↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
44/44

第四十四話  ありがとうフリオさん

 ──翌朝。

 俺は、いつもと同じように、農場で汗をかいていた。空はどんより曇っていて、まるで俺の懐事情を反映しているかのようだった。いや、反映どころか完全に一致だな。

 俺の全財産である20万メソは、一瞬のうちにビアンカの懐へ消え、俺の貯金はゼロになった。

 けどな。俺は、まだ諦めてない。

 いつか自由市民になって、トレーナーになって、拳闘士を育てて、“ソンブラスの名伯楽”なんて呼ばれる日を夢見てんだ。

 たとえそれが、何十年先になるとしても……俺はやる。

 そう決意を新たに、畑で果物を収穫していたとき──


「コウタくん、ちょっと来なさい」


 と、後ろから渋い声が飛んできた。

 見るとそこには、ふくよかなシルエットと福の神みたいな笑顔の持ち主、農場主フリオさん。俺が働くこの農場の大ボスだ。

 俺は一瞬で察した。

 ──あれ、なんかやらかした?

 心当たりはないけど、俺の人生って大体そういうもんだった。

 とりあえず覚悟を決めて、フリオさんの執務室に向かう。

 重厚な木製の扉の前に立ち、恐る恐る声をかける。


「コ、コウタです……」

「どうぞ」


 中から返ってきたのは、相変わらずの優しげな声。

 おそるおそるドアを開けると──

 フリオさんはいつものにこやかな顔で椅子に座っていた。部屋には木目のきれいな棚、書きかけの帳簿、香ばしいハーブティーの香りが漂っている。


「確認ですが、コウタくんは……本当に、自由市民になりたいんですか?」


 あの優しい声で、ずばっと核心を突かれた。


「……はい。なりたいです」

「そうですか。では、奴隷から解放してあげましょう」


 ……は?


「へ? でもお金が……」

「お金なら私が建替えておきますから、あとから分割で返してください」

「で、でも……」

「ビアンカに聞きましたよ。コウタくんには拳闘を教える才能があると」

「ビアンカさんをご存じなんですか?」

「私はこれでも、ソンブラスではそれなりの人脈を持っています。ソンブラス内の話題は、だいたい耳に入ってきますよ。あなたが育てた拳闘士が、今年一番観客を熱狂させた試合をしたことも、ね」


 フリオさんが、イタズラっぽく笑った。

 ……その顔、反則でしょ。なんでそんなに優しいの? バグか?


「でも……奴隷解放税を建て替えるなんて、普通は……」

「普通はしません。ですが、コウタくんだから提案するんです」

「え……」

「あなたの誠実な働きぶりも、真面目な性格も、他人のために全力を尽くせるところも、私はちゃんと見てきました。あなたなら、ちゃんと返してくれる。そう確信しています」

「……」

「それに、あなたは若い。そして、拳闘を教える才能がある。ならば……自分の生きたいように、生きなさい」


 その言葉を聞いた瞬間──

 涙が、止まらなくなった。

 もう、ボロッボロ。声も出ない。鼻も垂れるし、顔グシャグシャ。

 なんでこんなに優しいんだよフリオさん。もう、第二の親だよアンタ。


 こうして、俺は奴隷という身分から解放された。

 自由市民として、自由に職業を選択できる権利を持ったのだ。

 その足で俺は、急いで荷物をまとめた。

 ビアンカ拳闘団はすでにソンブラスを出発している。だが、いまから行けば、すぐに追いつけるだろう。

 そしてビアンカに事情を話して、雇ってもらおう。俺はまだ夢を諦めちゃいない。

 ありがとう、フリオさん。

 絶対に後悔させません。

 ぜったい、返済します。

 そして、ぜったい……ビアンカ拳闘団で俺は、世界一優秀なトレーナーになります!



【第一部 完】

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!心から感謝いたします。


【第一部 完】としましたが、今のところ第二部以降の執筆は全くの未定です。


そんな状況で恐縮なのですが、もし少しでも

「面白そう!」

「続きが気になる!」

「期待できそう!」 

と思っていただけたら、ブクマと★星を入れてもらえないでしょうか?


★1つでも、★★★★★5つでも、正直に、思った評価でお願いします。

モチベーションが上がって続きを書きたくなります。


何とぞ、よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。