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SCGの魔眼使い  作者: 西城優
第一章
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任務

「急な任務という事には驚かなかったが、まさかその任務がレベルAの確保だなんて考えてもみなかったな」


 SCGの拠点を後にして、鏡矢は背の高い建物の並ぶ街の中を歩いていた。

 空はどんより曇り空で、今の鏡矢の心をそのまま空に映し出したかのようだ。



「そうですね。ご主人様は確かにすごいですが、二回目の任務でレベルAの能力者を担当させられるとは私も思いませんでした。同期の能力者達は、きっとご主人様に嫉妬なされているでしょうね」


 セーラはインテリジェント・デバイスの画面を点滅させながら鏡矢が発した言葉に応対する。

 交差点に差し掛かり、信号が変わるのを待つ。


「俺からすれば、むしろレベルEとかDの能力者の担当で済んでいる周りの奴らの方が羨ましいよ。休日に呼び出されたりもしないしさ」

「そう言っては同期の方々に失礼です。こうして実力を認めてもらえるのは喜ばしい事ではないですか。昔に比べれば、今の状況は恵まれていると思いますよ?」

「……まあ、昔に比べればな」


 思い出したくもない過去の出来事を思い出しそうになり、鏡矢は頭を振って思考を払った。

 周りにいる人々は、そんな鏡矢の様子を訝しんだりしない。他人に興味がないと言わんばかりに携帯に目を落としたり、友人と楽しげに会話をしている。

 ゆえに一人で話しているように見える鏡矢が注目を浴びたりするような事もなかった。


「それより、レベルAの能力者の詳細説明を頼めるか?」

「分かりました」


 数秒の沈黙をはさみ、セーラが先ほど受け取った情報の説明をし始める。


「能力者の名前は神崎綾かんざきあや。能力が発動したのは二ヶ月前で、それからは能力者専門学校に転校。しばらくは大人しく生活していたようですが、能力が完全覚醒へと至ってレベルAに。

学校の寮にも帰らなくなり、街の中を徘徊しているようです。保有する能力は軌道迷走(ルートバグ)という、物の攻撃の軌道をずらす能力だそうです」

「随分と厄介な能力だな……」


 人が発言する能力は様々に存在する。

 例を挙げるなら攻撃的な能力。炎を顕現させたり、吹いている風を収束して放ったり、拳を鋼鉄化させ、コンクリートを砕いたりと、攻撃能力だけでもバリエーションに富んでいる。

 神原綾という人物が有している能力は、数ある能力の中でも上位に部類できるものだろう。

 能力情報が正しいのなら、使い方によって交通事故を引き起こしたり、場合によってはもっと大きな事故を起こす事だって可能なのだから。


「神崎がいる場所はおおよそ検討がついてるのか?」

「はい、日時や目撃情報を照らし合わせた結果、瓦河に滞在している可能性が高いです」

「電車を乗りついで二つ、か。逃走してからの数日間、交通機関を使わずに徒歩で移動してたって所か」

「そのようですね。能力を使った形跡はなさそうです。完全覚醒によって精神状態が不安定なのかもしれません」

「戦う際は注意を払わないとな。もっとも、レベルAという時点で気を抜けるわけがないんだけど」


 信号が変わり、人の波が反対側の歩道へ進まんと動き始める。

 その中を、鏡矢は流れに逆らわず移動する。傍から見れば誰も、彼が異能の力を身に宿しているとは思わない。


「さっさと終わらせて布団にでも潜ろう」

「ご主人様。休日だからといってだらけて過ごしてはいけませんよ」


 窘められて、ご主人と呼ばれる少年は苦笑を浮かべる。

 瓦河を目指して、二人人で一組の彼らは駅へと足を踏み入れた。

 切符売り場には立ち寄らず、鏡矢は懐からカードのような物を取り出す。

 SCGで支給される交通機関無料パスだ。遠方へ移動して任務を行う事もあるため、SCGに所属すると同時に支給される。

 交通機関パスを改札口にかざし、鏡矢は駅の奥へと進んでいった。

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