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3 どうしてこうなった?

 眉をぐ~っと寄せて半目。ヴィクトール王子とユリウスの主従は、仲良くお揃いの表情でこちらをみている。

「だっ…だから信じてもらえないって言ったんですよー……。」

わたしの話を信じてない気持ち半分と『こいつやばくね?』という気持ち半分の不審し者をみる目に、両手を組んで訴える。腹黒王子様の追求に耐え切れず「乙女ゲーム」の話をしてしまったが、当然のことながら理解してもらえるとは思えない。

なんとか誤魔化して逃げ切りたかった……!でも『王子の個人的な嗜好が知られているということは、城の近侍や侍女が王子様の情報を漏えいしたか、城に間者を潜入させたか』になると言われ…。『前者なら城に努める人達を追求するだけでなく、場合によっては管理者に責任を取らせることに。』『後者なら我が子爵家の関与を疑い両親ともども責任を追及。』どちらにしても、わたしは牢屋行きが確定とさんざん脅され…‥…。

(本編に関係ないキャラに転生したあげく牢屋エンドとか絶対イヤーーーー!!でもこのままじゃ、牢屋じゃなくて病院にいれられそう……!どっちに転んでも最悪です!)

「あっ……あのっ……‥!」

「……………」

「……………」

「……本当に、本当なんです………!」

「あーー………いや、うーん…。おい、ユリウス。」

「えっ……!俺ですかっ?………いや、うーん……。」

頬を引き攣らせて引き気味にこちらをみる主従に、両手を組んだお願いポーズのまま半泣きです。

「お願いです信じてくださいっ。なんでも知っていること話しますから!!!本当はいろいろ知っているけど、令嬢達にはあたりさわりない事しか教えていません!殿下は『夢の王子様』とか言われているけど、本当はお腹の中真っ黒の『腹黒王子様』なんて内緒にしてます!でも、性格がゆがんだのは女性が原因なんですよね⁉全部知ってます!子供の時から、むちゃくちゃ可愛かったから、陛下の寵妃とか令嬢とか小さい頃からセクハラ三昧で、特に身の回りの世話をする侍女からは、着換える時とか、入浴の時とか、就寝中とか…!12歳の時なんか……!」

「わぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「でっ、殿下しっかりしてくださいっ!……ちょ…ちょっとマリエル嬢っ。」

「あっ…!ユリウス様の事も知ってます!女の子が欲しかったお母様に小さな頃は女の子の恰好ばかりさせられたせいで、フリルとか小さくて可愛いもの好きになったんですよね⁉普段は真面目な優等生面でかくしているけど、お部屋のカーテンもフリフリレースだし、ベッドにはクマのぬいぐるみがいっぱいだし、こっそりお城に住み着いた猫に名前つけて餌をやってたり、ヴィクトール王子の妹姫のリリアンヌ様にもしょっちゅうお菓子をあげて餌付けして……!」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「だっ、大丈夫かユリウス!…フリル?…クマのぬいぐるみ?……っていうか、猫やリリアンヌがぷっくぷくになっているのは、お前のせいだったのか…⁉やばいくらいぷっくぷくなんだぞ⁉」

「だって可愛いじゃないですか……!小さくてぷっくぷくですよ……⁉」

「かわいくねえ……っ!!」


(…話す内容間違えたかな。でも、なんか楽しそうだこの二人。)


ぷっくぷくについて『かわいい』『かわいくない』談議をひとしきり続けてようやく落ちついたユリウス様から告げられたお沙汰は、『前世の話しの真偽はともかく、ここまでの情報を知られているからには監視が必要』とのものだった。わたしに悪意がないこと。殿下の評判を落とすようなことは誰にも話していないことだけは信じてもらえたと…思う。


結果、継続的に殿下達の側近くで監視することも目的としてお城の侍女にされてしまいました…。


しかも、ヴィクトール王子付きです。


わたしを侍女として雇用することにユリウスは反対していたけど、監視するためにも警護の騎士が多い王家の私室エリア勤務にしたほうが動向を確実に監視できるというヴィクトール王子の案にしぶしぶ納得した様子。当の王子といえば監視だけでなくどうせいろいろバレているから、私室でも素が出せて楽ができると言っていたので、こちらが本音だろう。(ユリウス以外の前では、たとえ侍従や侍女の前でも巣を出していないというから『夢の王子様』は徹底されています)

牢屋行きが免れただけでも助かったとするしかない。なによりお城の王家エリアの侍女のお給料はなかなか良かった!貴族令嬢ができる数少ないお仕事「お城勤め」なら両親も安心できるし、わたしも将来のための貯蓄ができる。『腹黒王子様』の侍女は気が重いが前世の庶民力で宮仕えもなんとかなるだろう。行儀見習なんかでお城勤めしている貴族令嬢もいるようだし、きっと大丈夫………!



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「マリエル準備はできましたか。」

「はっ、はい。ダリアさん。本日のご衣裳はこちらでよろしいでしょうか。」

衣裳部屋からヴィクトール王子の衣装一式を揃えて侍女頭のダリアさんに確認をお願いする。王子が起床される時間に合わせて寝室までお届けするのが朝一番の仕事だ。

「ええ。問題ありません。殿下にご確認いただきましょう。」

いつもキビキビしている侍女頭のダリアさんは、王子様が生まれるずっと前から王室勤めをしているだけあってお仕事も完璧です。

騎士の守る扉を通り抜け寝室にはいると、すでにユリウスがヴィクトール王子を起こしている。殿下の希望で一番にユリウスが私室に訪れ、当日の業務について打ち合わせることになっているので、殿下を起こす役目もユリウスが担っている。業務の効率化という名目であるが、素が出やすい寝起きを誰にもみせないようにする配慮だと思う。

ダリアさん達と一緒に衣装を届けた時は、完璧な王子様スマイルで迎えてくれるのに、わたし一人の時は完全にスイッチがオフになっている。「朝から無駄な顔面筋をつかわずにすむ」らしい……。自分の扱いにちょっとイラッとするけれど、前世庶民の感覚からすると一日中『夢の王子様』で過ごさなければいけないなんて、王子様家業は本当に大変だとちょっと同情してしまう。

王家の私室エリアの侍女さんたちはダリアさんをはじめ、みんないい人だし貫禄のあるお母さんやお婆さん世代の人ばかりなので、そこまで『王子様』をやらなくても受け止めてくれそうだけど…。いきなり働くことになったわたしに対しても、いつも『若い娘がいるだけで華やかになるわね~』『孫と働いているみたいで楽しいわ~』と可愛がってくれる優しい人ばかりなのです。

けれど、お城の中のほかのエリアでは若い侍女がたくさんいるので、王家の私室エリアだけ平均年齢が高いのはやっぱりヴィクトール王子に変な事する侍女がいないようにという配慮なのか?

王子の着替えをユリウスと一緒に手伝いながら、最近の疑問をぶつけてみる。(ダリアさんたちには、なんだか聞きにくいし。とても良い職場なので関係を崩したくないのです。)

「王家の私室エリアだけ若い侍女がいないようなのですが、なにか理由があるのでしょうか。」

「なんだ、お前なら理由はわかっているはずだろ?」

いまさらなにを言っている?という表情で聞き返してくるヴィクトール王子。

「わたしが知っている情報だけでは、わからないこともありますよ。現実世界の細かい設定まではゲームに出てこないので。想像では、殿下に可笑しな真似をすることがないようにという配慮なのかと…。」

「ふーん。そういうものなのか…。《げえむ》とやらは全てがわかるわけではないのか。まあ、そうだな。侍女の件は………。ふっ。いまにわかるぞ。楽しみにしておけ?」

『夢の王子様』が素敵な笑顔で両肩をポンッと叩く。斜め後ろに控えているユリウスは渋い顔をしているのに、なぜか楽しそうな王子様。


嫌な予感がします………!

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