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1-7.

なるほど。頭蓋骨は硬い。

単純な硬度だけで言うと、他の骨と同等のはずだが、丸みで衝撃を分散するのだろう。

思ったように割れない。


脳を守る為の仕組みというか、本当によくできている。人体の神秘に触れた気分だ。


とはいえ、私は科学者でも、宗教家でもなく、ただの作業者なので、効率よく作業するだけだ。


水にさらして表面を解凍した後、髪の毛を満遍なくむしった頭を横にして、こめかみの少し後ろあたりにノミを頭頂部と平行になるように押し込みながら当て、金槌で叩く。


ガコッと、思ってたの違う音と共に、ノミが頭蓋骨に刺さった。

もっと、陶器のようにパキパキ割れるイメージだったが、粘性というか、柔軟さも兼ね備えているようだ。ますます、人体の神秘だ。


そのまま頭蓋骨を横に回しながら頭蓋骨の上半分を外せるように割っていき、一周したところで、ノミと金槌を置いた。


両手で頭蓋骨のこめかみ部分から蓋を取るように持ち上げると、白みがかったピンク色の脳が現れた。

頭の蓋の骨とはよく言ったものだ。


手袋をしたまま脳を指で押してみると、弾力のすぐ下はまだ固く、解凍されていない状態だった。

脳と台座の骨の間に指を突っ込んで、プチプチと神経か血管と思われるものをちぎりながら脳を取り出す。

意外とすんなりと取れた。


これが脳みそか。ネットで写真を見ていたので、特に感慨はない。くすんでて、でかい白子みたいだ。

まあ、白子は美味しいが、こっちは処理に困るゴミでしかないので、雲泥の差だが。


とりあえず、銀バットに乗せて、もう一つの頭の蓋外しに取り掛かる。

同じように髪の毛をむしるが、こっちは女で長いからさっきより少し手間取った。

次からの為に、濡れてても使えるバリカンでも買っておこう。

指が痛いし、むしった後の見た目も良くない。


どうにか大量の髪の毛を千切るようにむしりきって、先ほどと同じようにノミを一周させ、蓋をとる。

血抜きが十分じゃなかったのか、さっきのより、少し赤みがかっている。


取り出した脳を銀バットの男の脳の横に乗せると、男の脳の方が少し大きい。シワは女の脳の方が少し多い。

データがこの2つだけなので、個人差か男女の差かはわからないが、どうでもいい。どちらもゴミだ。


ひとまずはラップをかけて、銀バットごと冷凍庫に戻す。そのうち細かく刻んで、穴に捨てよう。


あとは流水で流しながら頭蓋骨にこびりついてる肉片をブラシで擦り落として、明日の準備完了だ。

脚と一緒に焼いてしまおう。


頭蓋骨を洗い終わり、ふと時計を見ると、まだ16時過ぎだった。いいペースだ。

作業場を片付けると、裏口側から出て、オーブンの様子を確かめる。

特に変わった様子はなく、順調のようだ。変な匂いもしない。


そういえば、すでに砕いた骨を穴に捨てに行こうかと考えたが、全部まとめてでいいか、とすぐに方針を決めた。

今日の用事はひとまず終了だ。


長湯に浸かってから、夕食を食べながら映画でも観よう。

観ようと思ってリスト化をしていた映画がたくさんある。


ああ、今日もいい一日だった。

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