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第三十四話 時間は俺たちをまってはくれない(完)

いくつかの季節が廻る、時間は止まらない。

だけど、俺たちは変わらずに、愛や友情の太い糸で繋がっている。



大学を無事卒業した俺は、吉田プロダクションで働き始めた。

最初は、アイドル・「花巻ぽろん」という、十六歳のかわいい子のアシスタント・マネージャーから始めた。

登戸君が「城くんを、絶対、男のタレントや俳優の担当にしないでね!」と、

社長に、わがままを言ったらしい。

その約束は、今でも守られていて、ぽろんちゃんのアシスタントマネージャーの後に、

マネージャーとして担当になったタレントも十代の女のアイドルだった。

そして俺は「カッコよすぎるマネージャー」と言われ、少々話題になっている。

でへっ!


聖は、ファッションブランド「ミピコ・ジョンジョン」で、デザイナーになり、

次のシーズンコレクションのメンズ部門の広告塔に、登戸君を起用するらしい。


健児は小さな広告代理店で働いているが、ある仕事を堺に会社内の信用を一気に得た。

それは、「登戸祐二」を使ったCMだ。

大手広告代理店でさえ、人気独占中の「登戸祐二」へのオファが難しいとされている中、

健児は、コネてコネてコネまくり、登戸君との仕事をゲットした。


IT企業に行った石田は、相変わらずいろいろな趣味に手を出しながらも、

知識や人脈の幅を広げている。

最近は、『登戸君のステキ生活』というブログを個人的に作り、吉田プロにも登戸君にも公認してもらい、登戸君の日々を綴ったり、日常の登戸君の写真を載せ、登戸君本人も書き込みをするということで、ブログアクセストップを獲得している。あくまでも、石田の個人的ブログである。


女子高の体育教師になった相川は、「先生、うざ~い」とか「ランニング超~ダサァ~」と最初の頃言われていたが、「うっさい! このクソ女子学生!」などと、教師としては、どうかと思うような態度で生徒に接し、相川が見せるSな部分にハマる生徒が多く出てきて、じわじわ学内で人気者先生になっていたが、数ヶ月前から、その人気が不動のものになっている。

「相川先生は、登戸祐二と超親しいお友達」ということがバレたからだ。

「モテまくりだよ~、オレ」と、相川は調子に乗っている。


日野は、法律事務所に籍を置き、一生懸命働いている。

そして、雅との結婚資金を貯めるため、ケチケチ男になっていた。

学生時代はブランドもので身を固めていたのに、今ではスーパー・サトーゴーカドーの衣料で身を包んでいる。

「日野くんは、なんでも着こなしちゃうぅ、やっぱり世界で一番カッコイイ!」とは、

雅の弁だが、確かにトータルコーディネイト五千円以下でも、日野が着ると高そうに見える。

そんな日野は、登戸君の紹介で、いくつかの会社の顧問弁護士の仕事を自分の勤める事務所に任せてもらっている。


俺たちの合言葉は「登戸祐二のマンションに足を向けて寝るな!」だった。





たびたび、聖と俺宛に送られてくる麻衣子からの写真付きポストカード。

「うちの子、ただいま成長中。三つになりました」

そう綴られた写真には、千歳飴を持って着物を着たかわいい女の子が写っている。


そのポストカードが届いてから数ヵ月後……




「おまえ、あっちの隅に行けよな! なに真ん中に写ろうとしてんだよ!」

「うるさい! 芸能人は目立って何ぼなんだよ!」

「じめじめしてんのに、テメェの顔見てると、もっとじめじめになんだよ!」

「僕は、さわやか青年が売りなんだから、じめじめしてるわけないだろ!?」

「オレの城に触んなって言ってだろーが!! 登戸!」

「あ~ん、痛ぁ~い。城くーーーん、聖さんが打つ!!」


俺は聖と登戸君に挟まれながら、教会前の階段に立ち、集合写真を撮っていた。

「あー、ちょっと、そこの君たち、動かないでくれるかな? 

 笑顔のまま笑顔のまま~お願いします」

カメラマンさんに言われた。

「もーーーーっ! 城お兄ちゃん、聖、登戸君! 

 私の結婚式なんだから大人しくしててよ!!」

ぇぇええ!? 俺も? 俺なにもしていないし、両脇がもめているだけだ。


一番前で白いウエディングドレスを着た雅が振り向き、怒鳴ると二人は一旦静かになった。


「僕もウエディングドレス着て、城くんの横に並びたいなぁ」

左側の登戸君がカメラを見たまま、前を向いて言った。

「オレ、ウエディングドレスは、城の好み聞いてから、自分の手作りにしよ」

右側の聖も前を向いたまま言う。

俺は右を向き、今だスキンヘッドの聖がドレスを着たところを想像し、思わず言った。

「そろそろ髪の毛伸ばせば?」

「ぁあ? 楽なんだよ、これ。シャンプーもコンディショナーも使わないから経済的だろ?」

うん…、確かにシャンプーは俺しか使っていない。


「城くん、僕も雅ちゃんみたいにJune brideがいいなぁ~」

「オレ、じめじめしてない秋晴れの日がいいから、城、秋にしようぜ!」

「六月の花嫁は幸せになれるんだも~ん」

「けっ、テメェは社長んとこの運転手を仲良くやってりゃぁいいだろが!」

そうなんだよ、登戸君は変わらず俺にくっ付いてくるけど、1年ほど前から、

吉田社長の運転手の大門地徳輔さん・三十五歳と急接近なんだよなぁ。

プライベートで、二人で飯行ってるみたいだし。

俺がチロっと登戸君を見たら、登戸君はすかさず視線を俺に向け、

「ふふっ! 城く~ん」と、俺の腕にしがみ付いた。

「ぁああ! 登戸! 城はオレのだ!」

聖が抱きついてきた。


「……あ~、きみたち、」

カメラマンさんが、再び注意しようとしたが、雅の怒りが爆発し、

「城お兄ちゃんはそこにいて! 登戸君は、こっち!」

と言い、登戸君を二段目の一番右端に連れて行った。

「よし! よくやった雅!」

聖が褒めたが、

「聖は、こっちよ! ったく人の邪魔ばかりして!!」

雅はブチブチ言いながら聖の手を引いて、最前列の左端に移動させた。


「すみませ~ん、みなさん。じゃ、カメラマンさんお願いします~」

と、笑顔に戻った雅の合図で写真撮影は終了した。




その後の披露宴も二次会も無事に終わり、俺たちはマンションに戻った。

「どうした? 着替えないの?」

帰って来てから「疲れたぁ~」とソファにひっくり返っている聖に、俺は着替えながら訊いた。


「ん? 着替える…。なんかさぁ、大切な妹が嫁に行くっていうのも、

 ちょっと淋しいなぁ、なんてね?」

聖は、体を起こし溜息をついた。

俺は、ボタンの外しかけのシャツを着たまま、聖の横に腰掛け、聖を引き寄せた。

「雅ちゃんがお嫁に行っても、聖の妹には変わりないよ。

 会えば、いつものように、「聖!」って駆け寄ってくるだろうし、

 雅ちゃんは、いつまでもおまえの妹だ」

「うん…、そうだよね。それに、相手が日野でよかったと思うし」

「雅ちゃん、きっとしあわせになるよ。だんなは日野だよ? 

 あいつの雅ちゃんに対する真剣さ、俺らずっと見てきたしな」

「うん…、…結婚かぁ…」

聖が、俺の背中に腕を回し抱きしめ、俺も力強く抱きしめ返した。


「聖…?」

「ん?」

「俺たちはさぁ、結婚しましたーとか、子供ができましたーとか、そういう報告は、

 誰にもできないけど、俺たち二人のしあわせは、俺たちだけで作っていけるし、

 周りのみんなもそれを見て、「あいつらマジしあわせそーでうらやましい」って

 言ってもらえればいい」

「うん。オレ、城と出会ったときから、ずっと今もしあわせだぜ」

「ひじりぃぃぃいい」


俺は、聖の名を叫びながら、聖を押し倒し、スキンヘッドをクリクリしながら、言った。

「髪の毛、そろそろ、伸ばそうよ…?」




読んで頂きありがとうございました。

一応完結です。

まだ未定ですが「登戸君」で番外を書こうかな、と考えています。

締りのない文章力ですが、その時また読んでいただけるとありがたいです。

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