うん、漸く見つけました。
こんにちは、シストです。
レディワーストから次を聞き出した僕達は。
「まずは、これを見て欲しい」
メンバーに動画と画像を送信。
「・・・・・・おー」「へぇ」「そこそこやりますねー」「ひっ! 男っ!」
鎌道魔の犯行と思われる動画です。
これ、なんと普通に出回ってるんですよ。
今や国民のほとんどが簡単に撮影できる時代です。
こんな感じで堂々と犯罪を犯せば一斉に撮られ一瞬で拡散します。
「なんかアイマスクみたいなのしてるけど・・・・・・」
動画は白昼堂々公衆の面前で起こった事件です。
両手には草刈り用の鎌を持ち、とにかく滅多切り。
「これでまだ捕まってないってどういう事?」
タシイの疑問、最もだね。
鎌道魔と思われる人物はまだ警察に捕まってない。
これだけ派手に暴れていてなお。
僕達のように大きな後ろ盾があるわけでもないだろうし・・・・・・。
犯罪者クラブが関わってる様子もない。
犯行自体は5分程度。
警察が到着する頃にはすでに姿は消えている。
そうなると、仲間が匿ってるのか。
今だこいつらの仲間で詳細がよく分かってないのは二人。
そっちは円さん達が動いてるらしいけど。
「とにかく、捕まれば分かる事だ」
一つ問題なのは。
「こいつはただの通り魔じゃぁない。結構な手練れだ」
鎌を振る身のこなし、最初は正確に急所を外してしばらく遊ぶ。
その後、確実に止めを刺す。ジャスト5分。
「舐めて掛かると返り討ちにあうかもしれない」
だから、こちらも武闘派を出しますか。
◇
情報はすぐに飛び込んできた。
鎌道魔が再び現れたのだ。
あらかじめ用意していた非常線。
囲む。
もう逃げられない。
逃がさない。
最初からターゲットとしてマークしていたのなら、その情報の速さは深緑深層にも引けを取らない。
七分丈の黒いズボン。上は斜め半分が青、もう半分が黒の半袖シャツ。
捕らえたサークルはどんどん狭まる。
丸は点へ。
髪は黒と白の、混合色。
ポケットに両手を突っこんで。
いざ、ターゲットと対面。
「あんただね」
殺人鬼連合所属、白頭巾と並ぶ史上最年少レベルブレイカー。
通称キラープリンス、ナンバーレス叶夜。
「・・・・・・・・・・・・」
鎌道魔は無言。
いつものように両手には鎌を持ち、徘徊していたところを捉えた。
横線の入ったアイマスク。緑のタンクトップ、その身は筋肉質。
視線が混じり。
互いに値踏み、そしてスイッチ。
「きょええええええええええええええええええ」
飛び込む、二本の鎌が十字を描く。
叶夜のステップ、後方へ、切っ先は空を切る。
追撃の間隔はゼロ。
右へ左へ、上、斜め、残像、斬撃。
叶夜の両手は今だポッケの中で。
軽い足取りだけそれをかわし続ける。
「早い、でも単調、これならまだゲームの方が駆け引きがあるよ」
叶夜のカウンター。
反転、伸びるつま先。
鎌道魔の横腹を抉る。
細かいフェイントが混じる、蹴りの応酬。
その全てが鎌道魔の体に突き刺さる。
「き、き、きょえああえれええええええええええええ」
しかし軽い。
怯まず向かってくる。
叶夜が垂直に飛ぶ、足を大きく振り上げ、そこから右、左と顎への二連撃。
そのままバク転で着地、その勢いのまま、今度は斜めに飛翔。
体を大きく撓らせ、左の蹴り。
だが、それは紙一重で避けられ・・・・・・。
叶夜の体はまだ宙。
初撃の左、かわされたが、そのまま回転、一回転。
そして。
もう一度、左の蹴りが繰り出される。
相手の頬がゆっくりプリンのように。
抉る足先、へこむ顔面。
鎌道魔はなにかが切れたように棒達のまま斜めに倒れた。
「え? 嘘。もう終わり?」
拍子抜け。
態々自分が呼ばれたからどれほどの相手かと思えば、所詮この程度。
「・・・・・・さてはお姉ちゃん。これは準備体操って事かな」
◇
こんにちは、シストです。
鎌道魔を捕らえました。
さて、ここからが本番です。
「で、おネニー様ぁ、なんでこいつらがここにいるのかなぁ?」
ここは最近作ったアジトの一つ。
今回のための使い捨てだね。
それで、今ここにいるのは。
叶夜を含む僕達、殺人鬼連合と・・・・・・。
「なんでって、シストきゅんに呼ばれたからじゃない、君、シストきゅんの妹のくせにお馬鹿なの?」
青と黄色の外套、それを羽織る二人組。
ゾディアックファミリー、ニルヴァーナ、そしてもう一人。
「あ? 今なんていった? あ?」
タシイがバールを担いで近づいていく。
それを遮るのが。
「・・・・・・・・・・・・」
青と黄色のオッドアイ。タシイとは結ぶ位置の違うツインテール。
知と武を司る、殺戮のベアトリス、だっけ。
今、東西のツインテールが対峙する。
「ベアトリス、殺せ」
「かしこまりました」
ニルヴァーナの命で、ベアトリスが動いた。
瞬時に取り出されたナイフ。
しかし、僕の命も同時に飛んでいた。
「叶夜、止めろ」
「へ~い」
激しい金属音が室内に響く。
時間が止まったかのごとく、その場全員の動きが膠着する。
達磨さんが転んだのようだね。
うちのメンバーも全員すでに自前の武器を手に、少し踏み出している。
タシイのバール、近くにいた目黒さんの千枚通しや紅子のナイフがもうベアトリスのすぐ近くまで来ていた。
でも実際間に合ったのは叶夜だけ。
頭より高く上がった蹴りがベアトリスの刃物を弾いていた。
やはりこのベアトリスはニルヴァーナの護衛でもある側近中の側近か。
「二人は僕の客だ。ちょっとお手伝いをしてもらおうと思ってね」
それこそが建前なんだけど。
このニルヴァーナ。今のまま利用したい所だけど、強大な力は諸刃の剣だからね。
今はここに二人で来てるけど、外には仲間がわんさかいるだろう。
「こいつから、他の仲間を聞き出して欲しい。僕達はそういうのいまいち慣れてないんだ、だから参考にさせてもらいたい」
二人の前に拘束した鎌道魔を投げ捨てる。
「あぁ、そういう事? いいよ、全然、シストきゅんの頼みなら、何でも、だから一回、一回だけ刺していいかな? ほんの少しだけ、ね、ちょっとだけ、胸の辺りを、駄目?」
「はは、それはまた今度ね」
こうしてゾディアックファミリー式、情報の聞き出しが始まった。
結論をいえば、鎌道魔は何も吐かなかった。
他の仲間の情報を知らないという。
「おらぁああああああ、行くぞぉっ! 声出していけよぉおおおおおおおお」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
ニルヴァーナの咆哮。
すぐ隣ではベアトリスが髪を振り上げギターを弾いてます。
激しい音楽が鳴り響く建物内。
「もっと叫べぇええええええええええええええ」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
どこからともなく機材が運び込まれて。
今、ここは爆音と光が融合する空間へと様変わり。
うちのメンバーも腕を振り、頭をブンブン振ってノリに乗ってます。
「はいっ! はいっ! はいっ! はいっ! はいっ!」
「もっとっ! もっと、声出してけぇえええええええええええええ!」
「うふぁっいっ! うふぁぁあい! うふぁぁあい! うあぁあいっ!」
皆さん、自分の武器をサイリュームかなんかみたいに振り回しております。
すっごい、テンション。
鎌道魔が音に合わせてボコボコにされてます。
いつの間にか掛け声と同じタイミングでうちのメンバーも鎌道魔に武器を打ち付けております。
上がる歓声、飛び散る赤、切り口や刺し傷から覗く黄色の肉片。
最初にニルヴァーナが二、三言、なにか質問したと思ったらすぐにこれです。
それだけで結論を出したのでしょう。こいつは何も知らないと。
いづれにせよ、このままではここでお終いです。
もう一人の方が残りの仲間の情報を何か知ってればいいのですが。
◇
こんにちは、シストです。
後日、ブラッドヘアーの情報を得ました。
得ましたが・・・・・・。
「あちらも途切れたか」
これで詳細不明なのは最後の一人だけ。
「やはり何かおかしい」
他の五人は全て死亡、これ以上調べる事はできない。
いや・・・・・・。
こっちが駄目なら。
僕は別の切り口から今回の一件を調べ直す事に。
さらに数日後。
僕は六人目の正体に辿り着くことが出来ました。
「・・・・・・なるほど、そういう事でしたか」
鎌道魔は前々から通り魔的な犯行を繰り返してはいたが、これほど大胆な動きは見えてはいなかった。
こちらに来てから鎌道魔が殺したのは一人だけ、被害者は40代の男性。先日宝くじの高額当選を引き当てた直後の出来事。
歪なピースが形を変える。




