ういうい、ついに始まったのだ(殺人鬼決定戦編)
後で色々調整するかもです。
ういうい、円なのだ。
赤と青のストライプドレス。
滅茶苦茶目立つの、だ。
こんなことなら緑の服を着てくれば良かった。
まさか森を移動するとは思わなかった。足場の悪い場所もブーツではきつい。
そして。
「来たっ!」
私は、タイミングよく登っていた木から飛び降りる。
真下の女に、肩車するような形で落ちた。
「なっ!?」
女は瞬時に反応するが。
それでも遅い。
足をしっかり首に絡めて。
そのまま全体重をかけ、真横に体を傾けた。
転蓮華。
以前なんかの本で読んだのだ。レンレンの名前が付いてたからよく覚えていた。
相手の首がそれにより折れ曲がる。
一緒に倒れる寸前、私は片手を地面につき、転がり込む。
「はぁはぁ、こいつをやれたのはでかいの、だ」
致命傷にはならないが、気を失わせるには充分。
一緒にヘリに乗ってたミドガルドシュランゲの一人。
ここで殺すと後々さらに面倒になるので、プレートだけを奪う。
「これで、五枚め」
もう合格条件は果たした。だが、一向に先に進めない。
僅かな騒動がまた他の参加者を引き寄せる。
つねに瞬殺してその場を離れなければならない。
「これはなかなかきついの、だ」
この先に降りた奴らも、こっちに向かうか、待ち伏せてるか、だ。
息が荒い。周囲の高温多湿がまた余計に体力を奪う。
水などないから、このままでは脱水症状を引き起こす。
「いたぞっ! こっちだぁあああああああああ」
「ちっ!」
足を止めてる余裕もない。
次々と刺客はやってくる。
味方が誰もいない状況。
それは戦力よりも精神的に堪えるのだ。
白頭巾はレンレンの指示で置いてきた。
そもそも私も連れてくる気はなかった。
まさにここは死地。こうなることは予想できた。
だけど、レンレンは何を考えているのか、私一人をここに送り込んだ。
「さすがに、これは無茶ぶり、なの、だ」
相当過大評価されてるのか、それとも他の意味が・・・・・・。
「見つけたっ!」「早くこっちだっ」「回り込めっ」
森に声が響く。それに引き寄せられるようにどんどん参加者が集まってくる。
「くそっ! 邪魔、だっ!」
前に立ちふさがる男にナイフを振るう。
太股、首、一呼吸で振り抜く。
崩れる男の体を蹴り上げ、前へ。
きりが無いの、だ。
汗が湧き出る。呼吸が乱れる。目がかすむ。
とにかく、暑い、喉が渇く。動きが鈍る。
「うおぉぉおおおおおおお」
必死でナイフを振り抜く。
誰だ。
隣に誰が。
誰がいたら私は。
「周りの全てが敵の状況で、たった一人、いてくれるだけで、その全てを覆す事がで、きる、そんな・・・・・・」
考えるまでもない。
想像する、のだ。
目に焼き付けたあの姿。
正確に、なにもかもありのまま。
私なら、できる。
心から求めて・・・・・・。
うっすら白い靄が。
じょじょに形を形成する。
私の持ってる全てがそれを叶える。
この数年、一日たりとも考えなかった日はない。
恋い焦がれて、何度も泣いて、夢の中、何度も手を伸ばして。
その手が。
決して振れられなかった。
その手が、今。
届く。
〈円ちゃん〉
姿が完全に。
そしてあの懐かしい声が。
私の耳に。
「・・・・・・あぁ、姉御」
あの頃のままの姉御が今、私の前に立っている。
これは幻。
だが、完全に再現した。
その影は、私に背を向け。
〈さぁ、円ちゃん、行くよぉ〉
立ち上がる。
気力が一気に漲る。疲労、弱気、なにもかも消し飛んだ。
「ういうい、分かったの、だっ!」
なにもかもあの頃のまま。
姉御が隣にいる。これだけで誰にも負けない。
とはいえ、あくまで幻想。戦闘では手を貸してはない。
「あ、姉御、これからどうすればいい? どうすれば、無事にあそこまで辿り着ける?」
〈そうだねぇ。円ちゃんはこのままなにもせず真っ直ぐ向かうだけでいいよぉ。その後で、道具を回収しようか〉
「え、でも、私は、今、四方八方から狙われてる、それに道具ってどういう事、だ?」
〈うふふ、いいから、いいから〉
疑問は抱いたが、姉御の言う事に間違いはない。
ここまでできるだけ気配を消し、それでもたまたま見つかった参加者とだけ戦闘をしてなんとか凌いできた。なのに姉御は逆に目立てという。
姉御の言った通りに動いた。
わざと分かるように、自分の存在を曝すように。
だけど、不思議と追撃がピタリとやんだ。
「これは、どう言うこと、だ」
〈簡単だよぉ、敵に分からないように動いたら、敵以外にも分からないじゃない〉
「え、敵以外、そんなの、いないのだ」
今の私の味方は姉御だけ。
殺人鬼連合が参加してないのは事前に知っている。会場にもメンバーはいなかった。
〈うふふ、すぐに分かるよぉ〉
こうして、私達は無事に第二会場の入り口まで辿り着いたの、だ。
「ほう、生きてたか、そうでなければな」
入り口で迎えたのは、ミドガルドシュランゲのボスとそのメンバー。さっき倒した一人を除いた5人。
そして。
「・・・・・・・・・いいよ、いいよ、やはり、お前は今、ここで僕が直接、だ」
数は減ったが、数十人からなるゾディアックファミリー。多分、メンバー同士でプレートを渡したのだ。
「でも、このまま会場に入れると思わないでね、面倒だからここで終わらせるよ」
「いやいや、早い者勝ちだろ? うちが先にやらせてもらう」
二つのグループが我先にと動こうとしている。
第二会場目前というのに、せっかちすぎ、る。
さっきまでならここを通るのは無理だったの、だ。
でも、今の私には。
〈君達かな、うちの円ちゃんを虐めてるの?〉
それは私にしか見えず、聞こえないはず。
しかし。
その冷笑。
その森全体がざわめきだす言葉。
それは私を通して、二人の頭にしっかり伝わる。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
不思議そうな顔を見せ無言になった二人を割くように、私は進む。
「決着は、ここで決めるの、だ。今の私は手強い、ぞ」
なんせ姉御の前では、お前らでさえ霞んでみえる。
そして、舞台は第二会場へ。
ここでは各自、入った順で個室に収められた。
「さぁ、皆様、この会場は同じ広さの部屋が縦横複数に配置されて構成されております。現在、各部屋には一人ずつおりますが、一定時間ごとに四方の扉の鍵が開きます。そこで移動するもよし、留まるも良しです。ただし、同じ部屋になった者は、そこでなにかしらの勝負をして頂きます。各部屋には色々な物がありますので、それで決めてもいいですし、純粋に殺し合うのも可能です。さらに交渉しだいでは戦闘を回避する事も可能ですが、その場合は、片方が移動する場合、同時に移動してください」
説明を聞き終えて。
「これは、仲間のいない、私には、かなり不利なの、だ」
この場所以外の部屋は全て敵。どこに行っても敵と遭遇するのだ。
そして、仲間同士なら戦闘を回避して、他の部屋へと一緒に移動する。
これはゾディアックファミリーなどは、移動のたびにどんどん仲間が補充されていくのだ。
「その前に、動くべきか・・・・・・」
序盤になるべくあっちの数を減らしていくしかない。
でも、結局それは連戦になり、いくら減らしたからといって最終的には何人かは揃ったあいつらと殺るはめになる。
「姉御、どうしたら、いい?」
実際、それしか方法はなさそうだが。
〈円ちゃんはこのまま動かない方がいいよぉ〉
「え、なんで、だ?」
〈う~ん、たしかに仲間同士は人数が増えていくけど、ゾディアックファミリーとミドガルドシュランゲが同じ部屋になったら協力するとは限らない、そして、その他の勢力も懸賞をかけたゾディアックファミリー以外は皆、円ちゃんを狙うライバル同士だよぉ〉
ふむ、そうなると敵同士でつぶし合う可能性もある。
特にミドガルドシュランゲなんかは自分達だけで私に復讐したいのだ。
〈そして、各部屋は入った順番で割り振られた。予選の人数制限から考えて、この部屋の総数は予想できる。なら円ちゃんの位置もなんとなく特定できる〉
自分自身が何番目に入ったかは分からんが、最後の方に入った者なら大方の予想がつく。
「それなら逆に私の場所に向かってくるの、だ」
〈いや、普通は移動すると思うからそうはならない。あくまで最初の位置が分かるだけ。だけど、よく考えて、円ちゃん。この場に誰がいるか、いそうなのか。それは敵だけとは限らないんだよぉ〉
どういう事だ。
姉御は答えを知っている。ならそれを作っている私にも分かるはず。
今ここに誰がいるか。
まず、ゾディアックファミリー。
そしてミドガルドシュランゲ。
ゾディアックファミリーの狙いは本来私ではなくキラキラだ。
殺人鬼連合の立場で考えれば、ゾディアックファミリーは敵であり、ニルヴァーナの恋心も受け入れがたい。一番排除した存在。しかし、現実でそれは厳しい。殺人鬼連合が総合力で負けているのもあるが、ニルヴァーナ自体中々表にで出てこないからだ。
でも、今はどうだ、レンレンとのやり取りでここにニルヴァーナが来ることは事前に知っているはず。いつもはメンバーに囲まれてるニルヴァーナを孤立できるチャンスがあるのも関わらず、あのキラキラが何も手をうたない?
「そんなはずはない。なにかしらの行動は起こしているの、だ」
ならばなんだ。ここに殺人鬼連合のメンバーがいないことは確認済みだ。
てことは、人以外での策か、それか、私すら知らない・・・・・・。
そもそも、なぜここにゾディアックファミリーが集結した。
ミドガルドシュランゲは、姉御がメンバーを殺したからだが。
「時間です。施錠が解かれます。各自自由に行動してください」
ピーと音がなり、3方向の扉の鍵が赤から緑に変わった。
ちなみに3方向なのは、もう一つはただの壁だからだ。つまりこの部屋は四方どこかの端っこなのだ。
ゆっくり扉が開いていく。
それは二つから。
私なら自分が端なら右、左、どちらかの隣に行くだろう。その方が位置を把握しやすい。
それは両隣も同じ考えだったようで、たまたま隣はこちら側の扉を開けたのだ。
姿を見せたのは。
青と黄色の外套を羽織る男。
そして、もう一方は少女。
太股まである長いブーツ。
薄い水色のワンピース。
髪は。
淡い桜色。
「よっしゃー、いきなり当たりだぁああああああああ」
確率的に人数の多いゾディアックファミリーのメンバーに出会うのは仕方ない。
もう片方は他の参加者だが、懸賞狙いか、それとも。
まずは、確実に敵であるこっちの男を。
そう思って、そちらに意識を集中した時だった。
男の首から血が噴水のように飛び散った。
「え、あれ・・・・・・俺の血、あれ、お前、なん・・・・・・」
少女の手には生け花用のハサミが握られていて。
「こんにちは、円ちゃん。動かなかったね、えらいえらい」
こちらに向かって返り血を浴びながら微笑む少女。
なんだ、こいつ、私を知っている、のか。
〈この子が道具の一つだよぉ〉
姉御が囁く。
「あぁ、円ちゃんは私の素顔を見た事ないのか、はじめましてではないけれど、自己紹介しておこうかな」
いや、今のでもう分かったのだ。
お前は。
「私は天宮 種。葵シスターズの一人で、姉様に作られたオートマタ」
葵シスターズ、そしてオートマタ(自動人形)か。
今なお、そう名乗るという事は。
「私は姉様に言われたの、このタイミングで自由に動けと。好き勝手暴れなさいって。私を制御できるのは姉様だけ。あの時の貴方では絶対不可能。でも今はどう?」
姉御はあえてこいつを私に受け継がせなかったの、か。
あの時では手に余ると。
姉御の手で今、ゼンマイが巻かれ動き出したオートマタ。
「私は姉様しか認めない。でも、もし貴方が姉様に近いほど私を魅了できるなら考えてあげなくもない。そうなれば貴方は私という最強の切り札を得ることになる」
最強の切り札。自分でいうか。
「面白いの、だ」
実際、こいつがこの舞台を作った。
土台は姉御だとしても、ここまでの修正はこいつの仕業。
ミドガルドシュランゲが大会寸前で私の情報を得たのも。
ゾディアックファミリーがこの場に集結しているのも。
レンレンが私一人をここに送り出したことも。
「これで優勝すれば、お前は私を認めるの、か?」
「それは円ちゃんの行動次第かな。ちなみに私は仲間ではない、あくまで自動だよ。それを道具として使うのは自由」
そうか、ならせいぜい働いてもらうの、だ。
「時間です。施錠が外れます」
何度解かれたか。
私達はあれから動かない。
「あははん、チョッキン、チョッキン」
種は、倒した男の両目に開いたハサミを近づける。
「や、やめ、俺の負・・・・・・あ、ああ、がああああああああああああああああああああ」
左右の刃を両目に突き刺して、後は力いっぱい握りしめた。
戦闘するのは、私だ。種はこうして行動不能になった奴で遊んでるだけ。
だが、こうして玩具を与えていればここから動かない。
今の所は、同時に来てもまだ二人だから何とかなってるが。
これが三人だと・・・・・・。
「そろそろかなー」
男の顔をハサミで切り刻んでいた種がこちらを見ないで呟く。
「時間です。施錠が外れます」
悪い予感は当たるもの。
今度は三人がこの部屋に入ってきた。
しかも一人は寄りにも寄って。
「漸く当たりだ」
軍服を羽織る女。ミドガルドシュランゲのメンバー。
私を見て不気味な笑みをこぼす。
「たしか、お前はシュミットとかいう・・・・・・」
捕まった時にメンバーを仕切ってた女。実際はナンバー2だったが。
どっちにしろ手強いに変わりは無い。他とは格が違う、のだ。
「種、お前はこいつが来るの分かってたの、か?」
シュミットと対峙しながらも聞いてみる。
「・・・・・・違う。私の言ったのは別の方」
別の方、だと。
その時。
シュミットの顔面が激しく歪んだ。
即座に白目を剥いて倒れるシュミット。
それは後方からのハイキック。完全に芯を捉えた一撃だった。
「なんでこの人、こんなに油断してんの?」
放ったのは別の部屋からここに入って来た少年。
背は私よりも少し高いくらいだが。
髪が白と黒のストライプのように区切られていて。
あれ、こいつ、どこかで見た気が・・・・・・。
「切り札は最後の最後まで隠すもの。姉様はこれを出させたかった。貴方に見せるために、そうこの子が殺人鬼連合の切り札・・・・・・」
思い出したのだ。
こいつは、確か、あの時の・・・・・・。
「レッドドット、白頭巾と並ぶ最年少レベルブレイカー、キラープリンス」
名前を言い放ち、種がニタァ~と笑い出す。
「叶夜だよ。お姉ちゃんに言われてね。僕を出すなんてよっぽど嫌なんだろう」
背も少し高く、少し大人っぽくはなってるがまだまだ幼さは残る。
だが、それは容姿だけの話、纏う雰囲気は以前に増して悲しいほどどす黒い。
「僕はお姉ちゃんにお前の影に隠れながら動けって言われてた。でも、そっちの子には顔が割れてたらしく、すぐに気付かれちゃった。だからもういっそ姿を曝したほうが楽かなって」
姉御が知ってるならシスターズに情報は共有されている、か。
種はそれが分かるとすぐに接触して、この会場に着くまでの間、二人で私を生かしていたと。
〈これで道具は揃ったねぇ〉
そう姉御は最初から仲間ではなく道具といっていた。
これで納得なのだ、こいつらは仲間ではない。
しかし、敵ではない。
ならばちゃんと使いこなして見せるのだ。
「さて、まだ一人いるけどどうするのー? まさかいきなり私達に頼らないよね?」
残っていた男は、こちらが三人と分かるやいなやかなり弱気になっている。
こいつなら一人でも容易いが。
〈円ちゃん、折角だから道具の使い勝手を見てみよう、使えるものはなんでも使って三人掛かりで遊んでみて〉
「いや、折角だ、お前らの使い勝手を見てやるの、だ。使える物はなんでも使うの、だ」
「あははん、多分姉様もそう言う。変な拘りを持たず、なるべく楽に簡単に、現状の最高率を」
「切り裂きぃ、あんまり調子に乗らないでよ、僕達にすれば利用してるのはこっちだから。せいぜいお姉ちゃんのために頑張れ。でも、そうだね、使い勝手はお互い見ておこうか」
叶夜が振り向いて相手を見据える。
死体をチョキチョキしていた種も立ち上がる。
怯える蛙を3匹の蛇が囲んで。
ここからやっと本番なのだ。
お盆なので出してみましたー。。全員ちゃんと見せ場は作る予定です。




