい、おかしい」
途切れた。
他の五人は簡単に判明したのに。
六人目だけが影も形も見当たらない。
まるで、靄や霧。
状況から察して必ずいるはずなのに。
「この五人は操られていたんだ。まるで手の平で踊らされているように」
全ては六人目にいいように使われ、そして死んだ。
殺人犯共は犯行から私達に殺されるまで最初から決められていたのだ。
円ちゃんからの情報を盗み見て行動していた私だったけど。
あちらも六人目を見つけていない。
途中、殺人鬼連合の人達も関わっていると知った。
そしてあのリーダーのシストくんさえも探せていない。
「・・・・・・ありえない、ありえない、ありえない」
なんなの。
あの二人は葵姉様でさえ認めていた。
その二人よりこの六人目は上だというのか。
いや、そんなはずはない。
そう、そんなはずはないのだから・・・・・・。
考え方を変えようと思う。
後日、私はその内の一人と会う事にした。
「どうも、どうもー、種ちゃんです♪」
「お久しぶりですね」
相変わらずの美少年ぶり。
円ちゃんじゃないけど、キラキラ輝いて見えるね。
多少、警戒はしてるみたいだけど、そんな素振りは見せない。
隙だらけ、でも全く隙がない、矛盾してるけど本当にそう。
「で、僕になにか用でしょうか? ご希望通り、一人で来ましたよ?」
シストくんのいう通り、近くにはいつもの二人がいない。
あの二人は色んな意味で非常に厄介だからね、助かります。
「六人目・・・・・・。私の見立てではかなりの切れ者だよ。認めたくはないけど、私だけでは手が届かなそうなの。だから、お互い協力しませんかー?」
深緑深層サイドではなく、殺人鬼連合側に接触したのには意味がある。
まず、私が円ちゃんの情報を勝手に見てるって後ろめたさと。
そもそも、私が円ちゃんのための対深緑深層要員だって事。
「協力ですか。貴方にとって六人目を探すメリットが全くないように思えますけど・・・・・・」
「ふふ、そんな事ないよ。全ては円ちゃんのため。それいわく葵姉様のためでもある」
私は葵姉様から円ちゃんを任された保護者だから。
「・・・・・・まぁ、いいでしょう。正直、僕もメリットうんぬんより六人目の正体に興味を示してます」
ふふ、シストくん自身も不思議なんだね。
相当の後ろ盾を持ってる自分でさえ見つけられない相手だって。
「では、まずは、お互いの知り得ている情報を開示しあいましょうか」
「そうだね、そして、おおよその考えも照らし合わせてみようー」
こうして、私達は一時の間だけ協力関係になったの。
「犯人達からはもう何も得られない」
「だね、じゃあどうするか」
「見る方向を変えましょう」
「となると、被害者かな」
まず、被害者がなぜ殺されたかを考える。
この人達がなぜ殺されなければならなかったのか。
無差別か、それとも・・・・・・。
この人達じゃなければ駄目な理由があるのか。
「・・・・・・どうやら当たりみたいですね」
「うん、これほど共通点があるなんてね」
被害者は、五人。
男性一人、女性4人。
女性は全て同じ年齢だった。
そして、同じ学校出身。
男性は、そこの教師だったの。
「こうなると、六人目は意図してこの学校出身者をターゲットにしてますね」
「それどころじゃないよ。この男性教師はこの四人の担任だった。つまりクラスも同じ」
いよいよ、見えてきたね。
「・・・・・・このクラス凄いですよ。生徒が30人いましたが・・・・・・」
「・・・・・・今回のを混ぜて、全員死んでる」
近しい人の間では有名だったみたい。
クラスの人がどんどん死んでいくって。
しかも、死ぬ間際には何らかの兆候があった。
「ほとんどが卒業後に、事故や事件で命を落としてますが。一人だけ例外がいますね」
「そうだね、一人だけいる。在学中に・・・・・・自殺した生徒が」
この学園の事を徹底的に調べた。
地元でも有数の進学校。
姉様が通ってた学校と双璧をなすと呼ばれるほど生徒達のレベルは高い。
それは学力に関してだけど。
「自殺した生徒の名がわかりました」
シストくんは流石だ、この短時間ですぐに情報を得てくれる。
「生徒の名は・・・・・・三島 春菜」
◇
再び、こんにちは、シストです。
今、僕は、ある墓地に足を踏み入れました。
六人目がここに姿を現すと予想しての事です。
ゆっくり進んでいきます。
三島家と彫られた墓石の前に。
いました。
「見つけましたよ。貴方が六人目でしたか」
屈んでいた背中に声をかけます。
「あら、見つかっちゃいましたかぁ」
振り向いた彼女は屈託のない笑顔でそういうのです。
「中々見つからないわけですよ。相手が貴方なら納得ですけど」
「だって見つからないつもりでしたもん」
元々網に掛かっていた五人の殺人犯をこの街に集め、ターゲットに嗾けて、無事殺害させたら、今度はその後始末を僕達や切り裂きに任せたんですね。
「よく私に辿り着けましたねぇ。あの学園での私の存在は完全に抹消したつもりでしたけど」
「生きていた人間の痕跡は中々消せないものですよ」
彼女は静かに立ち上がりました。
「そうですか、私はほとんど空気のような存在でしたけどね。ずっと一人でしたし・・・・・・この子に会うまでは、ですが」
「・・・・・・復讐ですか?」
三島 春菜の在籍していたクラス。
担任を含めたその全員が今回で全員死んだ。
「ええ、やっとです。やっと終わりました」
彼女は心底嬉しそうな顔でそう口にした。
「最高のタイミングで。幸せの絶頂の中で。時間がかかっちゃいましたが、こうしてようやく春菜に報告する事ができたんですよ」
結婚間近だったり、夢が叶う瞬間だったり、高額な当選金が手に入る予定だったり、他にも色々調整したんでしょうね。
「春菜が苦しんでいた時、この人達は笑っていました。春菜が手を伸ばした時、この人達は手を払いました。春菜が死んだとき、この人達は誰も泣きませんでした。春菜が、春菜が」
肌を冷たいものがなぞった。
「約束したんですよぉ。見せるって。全員の死に顔を、春菜に。一部、グチャグチャで分からないのもありましたけどね。でも大丈夫です。私がちゃんと説明したから。どうやって死んだか、どのように死んだか、なんでこうなったか、うふふふ」
この感覚は。
まるでドールコレクターを初めて見た時のような。
考えれば当たり前のこと。
彼女は、ドールコレクターが認め、ドールコレクターが一緒にいることを許した人物。
深緑深層のマーダーマーダーなのだから。
「これまではね、細々とやってたんですよ。今回はたまたまタイミングがかぶってしまいました。ならばとついでに担任も加えたんですけど、それが悪かったですね」
蓮華さんの事だから裏で色々手を回したんだろうね。
「いや、違いますね。シストくんを巻き込んだ事が最大の失敗でしたか」
そして、たまたま天宮 種さんが関わった事もね。
元々、彼女が疑問に思ったんだ。
何故、アンノウンなのに六人いると分かっていたのかと。
真相が分かれば単純な事だった。
用意したのが深緑深層なんだもん、知ってて当たり前だよね。
切り裂きが頭はいいのに抜けてる部分がここだよ。
完全に深緑深層を信用してるから、考えずにどんな命令をこなそうとする。
「で、貴方達を利用した私をどうします?」
深い泥沼のような視線。
もう目的を終えてどうなってもいいような。
「そうですねぇ・・・・・・」
本来なら、僕達をいいように利用した訳ですから、それなりの代償は支払ってもらいたいところですが。
「貸し一つ・・・・・・」
今回の一件でさらに彼女の貸しの価値が跳ね上がった。
それで帳消しといきたいところですけど・・・・・・。
「いや・・・・・・今回は、春菜さんへの手向けの花って事に致しましょう」
踵を返します。
元の道を引き返します。
お話の途中で邪魔してしまいましたからね。
これからゆっくり二人でお話ください。
「お疲れ様でした。彼女きっと喜んでますよ」
蓮華さんには聞こえないほど小さい声でそう呟きます。
逆に遠ざかる僕の背中に漏れる声が届きました。
「うぅ・・・・・・春菜。やっと会えた・・・・・・ずっと、ずっと・・・・・・でも終わるまではって・・・・・・春菜ぁ」
今度会う時は、いつも微笑んでるだけの蓮華さんに戻っているでしょう。
だから、今は思いっきり泣いてください。
ほぼ三年ぶりの伏線回収です。
番外、蓮華の事件簿、1話、2話参照でございます。




