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SCGの魔眼使い  作者: 西城優
第一章
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攻略

 東原駅へと向かう道中、鏡矢はセーラから任務についての情報を聞いていた。


「今回の任務は植山にある第三鉄鋼工場跡地で行われると言われている麻薬取引を阻止し、売人および買い手の人物達を捉えるものです。能力者の情報についてですが、売人として上げられている三人の人物が全員能力者だそうです。ランクはレベルBが二人、レベルCが一人。レベルCの人物に限っては探知能力を備えているらしいです。つまり、残りの二人が戦闘要員ですね」

「……これだけの任務を俺一人に任せているのか?」

「事実、そういう事になります。探知能力のせいでSCGの工作員を配置する事が出来ないとの事なので、単身でご主人様が第三鉄鋼工場跡地に潜入し、戦闘にて全ての人物を昏倒させる事がデータには推奨されています」

「…………」


 思わず鏡矢は頭を抱えたくなる。

 強者揃うSCGのメンバーが探知能力で配置できないのなら、新人である鏡矢に単身潜り込む事なんて出来る筈がない。どうやったって途中で気づかれて、さっさと他の入り口から逃げられてしまうのがオチだ。

 

「セーラ、どうすれば探知能力者に気づかれず取引場所に潜り込めると思う?」


 パートナーであるセーラに意見を仰ぐ。画面を点滅させながら、セーラはデータの情報を導入しながら答える。


「探知能力者の詳しい情報を述べさせていただきますと、その能力者、田島十寺たじまじゅうじが使う能力は周囲探知フィールド・サーチ。自らの周囲五十メートルに入ってきた人物の存在を感知する能力です。ただ、戦闘能力や移動能力は皆無なため、能力者同士の戦闘には向いていません。しかし、麻薬密売のような察知能力を必要とするものに関しては脅威かと。データに推奨されているやり方であるご主人様の身体能力で五十メートルの距離を早々に埋め、戦闘にて鎮圧させるの方法は無理があると思います。攻略法に関しては考え中です」


 難易度の高い任務を与えられて憂鬱な気持ちを抱きながらも、鏡矢は探知能力者攻略について冷静に思考する。

 セーラの話を聞く限り、敷地内に足を踏み入れた段階でこちらの存在を知られてしまうだろう。そうなれば逃走という手段を早い段階で行われ、任務は失敗に終わってしまう。

 やはり探知能力を持つ能力者が厄介なのだ。例え透明化するような能力を持っていても、存在を認知されてしまう探知能力の前では意味がない。つまり、侵入する際に小細工は殆ど無駄であるという事を示している。

 探知能力攻略について考え込んでいる内に、東原駅が見えてきた。信号を渡りながら、思考を一旦中断して第三鉄鋼工場までの行き先をパートナーに尋ねる事にする。


「第三鉄鋼工場のある植山は、東原からどれぐらい乗り継ぐんだ?」

「東原ラインに乗り込み、松野蒔にて久里浜ラインに乗り換えて三駅で植山に到着します。第三鉄鋼工場は植山駅から徒歩二十分の距離にあります」

「ここから一時間ぐらいって所だな。取引の時間よりは早く着く」

 

 探知能力の距離が五十メートルと分かっているなら、それよりも外のエリアで張り込んでいれば問題ない。

 交通機関パスを改札に通して駅へと鏡矢が入った瞬間、セーラが画面を点滅させた。


「ご主人様。探知能力者の攻略法ですが、考えを思いつきました」


 パートナーのその言葉に、鏡矢は喜びをわずかに滲ませて返答する。


「考えを聞かせてくれるか?」

「はい。データには買い手であるメンバーの数は書かれていませんでした。もし正確なメンバーの数が決まっているのなら、データに記載されているはず。つまり、売人達も買い手の数を把握していない可能性があります。元々、買い手とは別の反応を探知出来ればいいので、売人が買い手の人数を把握する必要がないからです」

「それと探知能力攻略には関係性があるのか?」

 

 今セーラが言った通り、結局、買い手、自分達の二つの反応が発見されたら終わりだ。これのどこに攻略法が隠されているというのか?

 セーラは自らの攻略法を主に説明し始める。


「はい。二つの反応が起きてしまうのなら、その反応を一つにしてしまえばよいのです」

「二つの反応を一つに?」


 意図がよく分からない鏡矢は、セーラの言葉をそのままなぞる。


「ええ。詳しい攻略法を説明させていただきますと――」


 駅の中を行き交う人々の中、セーラから攻略法を鏡矢は、


「……なるほど。その方法があったか。しかし、これはこれで実行が難しいな」

「私達は早くに現地に着く事になるので十分可能かと。ご主人様の技量を持ってすればの事ですが」


 パートナーから信頼の言葉を受けた鏡矢はインテリジェント・デバイスに向けて笑みを浮かべる。

 取引時刻十一時まで、あと一時間三十分。

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