なんか、季節の変わり目みたい。
最終ステージ前にリョナ子挟みます。
こんにちは、リョナ子です。
最近、ちょっと寒くなってきたね。
連日の忙しさからか体調も崩しがち。
でも、体調管理も仕事の内だよね。
だって、僕がダウンしたら、他の人がそのフォローに回らなきゃならない。
だから、僕は風邪なんてひいてられないのだ。
それがプロ意識ってもんだよ。
こんにちは、リョナ子です。
最近、ちょっと寒くなってきたんで風邪をひいてしまいました。
喉が痛い、鼻水も出て、体もだるい。
「ゲホリ、ゲホリ・・・・・・」
マスクをして、気怠いそうに廊下を歩く。
よりによって、今日は仕事が山積み。
でも、やらなきゃ・・・・・・。
もう少しで自分の部屋につく。
そんな時、近くの部屋のドアが開いた。
「ん、おや、リョナッち。おはよーっすっ!」
そう挨拶してくれたのは殺菜ちゃんだった。
「おはよー。殺菜ちゃん、相変わらず早いね、う、ゲホリ、ゲホリ・・・・・・」
「ありゃ、リョナっち、風邪っすか」
あぁ、しまった。
殺菜ちゃんは同じ特級で、いつも誰よりも早く来て仕事を始め、そして誰よりも遅くまでやってるプロ意識の塊のような子だ。
こんな姿を見られたら軽蔑されてしまうかも。
誰にも見られないように部屋に行くつもりだったのに。
「ふむ、リョナっち。今日の仕事どれくらいあるっすか?」
「え・・・・・・そうだね、昨日の時点では、レベル6が2件、レベル5が3件かな」
「そうすっか。なら、リョナっちはもう今日は帰るっす。風邪はひき始めが肝心。ゆっくり休んで欲しいっす」
「いや、でも、高レベルが5件も・・・・・・」
僕がそういうと。
殺菜ちゃんは再び自室のドアを開け。
「そうっすね。流石にこれは私一人ではカバーできないっすけど・・・・・・」
壁の内線電話を手にとった。
「みんなで分担すれば大丈夫っすっ!」
こうして、殺菜ちゃんは連絡をとった。
「あ、柘榴っすか。かくかくしかじか、レベル5一件追加で頼むっす」
「あ、蟲盛さん、実は・・・・・・、はい、なのでレベル6をお願いしたいっす」
「あ、歌音さん、折り入ってご相談が・・・・・・そうなんすよ、だからお願いするっす」
数カ所にかけて、殺菜ちゃんは受話器を置いた。
「残りは私がやるとして・・・・・・。はい、これで今日のリョナッちの仕事はなくなったっす。安心して帰るっすよ」
マスクをしていたからか、それとも・・・・・・。
僕の眼鏡が曇りだす。
「いや、でも・・・・・・」
「みんな、快く引き受けてくれたっすよ」
「そんな、申し訳ない。みんなも忙しいのに・・・・・・そして、僕は特級だってのに・・・・・・体調を崩して、プロ意識の欠片も・・・・・・」
嬉しさ、そしてその反面、罪悪感も押し寄せてくる。
「誰だって体調を崩す時はあるっすよ。それにプロ意識っていうなら、それこそそんな状態で仕事して欲しくないっす」
う、たしかに。最初はまだしも最後の方まで集中力が持つか自信はない。
「それでも、みんなに迷惑が・・・・・・」
「もー、いいんすよ。その代わり、今度私や他の仲間が体調崩した時は、リョナッちが助けてくれればいいんすっ!」
殺菜ちゃん・・・・・・。
こうして、僕はお言葉に甘えて帰り支度を済ませ、一応手伝ってくれる人達に一言お礼をいい、再び殺菜ちゃんの元へ戻ってきた。
すでに、殺菜ちゃんは仕事に取りかかっていた。
ついさっきまで地母神みたいだった殺菜ちゃんだったが。
「塵屑がぁぁぁああああああああああああああああああああああああああ」
部屋の中では、魔神のようになっていた。いや破壊神かも。
この仕事は僕がやるはずだったやつだ。
罪状は児童虐待。今年に入ってこの罪状、何軒目だろうか。
これに限ったことじゃないけど、色々後を絶たないね。
被害者は四歳の女の子。
母親の再婚相手の男に虐待を受けて死亡。
この夫婦の間には下にもう一人子供がいて。
男にとって連れ子であったその子は疎ましく、そういう家庭環境も一つの原因だったのかもしれない。
勿論、連れ子だろうがなんだろうが我が子のように可愛がれる人の方が多いだろうけど。
「おい、屑野郎、お前、あんな幼い子に謝罪ノート書かせてたんだってな? 毎日、毎日。どんな気持ちで書いてたんだろうなぁ、ちょっとした事で激怒されて、叩かれ蹴られ。いつも怯えてなきゃならない。あんな小さな子がだ、考えるだけで胸くそ悪いわぁあ、あぁあああ?」
殺菜ちゃんが、吠えながらも道具を取り出す。
あれは。
肉を柔らかくする時に使う、なんかトゲトゲがついたハンマーのようなやつっ。
「おぉ、歯を食いしばれやカス、まぁ最初だけでいい、すぐ無くなるからよぉおおおおおおおおおおおおおお」
それを男の頬目掛けて思いっきり振り払った。
「ぐわかあああああああああああがああああああああああああああ」
口は声が出ないように布で覆われていたが。
その白い布があっという間に赤く染まりだす。
「ほら、声は出せねぇから、心で思え。ごめんない、もうしません、おねがい、ゆるして、あしたからはちゃんとしますってよぉおおおおおおおおおおおおお」
それらは男が女の子に書かせていたノートの内容。
言いながら、再び肉を柔らかくするやつを振り上げる。
「あぁ、そうだそうだ。お前に明日はなかったなっ!」
今度は右目。
ハンマーは眼球を潰し、中へと容易く侵入した。
「ひぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ」
口を塞がれてなお漏れる絶叫。
毛様体、水晶体、硝子体、虹彩、動向、角膜、胸膜、脈絡膜、網膜、黄斑部、それらが一瞬で破壊される。
「おら、もう一度だ、心で思え。ほんとうにもうおなじことはしません、ゆるして、おねがいします、いっしょうけんめいやる、やるぞってなぁあああああああああああああ」
殺菜ちゃんの腕がまた高く伸びる。
「心に刻んで死ね。これ、ちゃんと覚えておけよ」
ぐちゃり。
何度も顔にめり込んでいく。
その度、グチャグチャと音が聞こえるよう。
僕が風邪をひいたばっかりに、あの罪人は拷問士最恐に当たってしまったか。
ま、同情は全くしないけど。
殺菜ちゃんの執行。顔の形が最終的にどうなるか見ておきたいけど、折角みんながフォローしてくれてるのだ、今日は甘えて帰らせていただきます。
こうして、朝来た廊下を引き返していく。
その時だった。
「話は聞かせてもらったわ」
どこからか聞き覚えがある声が。
「その声は、イキリ毒マスク太郎先輩っ!?」
「ドク枝よ」
うん、ドク枝さんだった。
「なによ、リョナ子、風邪ひいたんだってぇ~、ちょっとプロ意識が足りないんじゃないのー、まぁでも、水臭いわね、こういうときは風邪とは無縁、タフで偉大な先輩であるこの・・・・・・」
「あ、間に合ってます」
先週からひいてる風邪が治りません。




