おや、これは考えましたね。
早く帰ってきたのでやっぱり更新します。
ある街と街との境界で。
線を跨ぐように置かれた椅子。
そこに座るは女性だったもの。
手と足はそれに縛られ。
顔は天を仰ぐように真上を向いて。
開いた口。
くり抜かれた目。
そこには溢れんばかりの土が押し込まれて。
まるで根を張り、そこから芽吹いたように。
ジャスミンの花が植えられていた。
こんにちは、蓮華です。
先日、死体が発見されました。
死体の口と空洞の眼球部分に土がびっしり詰め込まれて、そこに花が植えられてました。
これに似た光景、どこかで見た事あるんですよ。
それもつい最近です。
「動きましたねぇ。シード・ザ・プラント」
「シード・ザ・プラント?」
隣には例の如く円さん。そして。
「また面倒そうなのが・・・・・・」
レッドドットこと白頭巾も一緒です。
「シード・ザ・プラント。私が名付けました。種を植える者です」
まぁ、それはいいとして。
少々厄介な事になりました。
「被害者は、橋本 茉莉花、24歳、女性。二日前から行方不明で家族から捜索願が出ておりました。そして今回死体で見つかったってわけです」
これ、まだ続きますよ。
このタイミングで動いたって事はあれに関係あるのでしょうか。
二日後、また死体が発見されました。
「被害者は牧島 ゆり。死体は椅子にブリッチのような形で括り付けられて、割かれた腹に前回同様、土を敷き詰められそこに百合の花が植えられておりました」
それも、ちゃんと中身を空っぽにしてからです。
これで確定しましたね。
ここで、問題なのは死体が発見された場所です。
私が厄介といったのはこの部分。
線を跨ぐように死体が置かれていたのです。
そう。
私の管轄と。
殺人鬼連合の縄張り。
その中間で、です。
これは、意図的にそうしてるのでしょう。
「どうする、のだ、レンレン。あいつら黙ってないぞ」
「そりゃそうでしょう。狩り場を荒らされたんですから、それもど派手にです。ですけど、こっちも面子がありますからね、ここでみすみす譲るわけにもいきません」
私が引けば、昆虫採集部の名が落ちます。
あっちが引いてもそれは同じ事。
かといって、どちらも遠慮したらそれこそシード・ザ・プラントの思うつぼです。
この子、私達の事をよく知ってるみたいですね。
「境界で死体を遺棄できる所は限られます。多分、もう一回くらいやるでしょうから、そこを押さえましょう」
ようは早い者勝ちって事です。
私の目に映らないって事は、犯行自体は別の場所です。
死体の飾り付けの段階で捕まえましょうか。
とは思ったものの。
考える事はお互い同じようで。
「ち、今日はご主人様までお出ましかい」
「深緑深層自らとはね」
目星をつけた場所で鉢合わせたのは、シードの方ではなく。
九相図の殺人鬼タシイさん、眼球アルバム目黒さんを筆頭に集まった殺人鬼連合の面々でした。
「お二人共、お久しぶりですねぇ。しばらく見ないうちに随分大所帯になったものです」
今は、たしかシストくんをいれて12人でしたっけ。
どうやらそのシストくんはいないようですけど。
「おー、深緑深層よぉ、今回はうちらに譲れや。そっちとは正直揉めたくねぇからよぉ」
バールを担いだタシイさんが一歩前に出て私に話しかけてきました。
ちなみに、あっちがいるのは自陣? の中です。
「・・・・・・ごめんなさい。こちらとしましても自分の管轄でこんな派手な事されちゃいましたのでね。きっちり対応しないと顔が立たないんですよぉ」
私が丁重にお断りした瞬間。
場の空気が一気に変わりました。
「それはこっちも同じなんだわ。別に揉めたくねぇってだけで、揉めちゃ駄目って事じゃねぇぞ、そこらへん、勘違いすんなよ、あ?」
あぁ、怖いですねぇ。
本当に気が短い人達です。
ですが、私も別に気が長いわけでもないんですよ。
「なら、やりますかぁ? 今の私は国を動かしますよー? 国家を敵に回す覚悟ありますー?」
主要な政界、経済界あたりの人脈、材料なんかは常々収集してるんですよ。
官僚クラスのネタもバッチリです。裏口入学のやつは勝手にバレちゃいましたけど。
「おおおおおおおおおおお、上等だぁあああ、それを裏で仕切ってんのがうちのパパだ、やれるもんならやってみろやあああああああああああああああああ」
思いっきりバールを地面に叩き付けて。
「おー、紅子、あっちの、お前の友達だろ、友達の不始末は友達のお前がやれや」
名を呼んで、控えていた紅 紅子が前に出てきました。
「そうですねぇ、白雪ちゃんは大事な大事な友達ですわ。いつもいつも思ってたんすよ、あの可愛い、可愛い、顔が欲しいって」
気持ち悪いにやけ顔で紅子がナイフを取り出しました。
「白頭巾、あっちはそう言ってますけど~」
私も後ろの白頭巾に声をかけます。
「あー、私は別に友達とは思ってないけど、そっちがその気ならやろうかな」
白頭巾もナイフを手にして私の前に出ます。
「白雪ちゃ~ん、ちゃんと泣いてよねぇ、泣き顔の状態で皮を剥いであげる」
「私がなんでレッドドットって呼ばれてるか知らないでしょ。教えてあげる」
二人の目がしっかり合わさります。
「お前らも準備しろや、何人死んでもあいつを止めろ」
他のメンバーの視線は別の者へ。
一斉に武器を取り出し見つめる先には。
「ん? なんだ、お前ら、誰か一人でも生き残るつもり、か?」
ギザギザの歯を見せて笑う、円さんです。
「おー、切り裂き、随分余裕じゃない。みんなで押さえつけて、その眼球抉り取ってあげよう」
眼球アルバムもご自慢の千枚通りをこちらに向けます。
互いの境界。
そこにどちらかが踏み入れた時。
もう止まらないでしょう。
始まってしまえばどちらか全滅するまで血が飛び散り続けます。
まぁ、いつものように始まらないんですけど。
「はいはい、ここで僕達が争ってたら相手が喜ぶだけじゃない」
毎度のように手を叩き、満を持してここに姿を見せたのは。
殺人鬼連合のボス、シストくんです。
「あら、これはシストくん、お久しぶりです」
「ご無沙汰してました。蓮華さんも分かってて煽ったでしょう。うちの者達は単純なのですからからかうのはやめてくださいよ」
いや、まさかここまで本気で怒るとは思ってなかったんですよ。
少しつついただけですのに、まるで蜂の巣のようです。
「単純なのはこっちの子達もでしてね、まぁお互い様です」
うふふ、あははと二人は微笑んで。
それを見た、互いのメンバー達の熱も冷え、得物を下げました。
「でもオネニー様、どうするの? 私達馬鹿にされてるんだよ? 落とし前はつけないと」
「そうだ、レンレン、私達も、だ。このまま放置するわけにも、いかん」
タシイさんや円さんがいうことも最もです。
「ならこうしましょう。僕達とそっちで仲良く半分こって事で」
「そうですねぇ。文字通り、分け合いましょうか」
頭も、顔も、手も足も、内臓も、皮も、何もかも平等に。
全方位に喧嘩を売るその度胸は嫌いではありませんが。
今回は少々お痛が過ぎたようです。
こんにちは、私は雨宮 種。
趣味はお花を育てること。
最初はね、生きた人間に花を植えたけど上手くいかなかった。
次は死体を肥料にしようとしたけどこれも駄目。
だから体を細かくして乾燥させた粉末を作った。
あやめの花にはあやめちゃんの粉。
それを振りかけながら。
「盤面の王と王が争うのを止めた」
私は呟く。
これじゃゲームにならない。
「それなら、もう一つの王を出すしかないじゃない」
さぁ、これでまだ終わらないね。
ゲーム再開だ。




