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SCGの魔眼使い  作者: 西城優
第一章
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瓜生奏

 村雨との模擬戦から二日後、鏡矢は今日も授業を受けようと校舎へ向かっていた。

 荷物らしい物を鏡矢は手に持っていない。自分の座席に鏡矢専用のIDを入力すれば、教科書や黒板に書かれた文字などのデータが引き出せるようになっているため、わざわざ教科書やノートを持っていく必要がないのである。

 小さく欠伸を漏らし、鏡矢は朝日の降り注ぐ敷地内の道を歩く。


「ご主人様。準指令官である来栖さんからメールが届きました。音声にて再生しますか?」


 そう話しかけてきたのはインテリジェント・デバイスであるセーラだ。主である鏡矢にセーラは画面を点滅させながら指示を仰ぐ。


「ああ、よろしく」

 

 言いながら、鏡矢はこれが任務を知らせるためのメールだろうと検討をつける。来栖から送られてくるメールは、十中八九任務絡みのメールだという事を知っていたからだ。

 セーラは『記憶音声』でメールの文を再生し始める。


『おはようございます。朝早く申し訳ありませんが、君に任務が入りました。今回の任務は複数の能力者を相手取るらしいので、くれぐれも気をつけてください。詳しい情報はメールと一緒にデータで送ってきましたので。それでは、任務頑張って下さい』


 メールの再生が終わったのを確認して、鏡矢は深く嘆息する。


「……なんで来栖さんは難易度の高そうな任務ばかり俺に与えてくるんだろうな?」

「本人も言っていた通り、あなた様に期待なされているんでしょう。喜ばしい事ではないですか」

「そりゃそうだけど……」


 鏡矢が言わんとしている事をセーラは察し、それについて返答する。


「例え相手が能力者でも、あなた様がわざわざ『朱い月』を使う必要などありません。周りが能力だと勘違いしてしまう程の身体能力があれば、それだけで十分任務を遂行出来ます」

「…………」


 鏡矢は返答しなかった。長く一緒にいるパートナーの言葉でも、こればかりは不安を拭いきれない。

 セーラも、それ以上は何も言わなかった。

 任務が入ってしまったため、校舎へと向けていた足取りを彩華学年の入り口方向へと向ける。

 授業の単位についてはSCGに所属されている時点で満たされる事になっているため、いくら授業をサボろうが留年という事にはなり得ない。だが、真面目な鏡矢はなるべく学生として授業を受けておきたいと思っていた。

 担任に任務だという旨をメールで伝え、鏡矢は校門を目指す。

 その道中、女子寮の方から駆けてくる女の子に目が行った。その子はどんどんこちらに向かってきて、鏡矢の前で立ち止まる。


「おっはよ~うカガミン! 校舎と反対側に歩いているという事は、まさか学校を抜け出してお忍びデートだったりするのかな!」


 セミロングの髪を揺らしながら、ビシッと鏡矢に人差し指を向ける女の子に鏡矢は微笑み掛ける。


「相変わらずテンションが高いね、瓜生さん」

「そりゃそうだよ~! 明るい事が奏ちゃんの良い所だもん!」


 ハイテンションな少女、瓜生奏うりゅうかなでは屈託のない笑みを浮かべる。


「それはそうと、質問に答えてないよカガミン~! 相手はどんな子? 黒髪ロング? 金髪碧眼?」

「残念ながら、デートをするような相手は俺にはいないよ。さっき面倒な事に任務を与えられちゃってさ。これから行かないといけないんだ」

「SCGのメンバーは大変だね~。というか、それよりも奏ちゃんはカガミンに彼女がいない事にびっくりしたよ!」

「そんなにびっくりするような事かな?」

「事だよ! カガミン結構カッコイイもん。奏ちゃんが彼女に立候補したいぐらいだね」

「あはは、そういってもらえるのは嬉しいけど、奏ちゃんは俺なんかを当てにしなくてもいいんじゃなかな?」


 瓜生と鏡矢は同じクラスだが、鏡矢はクラスの男子達と瓜生が仲良さそうに話しているのを何度か見ている。その男子生徒達が友達として瓜生を見ていないという事も、傍から見ればよく分かる。


「ガーン! さりげなく断られた! 鏡矢君は私の事が好みじゃないんだね!?」

「あ、いや、そういうわけじゃないけど」

「じゃあ、私にもまだ望みはあるんだね!? よし、なら頑張れる! カガミンは任務頑張ってね~!」

 

 まるで嵐のように来て、去っていく少女の後ろ姿を見ながら、鏡矢は静かに呟く。


「……カガミンってネーミングはどうにかならないのかな」

「私は好きですよ。カガミンというネーミング」


 話の一部始終を聞いていたセーラは、主の呟きに答えた。

 二人の間にわずかに生じた沈黙は瓜生の介入によって解消された。

 二人は口にしないながらも、明るい彼女に感謝の気持ちを抱きながらその場を後にする。

 足取りは、先程に比べれば幾分軽くなっていた。

 

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