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■ 7(side飯田)

現在、俺のなかで要注目案件がある。




俺の同期の吉木と、技術開発課の課長。





年齢としては吉木が俺の2つだか3つは下のはずで、課長は40いくかいかないか…いずれにしても一回り以上の年の差がある。



でも、そんな年の差でも、お似合いな人たちはやっぱりお似合いなんだよな。







休憩時間はもちろん、業務中にお互いを見る目、いかに相手がすごいか、相手の尊敬するところを熱心に語ってくる二人。



これに関しては吉木が顕著、課長が無意識ってかんじだが。



もちろんこの案件、俺だけでなく営業開発、技術開発共に楽しみにしている奴が多い。



課長は仕事も出来るが、自分だけの手柄にせず部下に任せ、部下を育てることのできる人。

ずっと彼女がいない理由としては、本人が必要としていないからか今まではアタックされてもスルーしていた節がある。





吉木は誰にでも話し掛け、誰にでも気遣いができる典型的な良い子。敵を作りやすそうにも見えるが、あまりに課長ラヴが溢れ出ている為かみんなの認識は「ちょっと残念な良い子」である。



本人いわく「趣味ですよー」と言うハンドメイドについては、たまたま入社後の飲み会で知った。

素人のハンドメイド作品にしては細部までこだわって作られた、売り物のようなアクセサリー。




「すごいなぁ」「いい出来だな」なんて言うだけで笑顔がこぼれる吉木。

うん。これはあれだ。




妹がいたら、きっとこんなかんじだな。









仕事では頼りになる課長も、吉木のことになるとてんでダメだった。




まぁ吉木との年齢差を考えれば慎重にならざるを得ないのか。



あと気付いてないかもしれないが、「吉木を泣かしたら俺らが黙っちゃいねえ」という、俺以外のお兄ちゃん気取りも多数いる。







とはいえ、いつまでたっても進展のない二人がだんだん気の毒になってきた。



「しょうがねぇなぁ。俺らがなんとかしてやるかぁ」


「ちょうど飲み会もあるしなぁ」


「飯田もなにかしら仕込みしてあるみたいだしな」




…エレベーターのこと、やっぱバレてんな。




まぁいいや。おもしろくなりそうだし。





吉木、お兄ちゃんたちからのプレゼント、受け取ってくれよな。









*****









「飯田!これ、例のもの」



いつぞやのようにエレベーターで会った吉木が、笑顔で小さい紙袋を手渡してくる。




「お、できたのか」



「うん。シュシュにしてみたよ」



ニコニコしながら「彼女さんにご迷惑お掛けしましたって伝えてね」と言う吉木。「自分の彼女を課長にけしかけて焼き餅焼かせる作戦」にもうちっと怒るかと思ったが、それ以上に課長とくっつけたことが嬉しいようだ。




「あ、あと出来たらそれプラスなんか飯田チョイスのプレゼントもあげた方がいいんじゃないかな」



「は?なんで」



「うーん…女の子としては他の女に作らせたプレゼントだけもらうより、彼氏が選んで買ってくれた物があるほうが嬉しいから…かなぁ…」



オススメはルームウェアとか、消えものならスイーツとかお酒とかかなぁと言いつつ去っていく吉木。




…さすが、気遣いができる良い子は伊達じゃないなぁ。








せっかくなので作ってくれたシュシュに合わせた色のルームウェアを購入してみた。



こういういかにも女子!な店に入る勇気はあったが、せっかくなので課長も連れてきてみた。



「…なんで俺が、お前なんかとこんな店に…」



「すんません。吉木からアドバイスもらっちゃって」



もはや癖になっているにやにや笑いを浮かべながら、ルームウェアを探す。



男としては薄いひらひらとかぴったりしたのとかに惹かれるが、たぶんあれだよな、ふわふわもこもこしたのを選ぶのが無難なんだろな。




「そんなの自分一人で買いに来ればよかっただろうが」と、あまりに女子!な店に腰が引けている課長。



わかってない。わかってないなぁ。




「吉木がシュシュと一緒にどうですか?って、ルームウェア薦めてきたんです。具体名が出てくるってことは、少なからず自分も欲しいなぁと思ってる物ってことですよ」



それにきっと吉木も色違いのおそろいとかで自分の分のシュシュも作ってそうだし、と続けると、課長が急に真剣な顔でルームウェアを選び出した。



おっさん素直だな。悪くない。








結局は店員さんにアドバイスをもらって、俺はブルー系のルームウェア、課長はピンク系のルームウェアを購入した。



課長がちゃんと渡せるように、「いざとなったらお前に着てほしくてって言うんですよ!」と言ったら「逆に不審者全開でこわいわ!」と言われた。一理ある。









帰ってから吉木が言うところの「グラマラスなお姉さま」に、シュシュとルームウェアをプレゼントした。



最初は怪訝な顔をしていた彼女だったが、プレゼントを開けた瞬間 子供のような笑顔を見せた。





「我が妹、さすが」


小さい声で呟くと彼女が「なぁに?」と聞いてくる。


なんでもないよと返しながら、課長はうまく渡せたんだろうか…と今度はかなり年上の弟が出来た気持ちになっている自分に気付いた。




■ 7(side飯田)

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