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おや、これは考えなければですね。

はい、蓮華です。


 さぁ、やばい状況になってますよぉ。


 今、私達昆虫採集部は。


 あの凶悪殺人集団ゾディアックファミリーに睨まれております。


「・・・・・・円さん、今のあの人はキングって事でよろしいでしょうか?」


 報告は受けたとはいえ、あの場にいなかった私にはあれがどの人格か判断できません。


「・・・・・・雰囲気、言動・・・・・・間違いないの、だ」


 私の隣で、相手を睨み返している円さんがそう告げます。


「・・・・・・なら話はできそうですね」


 聞いた話では、他は話が通じなそうな印象でした。


「あのー、信じてもらえるかは分かりませんが、一応、私達は欺されてここに来ただけでして、そちらのガーベラさんを殺害したのは私達ではありません」


 嘘偽りなく目をしっかり見て話しかけました。


 さて、信用してもらえればいいのですが・・・・・・。


「・・・・・・ふぅん、確かに嘘は言ってなさそうかな」


 意外にもすんなり信じてもらえたっぽいです。

これはこのまま戦闘回避できますかね。


「・・・・・・でも、そこの二人はこの前散々うちのメンバーを殺ってくれたよねー?」


 あ、駄目みたいです。

 ガーベラさんを殺した殺さない以前の話でした。


 殺気は変わらず、むしろ強まりました。


 これは回避不可ですねぇ。


 さぁ、どうしましょう。


「蓮華お姉ちゃん、円お姉ちゃん、私が殿(しんがり)をする、だから逃げて」


 そう言い白頭巾が前に出ました。


 全く何を言い出すかと思えば。


「馬鹿言うんじゃないの、だ。それは私の役目、だ。時間もお前の三倍稼げる」


 円さんがさらに前に出て。


「どちらにせよ無駄ですよ、把握している人数が合いません。つまり囲まれているって事です」


 私がさらにさらに前に出ます。


 まだ銃は出しません。


「こうなりゃ、三人仲良く死にますかぁ」


 戦況分析、あれがニルヴァーナなら、戦闘になればその役目の人格にスイッチするでしょう。

 話では、蛇苺さんと互角に渡り合ったとか。

 ならば、円さんはそれに捕まりますね。

 残りは数十人、それを私と白頭巾だけで排除する。


 う~ん、厳しそうです。せめて蛇苺さんがいればなんかとなったのでしょうが。


 殺人鬼連合の助けは絶望的、それを踏まえての位置設定。


「あの~、交渉よろしいでしょうか?」


 やはり戦闘するのは得策ではないですねぇ。


「・・・・・・うん? 交渉? この状況でかな?」


「はい、まずうちの円さんは、他の組織にも命を狙われてましてね。ここで貴方達にやられるとあっちが怒ると思うんですよぉ~」


「へぇ~? その組織ってのは、僕達とやり合うだけの力を持ってるのかな?」


「はいー、多分ご存じだとは思うんですけど、ミドガルドシュランゲって人達ですー」


 ニルヴァーナさんの表情が僅かに変わりました。


「ミドガルドシュランゲ・・・・・・よく知ってるよ、たしかにあそことは揉めたくないかな」


 でしょうね、ミドガルドシュランゲは少数ながら精鋭揃いです。特にリーダーのポテンシャルがかなり高く、全体的に高水準で纏まっています。


「でも、だからなにって感じかな。もし来るなら来るでうちは迎え撃つし、その前に、その子を半殺しにして引き渡せばいいだけだ」


 ビックネームを出せば、多少は考慮してくれるかと思いましたが無駄でした。


 でも、それは他のメンバーに提示しただけ。


 貴方には他の条件があるんですよ。


「なら、シストくんの情報ならどうでしょう?」


 その一言は。


 彼、彼女? の顔を豹変させるに充分だったのです。


「・・・・・・君は、あの子をよく知ってるの、か?」


 先ほどまでの余裕に満ちた顔はどこへやら。


 今は、血走った目で、涎を垂らして、上半身だけがこちらに迫っています。


「ええ、貴方達、いや貴方が態々この国へ来た理由が最初はわかりませんでした。貴方は今まで極力姿を見せなかったのに、誰を殺すわけでもなく、今では素顔まで見せて、こうして大っぴらに行動しています。でも今の顔を見て確信しましたよ」


 殺人集団のボスが殺人するわけではなく、ここにきた理由。


 それは単純な事でした。


 ただただ愛する者に会いに。


 そのような感情に無頓着な円さんの報告が遅れたのはしょうがないでしょう。

 私が疑問に思って初めて聞いた最後のやり取りです。


「そうさ、そうなんだよっ! もうどうしていいか分からないんだッ! どうすればいい? 誰も答えはくれないっ、赴くまま行動する、でも嫌われたくは無い、周囲の全てを排除するべきか、監禁してひたすら愛を囁くか、会いたい、会いたい、会いたい、でもあの子のガードは思いの外堅い、写真を眺めるだけじゃもう無理なんだ、壊れるくらいかき混ぜてもまだ疼く、収まらない、もう愛して、愛して、愛してるんだぁ!」


 あらあら、シストくんもとんでもない人に目をつけられちゃいましたね。


「なら、私が誰にも邪魔されないように会えるようセッテングしますよ。それで今回は見逃してください」


 普通ならこんなの戯れ言と一蹴されそうですけどね。

 恋は盲目とはよく言ったもので。


「ほ、ほ、ほ、ほ、本当かいぃっ!? う、う、う、嘘じゃないだろうねっ!? もしそれが本当に可能ならならなら、どうか、よろしく、頼む、頼みたい、たい」


 おー、釣り上がりました。


「勿論ですよぉ、じゃあ連絡先教えてもらいます? 後ほど連絡しますのでぇ」


「うんうん、連絡はメンバーを通してるから、そっちでいいかな?」


 こうして、私達はこの場を凌いだのでした。


 

 ういうい、円なのだ。


 先日そんな前置きがあってからの。 

 

「ここが、会場、か」


 今、私が立っている場所は、朽ち果てた野球場跡。


 続々と中に人が入って来ている。


 ある程度、人が集まった来たところで。


「あ、いたいた」


 周囲の視線を一気に集める。


 青と黄色の外套を纏った集団。


 その先頭の人物が早々に私を見つけ声をかけてきた。


「・・・・・・ニルヴァーナ」


 仲間を全員連れてきた、か。


 人の皮で作ったマスクはもうつけてない。

 中性的な素顔はこれでもかと緩んでいる。


 頗る機嫌がいい。


 だが、それも。


「で、で、で、シ、シストくんは、ど、どこかな? まだ来てない?」


体をくねらせ、モジモジさせて、まるで乙女のよう。


「キラキラ・・・・・・シストはここには来ない」


 はっきり告げる。


「・・・・・・え?」


 天からどん底に突き落とされたように。

 両目が開き、体が痙攣しはじめる。


「レンレンから伝言だ、一応聞いてはみたんですけどねぇ、駄目でしたー、ごめんなさーい、だそう、だ」


「う、嘘ついたの?」


「いや、一応聞いたらしい、と」


 ニルヴァーナの震えが急に止まった。


 そして、大声で叫ぶ。


「同じだろぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおがあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


涙を流しながら、頭に両手を置いて、激しく吠える。


「指折り数えてええええええええええええええええええええ、お洒落してええええええええええええええええええええええええええ、この日が来るのを何日も何日も、永遠とも思える時間の中ぁあああああああああああああああああああああああああああああ」


 あぁ、これはやばいのだ。


 ニルヴァーナのヘドロのようなオーラがどんどんあふれ出ている。


「お、お、お前達、い、一度しか、言わない、よく聞け、こ、こいつを生け捕れ、連れて帰る」


その指示に、後ろにいた全員が一斉に私を見た。


「おいおい、待て待て、そいつは私らのだ」


 会場内の全員がニルヴァーナの姿に、一歩また一歩と距離を取る中。


 反対に私の後ろからこちらに近づいてきたのは。


 黒髪一人、残りは全員金髪の。


「ミドガルドシュランゲ、か」


 黒い軍服のようなものを、肩から上着のように羽織っていた。


「邪魔するな、こいつらは約束を破った、だから、制裁を加えなければならない。喰いカスの腐った魚のような姿を、あいつに送りつけてやる」


光のない瞳で、ニルヴァーナが言い放つ。


「そうはいかん、こちらにも事情があるのでな」


 勿論、ミドガルドシュランゲの方も引くわけがない。

 こいつらは、態々この場を選んで今まで我慢してきたのだ。


「どっちでもいいの、だ。どうせなら早い者勝ちにしろ、私は逃げない、全員相手してやるの、だ」


 元からそのつもりで来た。


「いいだろう、なら、僕達は鬼だ、せいぜい逃げ回れ」


 ニルヴァーナが今度は会場全体に声をかける。


「今からこいつに賞金をかける、生け捕りで僕の前に連れてきた者には、言い値で買い取ってやる、何億でもいい、何十億でもっ。それとも人がいいか、何人でも何十人でもやる、男も女も少年も少女も大人も老人も、どの国籍、有名人でも誰でもだ、必ず与える、僕は約束は守るっ!」


 ここにいるのは殺人鬼達。金より後者の方が魅力か。

 いづれにせよ、会場全ての眼球が私に集まった。


「お集まりの皆様、そろそろお時間ですので始めたいと思います」


 そんな中、スピーカーから声が。

 いよいよ、か。


 以前、姉御が優勝した世界で一番の殺人鬼を決める大会。

 関係者は殺人鬼オリンピックなどと揶揄しているが。


 実際、個人で参加する者は皆無。大抵犯罪集団が賞品目当てか、名を売るためか、逆に他の勢力を量るため。


「今回も少々参加者が多いようですので、予選を行いたいと思います」


 ざっと見たところ、100人程か。


 ここから何人、どんな方法で減らすつもりか。


「次の会場はこことは別になります。今から皆様には、各グループに分かれてヘリで移動して頂きます。その際、会場の手前で上空から降下して頂きまして、落ちた場所から各々の足でその場へ向かってくださいませ。予選はその途中で行います。皆様にはネームプレートをお配りしますので、最低でも自分以外のネームプレートを二枚持って会場に入って頂きますようお願いいたします」


 つまり、会場に着くまでに、他の参加者のネームプレートを奪えってことか。二枚ということは最低二人から。


 次々とここからヘリは飛び立っていく。


 私は最後で、20人ほどと一緒に乗せられた。

 中には勿論、ゾディアックファミリーのメンバー、そしてミドガルドシュランゲの仲間も一人混じっていた。


「はい、ここで降下してください」 


 しばらくして、そう指示された場所は、見渡す限り緑一色。

 遙か遠くに白い建物が見えた。


「おいおい、この組だけ、随分手前じゃないの、か」


 まるで忖度があったかのように、私の組は他よりずっと第二会場から遠い。

 他の参加者はもっと会場近くで降下を始めている。 


「気のせいでしょ、ほら、さっさと降りなよ」


 同乗していたミドガルドシュランゲの一人がそう言う。

 こいつ、私を早々に殺る気満々なのだ。


「そうだな、ここでうだうだ言っててもしょうがない、のだ」


 意を決してヘリから飛び降りる。


 途中、パラシュートが開いて。

 私は森に吸い込まれるように地面へと。


 木々に絡まる紐をナイフで切り裂き。


 私は飛び降り、ぬかるんだ地に足をつける。


「さて、参加者全員が敵。皆、私だけを狙って向かってくるの、だ」


 どれだけやれるかはわからんが。


「行くの、だ」


 まずは第二会場へ。

 本当はもう少し先まで書くつもりでしたが、長くなりそうだったのでここで止めました。続きはすぐ更新する予定です。

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