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SCGの魔眼使い  作者: 西城優
第一章
30/37

絶対絶命

(まさか、まだ逃げていない人間が遊園地内にいるとはな)


 中央広場へと向かっている最中、二人組の男女の姿を発見する。壊れていた橋を一瞥して、彼らは別の場所へと走っていく。

 

(……あの放送を聞いて中央広場へと向かっているという事は、彼らは高天原鏡矢と関係のある人物という事か)

 

 遠野蓮によって行われた放送。中央広場へ鏡矢がやってこない場合、人の固まる遊園地の入り口を爆発するという大胆な脅迫だった。

 だが、あくまで遠野と青谷の目的は鏡矢一人。大量殺戮は依頼者の望んでいる結果ではない。

 ゆえに、先程の放送にあったグリーンパーク入り口の爆破というのは嘘である。それでも、先に小型の爆弾で人々を混乱させていた事から、ターゲットへの脅迫が見抜かれづらくなっている。

 そして、中央広場へと繋がるレンガ造りの橋に仕掛けられていたトラップ。トラップが発動している事から、鏡矢があの場所を通った事が分かった。

 

(正直、遠野の空剣想像だけでも恐ろしい殺傷力がある。もしかしたら、既に高天原鏡矢は殺されているかもしれない)

 

 遠野とペアを組んでいる青谷は、彼の能力の恐ろしさを知っている。例え自分の認識不可を使ったとしても、広範囲に発動できる空剣想像をデタラメに使われたら堪ったものではない。

 しかし、依頼者の話によれば高天原鏡矢は拳銃を克服したとされるレベルAより上に位置づけされるレベルSらしい。レベルAまでしかランクがないと思っていた青谷は、その時にレベルSとなる能力の規準を聞いた。

 

『レベルAは拳銃と同等、もしくはそれ以上の力を力を有しているわけですが、レベルSは正直、その比じゃありません。レベルSは、単体でレベルAの能力者五十人程度を相手取る事が出来ると言われています。今までに発見された例は、高天原鏡矢を含んだとしても両手の指より少ないでしょう』


 依頼者の言葉は、今でもはっきりと思い出せる。高天原鏡矢を殺すように依頼してきた人物とは思えないような言葉だった。

 

『まあ、彼はどうやらその力を普段は使わないようにしているみたいですから、あなたの認識不可で不意をついてしまえば何の関係もありませんがね』


 ついでのように付け足されたその言葉によって、遠野と青谷はこの作戦を計画した。本日の高天原の予定や行き先といった情報は依頼者が全て提供してくれたため、作戦の実行は難しくはなかった。(強いて言うなら、行き先等の情報は本日知らされたため、小型爆弾を仕掛けるのに時間が掛かった事ぐらいか)


(……心配するべきはターゲットではなく、遠野の方というわけか)


 そう考えながら、青谷は前を行く二人の後をついて行く。

 


  ◇  ◇  ◇



「俺は人を一方的に殺したりするのも好きだけど、実際の所、こういう風にお互いの身を削りあう戦いってのも大好きなんだよね。君はどうだい、高天原鏡矢?」


 遠野の言葉に返答せず、ただ鏡矢は空剣想像によって作られる空気の刃を交わし続ける。

 何度か接近して打撃を叩き込もうとしたが、直前で形成された刃がその打撃を阻む。人間の反応速度の限界に限りなく近い0,15秒という時間で形成される刃よりも早く、遠野へ攻撃する事は出来そうになかった。

 

(形成より早く攻撃できないのなら、形成された剣を壊して攻撃するしかない)


 今までの戦いの中で至った方法が通用するかどうかを試す為に、鏡矢は形成され、こちらに向かってきた半透明な刃へと足を出した。

 鋭く放たれた蹴りが半透明な刃を砕く。剣の硬度はガラスより硬めといったところか。

 体勢を整え、鏡矢は常人離れした身体能力で遠野の元へと駆ける。あっという間に距離を詰め、鏡矢は勢いを殺さずに蹴りを繰り出した。

 直前で形成された空気の剣。それは鏡矢の蹴りによって粉々に砕け散り、防御の意味を成さなかった。


「くっ!」


 予想外の出来事ではあったが、反射的に遠野は左手で鏡矢の蹴りを受け止めた。数メートル後ろへ後退させられ、遠野は左手をだらんと力なく垂らす。


「……まさか、剣を砕いて強引に攻めてくるとは思わなかった。おかげで左手がイカレちまった。格闘家もびっくりな蹴りだったよ」


 しかし、遠野はダメージを負った状況で余裕そうな表情をしている。


「まあ、ダメージを追ったのはお互い様だったみたいだけどね」


 遠野の言う通り、鏡矢の右足部分のズボンが赤く彩られていた。体重も、左足の方に少し偏っている。

 強引に攻め入られた際、遠野は鏡矢の左右から空剣想像にて刃を形成した。遠野の身を守る刃が砕かれた直後、新たに出現した刃が鏡矢の右足を襲ったのである。

 

「残念だったね。これで、君は身体能力を満足に生かせない」

 

 勝利を確信したように、遠野はにやりと笑みを浮かべた。

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