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ヘボ戦記  作者: 蘭鍾馗


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3/13

03.雨の日

 雨が降ってきた。


 ◇


 最初は小さな粒でポツポツと降っていた雨は、やがて粒が大きくなり、すぐに本降りの雨に変わった。


 外回りの蜂たちが急いで帰って来る。急な雨だったから、帰れずにどこかで雨宿りしている子達もいるだろう。

 内勤だった私は、外に出て巣箱の様子を確認する。巣箱にはプラスチックの波板の屋根が付いていて、周りに庇があるから、雨の当たらない庇の下を飛ぶ。


 巣箱の外壁には、蟻たちがいた。雨宿りをしているのだ。巣の中には入れないけど、外壁での雨宿りは黙認する。地上で暮らす小さな生き物には、雨は脅威だ。大雨が降ると、蟻たちはこうして高い所に登り、雨が止むまでじっとしている。普段は無作法で騒がしい蟻たちが、大きいのも、小さいのも、みんな仲良く、巣箱の板につかまって、雨が止むのを静かに待っている。


 確認したら、巣に戻る。


 ◇


「外は雨かねー。」

 女王が問いかける。

「そうよ。すごい大雨。」

「そうかー……。」

 女王が溜息をつく。


「雨が降ったから、餌場の砂糖引き揚げられちゃった。」

 見回りから戻ったヘラが女王に報告する。

「あれなんでかねー。」

「雨が当たって溶けるからじゃない?」

「そうかー、残念ねー。」


 ◇


「昔話でもしようかねー。」

「してしてー。」


 私達働き蜂の寿命は、約一か月。だから、そもそも「昔」と言うものがない。でも、女王は一年ちょっと生きるから、私たちの知らない「昔」を知っている。その女王の昔話を聞くのは、私達の楽しみのひとつだ。


「ジラー、ヘラー。」

「うん。」「はい。」

「あんたたちは十月生まれだったわねー。」

「そうよ。」「そうです。」

「十月生まれの蜂はね。悪い夢を見るの。」


「え?」


 ◇


 十月生まれの蜂は、悪い夢を見る。

 初めて聞く話だった。


「私も十月生まれだったからねー。見たのよ。悪い夢を。」


「あんた達はねー、帰る家を無くすの。」

 ちょっと待ってなんてこと。

「でも心配いらないさー。『悪い夢』はすぐ終わるから。あんた達はそれまで生き残ればいいの。『悪い夢』が終わったら、あんた達は自由よ。」

「自由って何?」

「何でもしていいし、何もしなくてもいい、ってことさー。」


 何でもしていい?

 何もしなくてもいい?

 どういう意味だろう?


「幼虫や女王のお世話はしなくていいの?」

「そうさー。」


 ますます分からない。


 ◇


 私が考えてる間に、女王は寝ちゃった。

 本当に女王このひとは。


 ◇


 雨が弱くなって、空が明るくなって来た。

 もうすぐ雨があがる。


 

 蟻の異種合同雨宿り、昔実際に見たことがあります。大学生だった頃、何かの集会に参加したんですが、あいにくの雨。終わってからズボンを見ると、中に大量の蟻が雨宿りしてました。良く見ると大きさが色々で、大きいのから小さいのまで五種類くらいいたと思います。みんな仲良く、大人しく雨宿りしてました。見つけた時は雨が上がっていたので、もちろん全員強制退去してもらいましたけど。

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