14 ミドルゲームの設計Ⅱ
ーー誰も答えない。凪咲は九条と一ノ瀬を交互に見つめて話し始める。
凪咲「数日後の公開討論、お二人は私の体制の問題点を突く予定でいらっしゃいますか?」
黙って凪咲を見つめる学園会執行部のメンバーたち。
凪咲「それであれば、私は今までの学園会が解決できなかった❜校則に対する生徒の不満❜、❜既定予算の見直しができないために生じる予算不足❜、❜生徒からの要望への対応遅延❜について指摘させていただき、全ての実効的な解決策をその場で提示します!」
あっけに取られる一同。バツが悪そうに顔を背ける会計担当と九条。
凪咲「それよりも、どのようにすればこれまで以上に生徒から支持の得られる学園会運営ができるのか、そこに焦点を当てるべきであると思います。」
そう言って振り返り、会議室を出ていく凪咲。数秒の沈黙に包まれ、誰もすぐには言葉を発さない。
書記担当「……今の、聞きました?」
会計担当「その場で全部解決策出すって……」
一ノ瀬がふっと笑って話す。
一ノ瀬「こんなに正面から先輩2人に宣戦布告なんて、大胆な下級生がいるんだなぁ」
九条は無言のまま、ゆっくりと椅子に座り直す。
九条「……論点をずらしにきたな」
九条「こちらが実現性を問えば、彼女は現状の不満解消で上書きする。」
淡々と続ける九条。
九条「つまり——どちらが正しいかではなく、どちらが生徒の利益を具体的に提示できるかに持ち込む気なんだ。」
一ノ瀬「完全に選挙戦だね!討論じゃなくて、プレゼン勝負にするつもり。」
空気が引き締まる会議室。
書記担当「これ、生徒ウケは確実にいいです。不満の解決って、一番刺さるので」
九条、少しだけ口元を上げて声を発する。
九条「……面白い。ならばこちらも、前提を変える」
九条「解決策を出すことと実現できることは別だ」
一ノ瀬「ええ。できるように見せる力と実際にできる力の差、そこを突く」
ーー会議室に緊張が走る。
九条「……ただし、彼女の言う通りだ。最終的に問われるのは——」
一ノ瀬「誰が一番、生徒の支持を集められるか」
九条「ならば我々も、その土俵に立つ。」
一ノ瀬「ええ、正面からね。」
しかし、他の学園会メンバーの空気はいちだんと重くなる。
会計担当「……正直、レベルが違わないか?」
書記担当「ここまで制度で組み立ててくるとは思ってませんでした…」
腕を組みながら天井を仰ぐ一ノ瀬。
一ノ瀬「生徒ウケじゃないのよね、あの子。政策で殴りにきてる。
書記担当「しかもちゃんと分かってますよ。支持が必要なことも」
会計担当「このまま討論入ったら……防戦一方になる可能性あるのではないか?」
九条「確かに彼女の“設計”は優れている。だが——“実装経験”はない」
九条「制度設計と運用は別物だ。そこに必ず“ズレ”が生まれる」
九条の言いたいことを理解する一ノ瀬。
一ノ瀬「彼女は正しさで攻めてくる。ならばこちらは現実で崩すってこと?」
会計担当「でも、それだと守りに見えてしまう」
九条「いや、現実を知っているからこそ、改善できる”という形にする」
楽しそうに笑う一ノ瀬
一ノ瀬「経験者の改革ね。悪くないわ」
書記担当「だが油断はできません。」
九条「分かっている。彼女は、ただの1年ではない」
ーー全員が頷く。候補者は3人だが、現体制派VS改革派の構図が出来上がる。学園会会議室は、静かな闘志が満ち始めている。




