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うん、今年もクリスマス争奪戦みたいです。

 某日、某時刻。


 殺人鬼連合、拠点の一つ。


 こんにちは、シストです。

 

 今年もまたこの日がやって参りました。


 僕から少し離れた場所で。


「貴方達~、今年もこの日が来たわよ~。分かってるわね。今年こそ、今年こそは私達のパーリィーにリョナ子ちゃんを招待するわよぉーー」


 例によって母さんが先導してメンバーに檄を飛ばしていた。

 

「おい、お前ら、ママの言った通りだ、今年こそはリョナ子さんをうちのパーリィーに御招待だぁ、絶対だぞ、ああ?」


「アタシらの敵は今回も変わらないよ。深緑深層、切り裂き。こいつらを蹴散らしてリョナ子ちゃんとパーリィーだ」


 母さんの両隣には、僕の妹のタシイ、そして眼球アルバムこと目黒さん。

 しかし、みんなパーティーの発音がいい。気合い入ってるってことかな。


「今年はこちらも戦力を強化するわよぉ~!」


 母さんがそう言うと、後ろから二つの影が現れる。


「血色こと瑞雀ちゃん。そして叶夜ちゃんよ。二人とも期待してるわ~」


「任せてよ、おばさん。でもちゃんと約束のゲーム買ってよね」

「・・・・・・・・・・・・」


去年は参加してなかったうちの切り札、キラープリンスの叶夜。

 もう一人は、あの蛇苺と唯一まともに戦えるこちら側が誇る最強兵士瑞雀さん。


 今年は一段と本気みたいだね。


「さぁ、始めるわよぉ~。深緑深層対策にこれより全てスタンドアローンで行動するわ。各自自分の役割を完璧にこなしなさ~い」


 母さんの掛け声で、メンバー達が一斉に動き出す。


 僕は今年も関わらないけど。


 でも、少し面白くなってきたね。


 さてさて、今年はどの勢力がリョナ子さんを射止めるのかな。



 某日、某時刻。


 ある建物のワンフロア。


 ういうい、円なのだ。


 今、この部屋には私を含んだ10人くらいがいて。


 全員、前方の巨大モニターを凝視していた。


「今年もこの日が来たねぇ」


 映し出されるは。


「そうなのだ、姉御」


 数年前の姉御がそこにはいた。


 これは、姉御が事前に撮りためていた私へのメッセージの一つ。


「今年もリョナ子ちゃんを私に会わせてねぇ」


「勿論なの、だ」


「円ちゃんの隣に種ちゃんはいるかなぁ?」


 姉御の音声に、隣にいた種がモニターに跪く。


「姉様、雨宮種、ここにおります」


 種は目を潤ませてモニターを見ていた。


「他の葵シスターズも全員いるねぇ?」


 部屋のみんなが大きく頷く。


「じゃあ、始めようかぁ。私の可愛い妹達、期待してるよぉ」


 ここで、モニターの映像が切れて。


「さぁ、みんな、姉御が言った通りなの、だ。私達の相手はレンレン、そして殺人鬼連合。姉御とちゃんリョナさんの逢瀬を邪魔する奴は誰であろうが私達が全て排除する、のだ」


「ふふ、姉様の願いは私達が叶えるよー。大丈夫、今年は私がいるんだもん。円ちゃん、頑張ろうね~ふふ」


 私、そして元葵シスターズ全員が、姉御のために今動く。 

  


 某日、某時刻。


 こんにちは、蓮華です。


「おや、全員の反応が一斉に消えましたねぇ」


 いくつもあるパソコンのモニターの一つ。

 それを見て、私が小さく呟きました。


 私が捕捉していた殺人鬼連合及び、円さん達の居場所の発信源が全て途絶えました。


「去年はドールコレクターに譲りましたが、今年はそうはいきませんよぉ~」


 今年は私と一緒にディナーを楽しむのです。

 もう予約はとってますし。


「まずは、先手を取りますかぁ」


こうして、私の重い腰が上がるのでした。



 24日、午前6時半。


 うぅ、リョナ子です。

 なんだか、今日は朝から悪寒がするよ。

 別に風邪ってわけでもないんだけどなぁ。


 朝、着替えをしながらテレビを見ていて今日がクリスマスイブと分かった。

 まぁ、僕にとってはいつもと同じ平日。


 今日もお仕事。


 はぁ、外は寒いね。


 いつも通りに支度を済ませて外に出ると。


「・・・・・・リョナ子様ですね。お待ちしてました」


 なんか、いきなり金髪の6人組に取り囲まれた。


 いや、1人だけ黒髪がいるね。


「私はミドガルドシュランゲのゾフィアベーゼと申します。深緑深層の依頼によりこれより貴方を執行局までお送りします」


「え、蓮華ちゃんの依頼?」


 どう言うこと?

 てか、ミドガルドシュランゲってなに?


「まぁ、詳しい事は車の中で。しかし、なるほど、貴方があの狂人ドラッグですか。たしかに・・・・・・」


 おいおい、今なんか変な名前で呼ばれたぞ。


 黒い高級車が横に駐められており。

 その後部座席にあれよこれよと押し込まれるようとしていた。

 その時。


 近い場所で大きな爆発音。


「わぁあ」


 音の方に顔を向けると、ビルの隙間から黒煙と炎からの光が立ち上げっていた。


「ち。おい、シュミット、早く車を出せ。他はここに残り迎撃しろ」


 6人とも全く今の爆発に動じてない。

 それどころか、この黒髪の人以外は誰も僕から目を離さなかった。 


「さ、早く、お車へ。ご安心してください。必ず無事に送り届けましょう」


「え、いや、かなりの爆発だったけど?!」


「大丈夫です。きっとどこかの建物内でスプレー缶を100本ほど放出した後、給湯器でもつけたのでしょう」


「なるほど、なら大丈夫かっ!」


 ん、もうー、そんな事現実にあるわけないじゃない。

 そんな事するのは、よほどのスーパー馬鹿だけだよ。


 まぁ、こうして何やかんやで僕は車で執行局へと。



 何事もなく執行局の門を潜る。


「帰りもこちらでお待ちしておりますので、お仕事頑張ってください」


 ゾフィアさんは僕を見送ると、急に忙しく動き出した。

 端末を取り出し誰かに指示を送る。


 しかし、蓮華ちゃんなんのつもりだったのだろうか。

 そういや、夜連絡しますって言ってたなぁ。


 とりあえず、僕は今日もお仕事頑張りますか。



お昼休み。


休憩室で食事と取りながらテレビを見ていると。


[某地区で、早朝から大規模な爆発、そして銃撃戦が起こりました。当局はテロとの関連も含め詳細を・・・・・・]


 うわ、某地区ってここからすぐ近くじゃないか。


 全く物騒な世の中になったなぁ。


 今のとこ怪我人は出てないみたいだし午後もお仕事頑張ろう。



 

 ういうい、円なの、だ。 


 これは、なかなか厄介な状況なの、だ。


 レンレンのやつ、まさか蛇師匠の他に、ミドガルドシュランゲを招集するとは。


 殺人鬼連合の方は、血色も出張ってる。


 あいつら、所構わず銃を乱射するの、だ。


 こちらはナイフだってのに、反則なの、だ。


 路地を走る。レンレンの目となる防犯カメラの位置は全て把握している。


 配水管、その設置金属に挟まってるメモを抜き取る。


 通信手段はレンレン相手だと限られる。

 この街でレンレンの目をかいくぐるにはアナログに頼るしかない。


 上空を見る。めっちゃドローンが飛び交ってる。


 こちらにも傍受できるメンバーはいるが、レンレンには及ばない。


 今年のレンレンは去年の雪辱からか本気なの、だ。衛星すら使ってくる、逃げ切るのは不可能。


 だが、それでいい。精々、私を見ているの、だ。


 今年は私以外にも動けるものがいる。



 どうも、シストです。


 アジトも慌ただしくなってきました。


 続々とやられたメンバーが運び込まれてきます。


「うぅ、痛い、痛いぃ」「あぁあ、歯が、歯がぁああ」


 きっとどちらかの勢力にやられたのでしょう。

 

 しかし、僕の見立てでは切り裂きサイドの勢力が一番弱いはず。

 白頭巾は多分どちらつかずで不参加だろうから、はっきりいって戦力になるのは切り裂き円だけ。

 ドールコレクターが存命ならまだしも、単体でここまでやり合えるものか。


 切り裂き円が完全に覚醒した。

 若しくは、僕も知らない誰かが彼女の味方をしているかだね。



 こんにちは、蓮華です。


 私の目がどんどん潰されていきます。


 朝からモニターと睨めっこです。


 電脳戦が仕掛けられ、私はその対処で手一杯。


「なかなか優秀な子がいるみたいですねぇ。これは葵シスターズの誰かでしょうか。うふふ、ドールコレクターはちょっと過保護すぎますねぇ。どれだけ円さんのために用意していたのやら」


 これは、実行部隊に委ねるしかありませんね。

 出来るだけ相手の行動は伝えるようにしますが。

 中々容易ではなさそうです。



 3勢力の長い一日が始まってすでに8時間。


 あまりに長く感じたのでダイジェストのようになった。


「また君か~? 何回邪魔すれば気が済むのかな?」

「・・・・・・・・・」


 誘導か、運命か。蛇苺と瑞雀が向き合う。


「そろそろ本気で決着つけようか」

「・・・・・・・・・」


 蛇苺が構える。

 瑞雀も僅かに体が横にずれて。


 狭い通路に銃声が響いた。


◇


「なんすか、あんた。私を殺人鬼連合第三殺、紅 紅子と知ってそこに立ってるんすかね~?」


「ふふ、なに第三殺って。あんまり意味わかんない事言ってると、ハサミでその顔切り刻むよー」


 紅子と種が出会った。


 そこに新たな影。


「おい、紅子、そこをどけ。そいつはお前じゃ無理だ」

「そうそう、ここはアタシらがやるよ。そいつの目も相当濁って素敵だ」


「え~、2人が相手してくれるの~。種、壊れちゃう~」

 

 ハサミをチョキチョキ。

バールが地面に叩き付けられ。

 千枚通しがキラリと光った。



         ◇


 黒い煙の中、炎から逃げるように駆ける。


「相変わらず強すぎなの、だっ」


 円は難敵と対峙していた。


「おい、フェアに銃は使ってないのに、なぜ逃げる?」


 ミドガルドシュランゲのリーダー、ゾフィアベーゼは誰もいない場所に向かって声をかける。


「さすがに蛇師匠や血色並とはいかないまでも、今の私よりは確実に上なの、だ」


 ナイフを振れば全て軽くかわされ。

 相手の素早い攻撃は確実にヒットする。


「このままじゃ、勝てないの、だ・・・・・・」


 なら、試してみるかと。

 あの、テレビでみたやつを、と。


 円はすっと息を吸い込み。


 隠れていた柱の陰から身をさらす。


「お、鬼ごっこは終わりか?」


 棒立ちでゾフィアに向かい、小さく呟いた。


「モード反転、裏コード、ザ、マーダーなのだっ」


 声を出した所で別に身体的になにか変わるわけではない。

 ただ円の中のスイッチが切り替わった。


 最近の円は生に寄り、生きることを何より優先して行動していた。

 それを、以前の無謀ともいえる死にたがりに戻るルーティンのようなもの。


ただ殺して、いつ死んでもいいように。


 瞳の光がどんどん失われていく。


「もう避けない、ただただ攻撃する。刺されても刺す。殴られても殴る。殺されてもお前を殺す」


 この行動の選択も、今年だからできる事。

 例え自分が行動不能になっても、まだ託せる仲間がいるから。


ナイフをきつく握りしめ、円は踏む出す。



       ◇


 そして、時間は過ぎ。


 こんばんは。リョナ子です。


「はぁ終わった、終わった」


仕事場で背筋をまっすぐ伸ばした。

 今日の仕事もこれで終了。


 さて、帰りますか。


 そういや、まだあの人達いるのかな。

 蓮華ちゃんに連絡してみようか。


 そう思っていたら。


「リョナッち、リョナっちっ! 終わりっすか?」


 殺菜ちゃんが部屋に入ってきたの。


「うん、今終わったとこだよ」


「そうすっか、それは丁度いいっす。これから拷問士だけでクリスマスパーリィーをしようって話になってるんすけど、リョナッちもどうっすか? 柘榴や蟲盛さんも来るっすよっ!」


 ほう、みんなでパーティーか。

 殺菜ちゃん発音良いな。


「う~ん、そうだね。別に予定もないし・・・・・・」


 蓮華ちゃんには連絡だけ欲しいって言われただけだし。


「じゃあ、みんなで行くっすっ! なんか今日限定っすけど女性五人以上でいくと料理、飲み物まで90%オフになるカラオケ店のクーポンが局から送られてたんすよっ」


 おー、90%オフなんてなんてお得なんだ。


「じゃあ、行こうか! ましろちゃんも誘わなきゃだねっ」


 そんな流れで、僕達はカラオケに行く事になったの。


 僕、殺菜ちゃん、蟲盛さん、ましろちゃん、柘榴ちゃん、後、なんか気付いたらいたドク枝さんの6人で執行局の門を潜る。


 蓮華ちゃんには電話したけど全く繋がらなかった。


 外へ出ると、まず僕はびっくりする事になる。


 朝はピカピカだった黒い高級車がボロボロになってる。


「お、お疲れ様です、お待ちしてました。さぁ、お送りしますので・・・・・・」


 朝の金髪集団が僕を出迎えてくれたんだけど。


「え、ちょっと、大丈夫ですか?」


 人数も減ってて、なんかみんな血だらけなんだけど。


「あ、大丈夫です。こんなのかすり傷ですので。今は早くお車に・・・・・・」


 いや、全然大丈夫じゃないじゃないの。

 今もこの人頭から血が流れ出てるよ。


「ん~? あんた達誰っすか? 見るからに怪しいっすね」


「あ? なんだ貴様。用があるのはリョナ子様だけだ。関係ない奴は・・・・・・」


 ゾフィアが敵意を見せた瞬間だった。


「リョナッちはこれから私達とカラオケ行くっす。そこを退くっす」


 殺菜ちゃんが顔付きを変え睨み付けると、ゾフィアは口紡ぐ。


「あ、そういう事なので、あの、帰りはいいです。お疲れ様でした」


 金髪軍団をかきわけ通り過ぎる。


 彼女達はそれ以上微動だにしなかった。



◇


 6人は普段通りに進んでいく。


 見た目には普通の女の集団に見えた。


 しかし、感じる者には嫌でも感じ取る。


この者達から星空に吸い込まれるように立ち込める漆黒の炎。

それは合わさり大きな髑髏の形を作り出していた。


「ママ・・・・・・、どうする?」

「・・・・・・あれは駄目ねぇ。体がどうにも動かないわぁ」


 

「円ちゃん。ごめん、あれ私無理」

「・・・・・・しょうが無いのだ、私も足が一歩も出ないの、だ」



「あらあら、特級の壁ですね。あれを破れるのはこの国には一人もいませんねぇ」 


 三者三様、別々の場所からそれを眺めるも。


魅了され畏怖し。

 

 誰も手が出せなかった。


 ちなみに蓮華以外の全員が全身血まみれだったという。


◇

 

 きゃっほー、リョナ子です。


 お酒も入ってハイテンションなリョナ子です。


 カラオケ店でワイワイ盛り上がって。


「こら、ドク枝ぇっ! なに連続で入れてんだっ!」

「そうだ、ドク枝ぇっ! お前のリサイタル聞きに来てんじゃないんだよっ!」


 みんな結構酔っ払ってきてた。


「なによ、なによ、みんなして。私は、ただこの美声をみんなに・・・・・・よよよ」


 多分、ドク枝さんは次の日にはなにも覚えてないから言いたい放題なのだ。


「あ、僕、ちょっとお手洗い・・・・・・」


 尿意を催して部屋を出た。


 用をたして部屋に戻ると。


「あれ、たしか303だから、ここだったはず、え、みんなは?」


 部屋には殺菜ちゃん達がおらず、キャンドルの光だけが朧気に辺りを照らしていた。


 部屋のモニターが突然切り替わり。


 そして、部屋の施錠がガチャリと音を立てた。


 あぁ、このパティーンは。


「メリークリスマス、リョナ子ちゃん」


 聞き覚えのある声。


 やっぱりか。


「ふ、メリークリスマス、葵ちゃん」


「これを見てるってことは、今年も私の勝ちかな」


 なるほど、朝の変な出来事はこういう事か。


 また、裏でなにか色々やってたんだね。


「うん、よく分からないけど、また君の勝ちみたいだよ。しょうが無いから今年も君に付き合おうと思う」


「今年は円ちゃんすら囮にしたの。内緒だけど他の勢力にも私の息がかかってる者はいるんだよぉ。てなわけで今年も朝まで私の一方的に愛を語るとするね」


 明日も仕事だし、それは本当に困るなぁ。


 でも、たまには君の声を聞こうとしよう。


 何はともあれ。


「メリークリス・・・・・・」


 と、ここで終わりかと思いきや。

 施錠されたドアが開いた。


「ふふ、そうはいきませんよ~」

「こんばんは、リョナ子さん」


 見知った顔が二つ。


「あれ、蓮華ちゃん、シストくん、どうしてここにっ!?」


「独り占めはさせません。今年は私もお邪魔しますね」

「なんか母さん達は全員倒れたので、僕が代わりに来ました」 


 あら、葵ちゃん、今年はどうやら引き分けみたいだね。


 今年は四人で楽しもうとしよう。


 メリークリスマス。

マリークリスマス。今回奇跡的に死傷者0。

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