第三十三話 セシリアが俺とビアンカさんの勝負を了承してくれました
練習のあと、カリナが水汲みに行っている間を狙って、俺はセシリアに話しかけた。
「セシリア、ちょっといいか?」
彼女は首を傾げながら不思議そうな顔をして、俺を見上げてきた。
「いいよ。 コウタ先生、どうしたの?」
心臓がドクンと鳴った。緊張する。
うん、よし。
これはもう、誤魔化さずにちゃんと伝えるべきだ。
「俺は……ずっとセシリアのトレーナーでいたいんだ」
「えっ?」
「だから、俺と一緒に勝負してくれないか?」
セシリアがますます首をかしげる。
「勝負って?」
俺は深く息を吸ってから話し始めた。
この前、チャベスとビアンカに会ったときのこと。
そして、あの無謀とも思える“賭け”の内容を──全部。
「セシリアが次の試合で15歳以上の部に出て、1分以内に相手を倒せば……ビアンカが俺の全財産、20万メソを1000万メソにしてくれる」
「えぇっ!?」
セシリアは驚きすぎて、ひっくり返りそうになった。
まるで漫画みたいなリアクション。
でも、俺はまじめだ。
これは本気の、人生を賭けた大勝負なんだ。
「だから……セシリア、頼む。俺のために──戦ってくれ」
数秒の沈黙。
そして──
「いいよ!」
まっすぐで、力強い返事だった。
「……えっ、本当に?」
「うんっ! 私もずっとコウタ先生に教えてもらいたいもん! コウタ先生も同じ気持ちだったなんて……すっごく嬉しい!!」
ぱぁぁっとセシリアの顔が明るくなる。
その目はまっすぐで、力強くて──これまで見たことがないほど輝いていた。
……あ、やばい。ちょっと感動した。
「話し合いは終わった?」
そのとき、カリナが戻ってきた。
俺たちの様子に何か感づいたのか、少し距離を置いて待っていたようだ。
「カリナちゃん聞いて!」
セシリアがカリナに駆け寄って、満面の笑みで言った。
「もし私が次の試合で15歳以上の部に出て、相手を秒殺したら──コウタ先生がずっとトレーナーやってくれるんだって!」
「そ、そう……」
カリナはちょっと目を丸くしてから、ふわっと微笑んだ。
「よく分からないけど……お互い次の試合がんばろうね! 私も次の試合が正念場だから、絶対に負けられないの」
「そうだね! お互いがんばろう! えいえいおー!!」
セシリアが両手をあげて元気よく叫び、そのあと俺とカリナも一緒に「おー!」と叫ばされた。
なんだこのノリ。
いやいいんだけど。むしろ青春って感じで最高なんだけど。
そんなわけで、この日の俺たちは“チーム”としても成長した……気がした。
あとは、あの運命の日に向かって、全力で進むだけだ。




