女神と彼女
み、みじかっ。
話数が増えてきたら、くっつけるかもです。
手渡された手紙をじっくりと読んで、彼女は深くため息した。
「やっぱりか・・・」
広い地面に座り込んで折り曲げた両膝の上に腕を放り出した彼女の背中に、声がかけられる。
「ふふ。お嬢さんは何て?」
「分かってるくせに何を仰いますやら。やっぱり『始まり』は『強制力』が強いんじゃないですか」
焦げ茶色の、平凡な色彩の彼女の恨みがましい視線を受けて、相手は――女神は微笑んだ。
その瞳は夢の半ばにいるような、ぼんやりとした美しい群青。日の光を縒ったような金の髪は、裸足のくるぶしにまで達するほど長い。
その花のような笑顔には何かある。と、もう40年来の付き合いになる彼女は悟った。
女神は虫も殺せないような無垢な笑みを唇に乗せている。
「当然でしょう?そうでなきゃ、涙を呑んでまで貴女を死なせた意味がないわ」
・・・彼女はもう一度ため息を吐いた。そうだった、彼女はこういう人・・・いや、ヒトでないんだからしょうがない。彼女はこの広大な箱庭の主。広大でありながら内側に閉じた世界の、ひとりぼっちの女王様なのだ。
その長い金髪を、子供にそうするようにヨシヨシと撫でてから、彼女は手紙を丁寧に畳んだ。撫でられた女神はきょとりと瞬きをして、そしていつものように頬笑みを浮かべる。
「楽しいでしょう? ユリナ」
「・・・どうなるかわからない、という点では同感ですけども、腹を痛めた可愛い我が子やら、手をかけた可愛い弟やら、曲がりなりにも夫であった人やらを思うと、そう簡単には面白がれないのが人情というものですよフィオーレ様」
「ふふ、そうなの」
「ええ、そうなんです」
ユリナはわざとらしくひょうきんに肩を竦めて見せる。女神は子供の様にころころと笑った。
一面の花畑。
その中でも、夢のような群青色をした花の群生している場所で、女神と彼女は存在している。