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ういうい、早く止めるのだ。

 最近、連続で起こった惨殺事件。


 これまで見つかった死体は二体。


 いづれもまだ年端もいかない少年だった。


 遺体は二つとも、痛々しい仕打ちの後が残っていた。



 この事件での問題はもう一つ。


 殺人鬼連合の縄張りで起きた事件という事。



 ういうい、円なのだ。


 今、私は、レンレンの指令で動いている最中、だ。


「お姉ちゃん、あっちにいるよ」


 隣にはいつものように白頭巾がいて。


「そうか、なら、話を聞くの、だ」


 私達は、公園に集まっていた低学年くらいの男の子達に近づいて行く。


 

その頃、殺人鬼連合、リーダーのシストを除く全員が何カ所かある溜まり場の一つにて集合していた。


「よう、今から質問するからよ、正直に答えろや、それで死体はどこだ?」


 どこからか拉致された少女は中央で椅子に縛り付けられていた。


 それを囲むメンバー達。


「な、なんなんですか、貴方達・・・・・・死体? なんのことですかっ」


 少女は怯えながらそう口にする。


「そうか、よし、おい、お前ら、一人ずつこいつの爪剥いでけや」


 少女の前には、バールを担いだ同じ年頃の女がいた。

 この女、リーダーの妹で九相図の殺人鬼と呼ばれるタシイ。この殺人鬼連合のナンバー2。


「はいっ!」


 タシイの命に、メンバー達が動く。


「えっと、まず私からやらせてもらいますわ、えっと、ペンチは・・・・・・」


 スキンラバー、紅 紅子が我先にと前に出る。


「え、ちょっと、待って、う、嘘ですよね、い、いや・・・・・・」


 少女は拳を作って抵抗するも、紅子は無理矢理こじ開け指を引っ張り出した。


「ほら、やるぞ、やるぞぉー、いいのか、今のうちに喋った方がいいんじゃない?」


「し、知らない、本当、信じて、私、本当になにも・・・・・・」


 少女は涙目になりながらも必死に首を振るも。


「あー、そうかい、んじゃ・・・・・・」


 がっちり挟んだペンチが。


「ん、ぎゃあああああああああああああああああ」


 少女の爪を引き千切った。


 絶叫が木霊する。



 ういうい、円なのだ。


「で、そのお姉ちゃんはどんな人だったの、だ」


 数人の男子に問いかける。


「すごく優しいっ!」

「うん、僕達が喧嘩した時も仲直りさせてくれて」

「手作りのお菓子を持ってきてくれたり」


 男の子達は少女の事を口々にそう語った。


「本当は家を出るなって言われてるんだけど・・・・・・」

「僕達、お姉ちゃんに会いたくて」

「稔君もいなくなっちゃって、お姉ちゃん凄く悲しんでたから」


 稔というのは、先日殺された少年の名だ。


「今日はまだ来てないの、か?」


「うん、いつもなら、僕達が来る前にはもう来てるんだけど・・・・・・」


 ふむ、少々嫌な予感がするのだ。


 そもそも私達の指令はこの少女に関係している。


 今回の連続少年殺害事件。

 それが起こったのが、よりにもよって殺人鬼連合のシマで、だ。


 レンレンはこう言っていた。


「あの人達、私の管轄をうまく外して行動してるんですけどね、今回の事件はとても気になります。遺体が見つかる時点であの人達の犯行じゃありませんし、そうなると結構厄介ですよ。彼ら、いや彼女達は、自分の縄張りを荒らされるのを相当嫌がりますからね」


 つまり、犯人が誰だろうが、必ずお仕置きされるのだ。

 自分達の場所が荒らされたとなれば、他の犯罪者の見せしめもかねて徹底的にやるだろう。

 

 それでも、レンレンにすれば自分の管轄外で起きた事、本来積極的に関わろうとはしないはず。なのに、今回、私達を動かしたのには理由がある。


「殺人鬼連合が一人の少女に目をつけました。殺害された少年と一緒にいたという情報からでしょう。今回シストさんは関わってないでしょうから、タシイさん主導で動いてるはずです。それは手段を問わない彼女達を止める者がいないということ」


 この事件、有力な手がかりがまだ無いらしい。


 殺人鬼連合はとりあえず一緒にいたというだけで、少女をさらおうとするだろう。いや、今ここに来てないというなら、もうすでに・・・・・・。


「これ、目をつけられた少女が全く関係ないなら大問題です」


 少女が無関係でも奴らは容赦しない。


 これは一刻を争う事態かもしれないの、だ。



 その頃、殺人鬼連合は。


「ほ、本当に、知りません、知らないの、お願い、お願い、ああああ、いやああああああああああああああ」


 手の爪、その最後が今毟り取られた。


「ち、なかなか、しぶといな。おう、今度は足の爪か?」


 涙を流す少女を見下ろしながら、その視線はつま先へと。


「お、じゃあ、また私からやらせてもらいまっすっ!」


 待ってましたと言わんばかりに、紅子が前に出る。


「さぁ、靴と靴下、脱ぎ脱ぎしましょうねー」


 紅子が少女の靴をはぎ取っていく。


「いやあ、なんで、なんで私がこんな目に・・・・・・やめて、お願いします、お願いします」


 固定された体で、なんとか藻掻こうとするがそれも無駄に終わる。


「なら、さっさと吐けや、もう一体死体あるだろ、あぁ?」


「そうそう、こんなのまだ序の口だよ、足が終わったら、耳を切り取る、そしたらアタシの出番、眼球を抉ってあげる」


 タシイの後に、諭すように優しく口を開く眼球アルバム。手には今まで数多くの目玉をくり抜いてきたご自慢の千枚通し、それを手の平でパンパン音を立たせ叩いている。


「・・・・・・し、知らない、本当に・・・・・・」


 少女は弱々しくも頑なに否定する。

 それを見て、タシイと目黒はやれやれと首を振った。

 そして。


「よし、やれ、もう一回一回、聞くのも面倒だ、全部一気にいけ」


「はいっ!」

 

 こうして、再びペンチが別の爪を挟み込む。


 この後、また10回大きな悲鳴が上がることになる。



 ういうい、円なのだ。


 奴らの拠点のいくつかはレンレンが把握しているとはいえ、今、その内のどこかまではわからない。


 あの後、私達は少年以外の者にも話を聞いた。


 いつも来ているという老夫婦。


「あぁ、あの子か、いい子だよ、公園の花を世話してた、ここの花がいつも綺麗なのはあの子のお陰さ」

「私もね、立ちくらみした時、あの子に助けてもらったのよ。ベンチまで運んでもらって、懸命に介抱してくれたわ」


 

 私達は車を急いで走らせた。

 これまで2カ所、どれもハズレ。


 車の中で、レンレンから連絡が入る。


「追加情報です。彼女は前に幼い弟を事故で亡くしてますね。歳も離れていてそれはもう可愛がってたようです。ということはですよ・・・・・・」


 レンレンは口を濁したが。


 彼女が少年に優しく接してた理由。

 それは、少年達を自分の弟と重ねていたのだろう。


 可愛い弟を失った心の傷を、他の少年を可愛がる事で埋めていたとしたら・・・・・・。


「白頭巾、ちょっと飛ばすのだっ! しっかり捕まっていろっ!」

「えええ、待って、お姉ちゃん、きゃあああああああああああ」


 アクセル全開で、私は他の拠点へと急ぐ。



 そしてその時の殺人鬼連合は。


「これで、全部か、ほら、もういいだろう、そろそろ言えや」


「し、知らない、本当に、私はただ、あの子がまだ生きていたら、丁度こんな感じかって・・・・・・」


 頭を垂らして、少女はもう抵抗もしなくなっていた。

 

 そんな様子に苛ついたタシイが、少女の頬を掴んで、顔を引き上げる。


「おう、今度は耳だ、早く言った方がいいぞ、死体はどこだ?」


 目と目を合わせて、激しく睨み付ける。


 が。


「知らない、貴方達が、何を言ってるかわからない、いい加減、もう許して・・・・・・」


 少女はその一点張り。

 

 タシイは舌打ちして、乱暴に手を離した。


「あぁ、そうですか、ならお望み通り、耳取ってやるよ、片方じゃ見苦しいしから勿論両方だっ!」


 目で紅子に指示を送る。


「かしこまりでーす。うひひ、ゆっくり割いてやる」


 さっとナイフを取り出す紅子。その口角がどんどん上がる。


「いや、いやぁ、やめて、いやぁあああああああ」


 動く頭を押さえつけて、ナイフの先端が少女の耳へ。



 ういうい、円さんだ。

今、超絶テクニックでイナーシャルドリフトをかましながら廃工場へ入ってきた所、だ、


 急いで、車から降り、二人で中へと入る。


 そこには。


「あぁ~? ってなんだ、切り裂きか」

「そんなに慌ててなんの用ー?」


 こちらを見る殺人鬼連合の面々。

 そして、その中央には椅子に縛り付けられた少女が。


「おい、やめるの、だっ!」


 床にはばらまかれたように爪が、そして、血と片方の耳が。


 少女はもうぐったりしている。今すぐ止めなければ。


「はぁ? やめろだぁ? なんだよ、いきなり来てよ、これはうちの問題だ、関係ない切り裂きは口挟むなや」


「そうそう、深緑深層の命令かい? それこそ管轄外じゃないの、これ」

 

 やはり素直に聞いてくれる連中ではないの、だ。


 見たところ、なにやら拷問している感じだ。


 前にちゃんリョナさんが言っていた、拷問によって聞き出した情報には信憑性がないと。そして、本当に関わってなくても痛みに耐えきれず認めてしまうと。


「もう少しだからよ、黙ってそこで見ててくれや」

「うん、もう少しだと思うんだよねー」


 バールと目玉はそう言うが。


「そうはいかないの、だ。もし、やめないなら・・・・・・」


 その少女が関わってる証拠はレンレンですら掴んでない。

 こいつらはただ一緒にいたというだけでここに連れてきてこうして痛めつけてる。


「あぁあああああああああああ? なんだ、やめないならなんだってんだ」

「おいおい、切り裂き、あんまアタシらを舐めるんじゃないよ、最近お前に甘いからって勘違いしてないかい?」


 ここで、バールと目玉の殺気が溢れた。それはすぐにこの中を覆い尽くすほど強く。


「おい、紅子、構わず、もう一つの耳を切り落とせっ」


「やめる、のだっ!」


 私が紅子に向かって怒鳴るも。


「・・・・・・すいませんね、いくら円様の言う事でも、私は殺人鬼連合っす。タシイさんと目黒さんの命令が最優勢なんですわ」


 手を止める様子はない。


「ちっ、なら腕ずくなの、だっ!」


 ナイフを取り出し、踏みだそうとつま先に力を込める。


「おい、それ以上一歩も近づくな・・・・・・じゃなきゃ」

「アタシら全員敵に回すぞ、全面戦争だ」


 二人の圧がますます強まる。

 

 く、流石にこの二人は並じゃないの、だ。

 伊達に殺人鬼連合のWエースじゃない。


 身体能力なら今の私の方が上だろう、しかし、二人合わさった狂気が半端ない。

 例え、腕を切り取ろうが、首を切ろうが、向かってくる。


 それは、他のメンバーも同じ。

 

 普段なら私の威嚇に怯む奴らも、この二人が本気で命令すればなにも考えずにそれを遂行しようとする。あの紅子ですら、本気で私達を殺しにかかるはず。


 どうする。


 そうこうしてる内に。


「い、いぎゃあああああああああああああああああああああ」


 紅子のナイフが少女の左耳を切り裂いていく。


「やめるの、だっ!」


 だが、当然ながら紅子は止まらない。切り込みがどんどん深くなり、少女の絶叫も大きくなる。


 ち、こうなりゃ。


「おい、お前、もう嘘でもいいから何か喋るのだっ!」


 少女に向かって叫ぶ。


 それにより時間が稼げる。後はレンレンに託すの、だ。

 この状況でバール達を止められるのは一人だけ。

 ヴィセライーターでも、ちゃんリョナさんでも無理。

 それは同じ殺人鬼連合のリーダーである、キラキラのシストだけ。 


 私の言葉が届いたのか。


 もう目が虚ろになっていた少女が呟き始める。


「・・・・・・〇〇ショッピングモール近くの・・・・・・赤い屋根の・・・・・・空き屋・・・・・・そこの、床下」


 耳の半分くらい、そこでナイフが止まった。


「・・・・・・おい、紅子、ちょっと行って一応確認してこい」


「・・・・・・かりこまりです」


 紅子が反対側から外に出て行く。


 これで一旦、時計が止まった。


 ここからどうするか。


 バール達は、私達から目を離さない。

 

 レンレンがこちらの動きを察して連絡してくれれば。


 それよりあちらの連絡が先だったらもう・・・・・・。


 対峙してどれだけ経ったろう。


 ここで携帯が音を奏でた。


 それは・・・・・・。


「おう、紅子、どうだった?」


 バールの方だったの、だ。


「ん、そうか、ご苦労」


 これで嘘がバレた。

 また拷問が再開される。


「目黒ちゃん、目取っていいよ」

「お、やっとかい」


 目玉が私から目を離し、千枚通しを持って少女に近づいていく。


「おいっ! もういい加減に・・・・・・」


 私は止めようと声を上げるが。


「あぎゃやああああああああああああああああああああ」


 無情にも、千枚通しが白目に突き刺さった。


 器用にグルグル手先を回す。


「いくらなんだももう限界なの、だ。今の立場上、見過ごせないの、だっ!」


 覚悟を決めて、ナイフをきつく握る。


「白頭巾っ!」


 隣の白頭巾に声をかける。


 しかし。


「・・・・・・・・・・・・」


 動かない。


 何故だ。


「はっ、そっちは分かってるみたいだな」


 それを見て、バールが笑った。


「どういうこと、だ」


 白頭巾は複雑そうな顔を見せている。


 訳が分からない様子を見せている私を見かねてバールが口を開く、


「おい、お前だけだぞ、ここにいる者で分かってないのは」


 喋りながらも掲げたバールを少女に向けた。


「こいつが一連の犯人だ。さっき紅子から連絡があった、死体見つかったとよ」


 その瞬間、私は口を開けるしかなかった。


「どうみても、こいつだろ、同じ殺人狂なら一目で分かるわ。同じなんだよ、私らと、臭いも、瞳の奥も、なにもかもよ」 



 バールが、少女の前に近づき、髪を掴んで顔を引き上げる。

 その片目はすでに空洞。


「喋ればその時点で死ぬだけだからな、頑張って堪えたんだろうが、流石にギブアップか」


 露わになった少女の表情が。


 別人だった。


「・・・・・・なんで、弟は死んだのに、なんで、あいつらはあんな幸せそうに・・・・・・おかしい、おかしい、なんで生きてる、毎日楽しそうに、あの笑顔は弟が・・・・・・」


 ブツブツ言ってるだけの人形のよう。


「切り裂きよぉ、今日で確信したわ。お前は本来こっち側じゃねぇ、お前は純白すぎて何色にも染まるんだ、そう、前のお前はそれ以前の生い立ち、そしてドールコレクターの色に染まってただけだ。ドールコレクターなら一発で分かったろうな、こいつが善良な一般人じゃないなんてよぉ」


 そんなはずはないのだ、私は殺人鬼で。


 私は、あの姉御のような・・・・・・。


「お前はドールコレクターの背中を追いかけてるようだが、いつまで経っても追いつくのは無理だ。それはお前自身が壁を高くして、背中を遠ざけてるからな。いい加減気付け。お前はお前、あいつにはなれねぇ、そろそろ派生先変えろや」


 違うのだ、私は、いつか姉御のように。


「分かったらもう帰れ、私達はこれからまだまだやることあるんだからよ」


 もうバールの声はほとんど聞こえてなかった。


 その後、レンレンからの連絡があり。


 裏で話はついたのだろう。

 私達はそのまま撤退した。


 レンレンも少女が犯人だとうっすら気付いていた。

 弟がいたという情報で、私達は全く逆の見解を示していたのだ。


 私はこの先姉御のようにはなれないのか。

 根本的なものが異なっているのなら。


 私は一体どこを目指せばいいの、だ。

 本編でも円は本性を隠した相手には疎いように書いてたつもりですが、どうも記憶が曖昧です。

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