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71.やっぱり健在でした・・・


雷覇らいはと和解した次の日、再度マダムベリーに来てもらい

陶器商人を紹介してもらう事になった。

今日は陶器商人も一緒に来てくれている。

わたし、雷覇らいは、マーリン、黒綾こくりょう殿の4人と

マダムベリーと陶器商人の6人で初めての顔合わせの日だった。

わたしと雷覇らいはがドタバタした為スケジュールが大幅に遅れてしまっている。

急ピッチで打ち合わせして、話を進めた。


マダムベリーから紹介された陶器商人は、背が少し低くて細身で白髪のお爺さんだった。

なんか和む…。ふさふさの白い髭を生やしていて小人みたいで

とってもかわいらしいお爺さんだった。


「はじめまして。秋唐国しゅうとうこく第一王女の怜彬れいりんと申します。今日はお越しいただきありがとうございます」


わたしは丁寧にお辞儀をして挨拶をした。


「お初にお目にかかります。陶器の商いをしております。ザガクと申します」


物腰の低い感じの言い方だわ…。

わたしにおじいちゃんがいたらこんな感じかしら。

ザガクは夏陽国かようこくでも有名な陶器商人で

マダムベリーとは20年らいの付き合いだそうだ。


怜彬れいりん様は、なんでもリョクチャを秋唐国しゅうとうこくで販売されたいとか?」


「そうなんです!秋唐国しゅうとうこくではリョクチャは知られていないので」


「ほぉ…。素晴らしいですな。さっそく私どもの商品を見ていただきましょう」


ザガクの持ってきた陶器のユノミはどれも綺麗な柄のはいったもので

かわいらしいものが多かった。

大きさの違いで飲むリョクチャの違いや、贈り物で使うものなど

様々な種類を見せてもらった。

ザガクは本当に経験豊富でたくさんの事を知っていた。


ユノミ以外にも、お茶を入れる容器も見せてもらい説明を受ける。

一つ一つ丁寧に教えてくれた。おじいちゃんと会話するのってこんな感じかな…。

ふふふ。もしおじいちゃんがいたらきっと毎日お茶をしていたでしょうね。

わたしには祖父も祖母もいない。皆なにかしらの理由で亡くなってしまっている。

年配者と話すことがあまりないので、最初は緊張したがザガクは大らかで

柔らかい雰囲気のためすぐに打ち解けることが出来た。


「このユノミはどうしてこんな形なの?」


「持ち手を少しへこませることで、より香りを楽しめるようにできております…」


「この色はとっても綺麗ね!どんな方法で染めているの?」


「うわぐすりと呼ばれる薬をやきものの表面にかけましてな、この薬をかけることによって、やきものに色を付けたり光沢や味わいを出します…」


「へぇ…。うわぐすりというのね!」


「はい。さらにコーティングすることで水の吸水性を防いだり、割れにくくしたり汚れを付きにくくするといった実用性を兼ね備えております」


ザガクが饒舌に説明しだす。

本当に陶器が好きな人なんだわ…。とっても素敵。


それから様々な説明を受けながらわたしは、マーリンと黒綾こくりょう殿とも

相談しながら何点か気に入ったものを選らんだ。

選んだ陶器は秋唐国しゅうとうこくへ送ってもらう事になった。

その後も、定期的に販売できるようマダムベリーが取り計らってくれた。

本当にありがたい!!


「ザガク!本当に素敵な品をありがとう!」


「こちらこそ、良い取引ができたことを感謝いたします」


礼儀正しくお辞儀され、ザガクからキリ箱を手渡された。


「これは?」


「私からのプレゼントです。ぜひお使いください」


穏やかな笑顔でザガクが微笑む。


「うわー!!とっても素敵!」


蓋をあけると、ほんのり黄色の小ぶりのユノミだった。

ふたつペアで並んで入っていた。


「大切に使うわ!ありがとう!」


「ふむ…。国王様と末永く仲睦まじい姿を見れるように縁起の良いものを選ばせて頂きました」


「そうなのね~。どんな縁起物なの?」


「子宝に恵まれると言われている、うわぐすりを使用しております」


ぐっふう!!まさかの子宝!!

ニコニコしながら、かなりの攻撃をしてくるわね…。ザガク。

まだ結婚もしてないのに…。

わたしは、辛うじて笑顔を保ちながら、お礼を言った。


「なかなか、気が利くな!ザガク!!」


「お褒めに預り、恐悦至極に存じます…」


とってもご満悦な様子の雷覇らいは

さっきまで大人しく隣に座っていたのに急に生き生きしだしたわ!!


「香水をいれるのに良い器はないか?ザガク」


「ほお…。香水ですとな。雷覇らいは様がお使いになるので?」


「いや、怜彬れいりんが香水をつけることになっててな。出来上がったものを入れたいのだ」


あ~!!なんかそんな事言ってた!!

調香師に頼んでオリジナルの香水を作ろうってなったんだ!!


「それでしたら、陶器よりガラスのほうが良いと存じます。また後日お持ち致しましょう…」


ゆったり髭を撫でながら、ザガクが話す。

また、おじいちゃんに会えるのね!!嬉しいわ!


「出来たら持ち運びができるものにしていただけませんか?」


わたしは、ザガクにお願いした。

やっぱり、あちこち行く事が多いからコンパクトなものがいいわ!


「畏まりました。怜彬れいりん様」


「よろしくお願いね!」


香水を入れる容器は1週間後に持ってきてくれるそうだ。

とっても楽しみ!!

ザガクが帰ってから、わたしと雷覇らいはは中庭で散歩することになった。

雷覇らいははまだ車椅子だからわたしが後ろから押して歩いた。



雷覇らいは殿!香水の事覚えててくれたのね!」


「ああ。本当はもっと早く渡したかったんだがな。色々あって今になってしまった」


「とっても楽しみだわ!ザガクが持ってきてくれるならきっと、素敵なものでしょうね!」


「そうだな。目利きは素晴らしい人だな」


そう言いながらわたし達はゆっくり、庭を歩いて回った。


怜彬れいりん。あの花は何という花だ?」


「あ…。あの花はサザンカという花よ…。ふふふ」


わたしは思わず笑ってしまった。

気になったのか雷覇らいはが振り返って尋ねてきた。


「なにか変なこと言ったか?」


「ううん。違うの。やっぱり親子だなって思って…。その花を見た時も炎覇えんはが同じように名前を聞いてきたわ…」


わたしは立ち止まって、サザンカを一輪手に取った。

とっても綺麗に赤い花びらを咲かせていた。


「そうなのか。親父が…」


「わたしが持っている簪も、このサザンカに似てるから買ってくれたの…」


「そうだったんだな…。親父がそんな事をするなんてな。意外だ」


「そうなの?」


「ああ。元々あまり物に執着がない人だからな。自分で買いに行くのも珍しい。よっぽど怜彬れいりんにあげたかったのだな…」


「そうね…。凄く照れてたわ…」


わたしは雷覇らいはにサザンカの花を手渡した。


「サザンカは寒い雪の日でも咲く花なの!とっても珍しいでしょう?」


「そうだな。凄いな寒い雪の日でも咲くのか…」


手元のサザンカを見ながら、雷覇らいはが優しく微笑む。

風が穏やかに流れて、心地いい。木々のカサカサという音がする。

風に乗って様々な草木の香りがした。

あの事件があって以来、雷覇らいはとはよく会話している。

朝起きた時、寝る前…。少しの時間でも沢山話をした。


「わたしね…。雷覇らいは殿と再会して、前に進むことができたでしょう?」


わたしはしゃがんで、雷覇らいはの瞳を見つめた。


「ああ…」


炎覇えんはの簪は今となってはわたしの一部のような気がして、手放せる気にはなれない。でも…。身に着けなくても…もう大丈夫だって思えたの」


「そうか…。怜彬れいりん。俺の髪飾りを着けてくれてありがとう…とっても似合ってる」


雷覇らいはがわたしの手を握り締めながら言った。

わたしも雷覇らいはの手を握り返した。


「うん。わたしも素敵な髪飾りをありがとう。雷覇らいは殿…。わたしもとっても気に入ってるわ」


実は今もその髪飾りを着けている。

着ける時ちょっと恥ずかしかったけど…。

今朝身に着けたとき、雷覇らいはは気づいていたけど

にっこり微笑んで頬に口づけするだけだった。

でも、わたしは簪を手渡した理由をちゃんと伝えたかった。


「香水を作るのも楽しみね!!どんな香りにしようかしら?」


「そうだな…。二人の香水は情熱的なものがいいな!!」


「情熱的?なんそれ…ふふふ。時々雷覇らいは殿って変な表現するよね」


「…?そうか?普通だと思うが…」


「変よ!雷覇らいは殿って小さい時あんまり話をしなかったでしょ?」


わたしはまた立ち上がって、車椅子を押し出した。


「う…。まぁ。よく話す方ではなかったな…。どちらかと言うと水覇すいはの方が良く話した」


「やっぱり!そんな気がしたわ」


温かい日差しの中、ゆっくり中庭を歩く。

雷覇らいはと他愛のない会話をする。

時々変な表現をするけど、とっても楽しかった。

やっぱりコミュニケーションって大切だな~。


因みに雷覇らいはの怪我は全治1ヶ月だったのが

2か月に伸びた…。まったく…。

普通治りかけて、またケガするとかある?

わたしの告白も1ヶ月伸びたじゃない!

まぁ…。逆に良かったかも…。


あのまま、わたしが告白していてもきっとどこかで

あの事件が起きた気がするし…。

余計に会話不足に陥っていた気がする。

やっと雷覇らいはも会話の重要性に気が付いたのか

会議でも部下たちと良く話すようになったとムツリから聞いた。


雷覇らいはも少しずつ変わっているようだわ…。

かれこれ雷覇らいはと再会してから半年が経過しようとしている。

わたしからしたら()()半年だ。

こんな穏やかな日を過ごせるなんて夢にも思っていなかった。

これからもずっとこうしていたいな…。


怜彬れいりん!」


「なあに?雷覇らいは殿」


上機嫌な声で雷覇らいはがわたしに話しかける。


「早くあのユノミでお茶をしたいな!!」


「えっ…今日貰ったユノミの事?」


「ああ!子宝に恵まれるそうだから、毎日使っていたら早く結婚できると思わないか?」


「…っ!!?何言ってるのよ!雷覇らいは殿のばか!!」


わたしは恥ずかしくなって、車椅子を押す手に力を込めた。

もうっ!!さっきまでいい感じだったのに!!

何を考えているのよ!雷覇らいはは!!


「なんでだ?変な事言ったか?」


ニヤニヤしながら雷覇らいはがこちらを見てくる。


「ううう。言ったわ!めっちゃ言ったわ!!」


なんだか…。嫌な予感がする。

雷覇らいははやっぱりどこまでいっても銀獅子ぎんししだわ!



最後までお読みいただきありがとうございます( *´艸`)

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