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無音の魔術師  作者: 芹沢十嘉
第一章 白き森
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断章.会いたい人

 暗い緑かがった髪、同じ色の瞳。お父さんと同じ、ハーフエルフ。

 ベッドに横たわる、傷だらけの少年は、ずっと何かにうなされていた。

「何が、あったんだ……」

 傍らのお父さんは顔色が悪くて、お母さんは、そんなお父さんを心配そうに見ている。

 苦しそう。辛そう。

 私は彼の手を握ると、大丈夫だよ、と囁く。

 握り返してくることは無かったけど。


××××××


 ゼシカくんは、働き者だ。

 怪我が少し良くなったと思ったら、村に出て、お手伝いを始めた。

 意外と行動力があるみたい。

「今日も手伝いに行くのね?」

 彼は軽く頷いた。

 余り感情を出さないゼシカくんは、木や草花を見ると顔を綻ばせる。

 初めは少し怖かったけれど、直ぐに良い人だと分かった。

「私も行って良い?」

 すると目を見開いた後、苦笑して頷いてくれた。まるで、面倒見の良いお兄ちゃんみたいな表情だ。

 傷付いている彼の優しさに、私は甘えているんだ。私たちが恩人だから、愛想良くしてくれているのかも知れない。

 私は、胸の前で手を握りしめる。

 それでもドクドクと心臓が音を立てているな、と思った。

 背の高めな私よりもまだ、背の高いゼシカくんと並んで歩く。

 彼は話すことが出来ないから、私が一方的に話しかける。見上げると、彼の髪の毛が風にふわふわ揺れていた。

 彼はたまにメモ帳で気になることを聞いてくるが、基本は私の話を聞いているだけだ。

 私の方は向かない。

 でも、時折綻ぶ横顔を見るだけで、私は充分だった。


××××××


「ありがとうね、二人とも」

「いえいえ。いつもお世話になっているし、おあいこよ」

 でもおばさんは、クッキーをくれた。美味しいから大好きだ。

 私はゼシカくんを引き連れて、少し歩く。この季節は日向にいた方が、良い。

「……」

「どうしたの?」

 彼の視線の先には、家があった。もっと言うと、弓矢が壁に立て掛けられていて、どうやらそれを見ているらしい。

 ゼシカくんの口が動いた。

「………………」

 誰かの名前だ、と分かってしまった。

 あまりに寂しそうな表情だから。

 あまりに愛しげな瞳だから。

「会いたい人、なのね」

 思わず呟けば、目を見張ったゼシカくんを見れた。

 どんな人なのだろうか。彼の会いたい人は。俯いた彼に、笑いかける。

 すると、ゼシカくんはメモ帳に何かを書いて、私に見せた。

「アリスティさんって言うんだ」

「……」

「好きなのね」

 するとゼシカくんは勢い良く首を横に振った。

 頬が微かに赤いから、あまりに説得力はなかったけれど。不満げに私を睨む。


『彼女は、俺が仕えていた人です。別に、好きとかそう言える対象ではない』


 また、無表情に戻ったゼシカくん。だが、その言葉が、どこか言い訳めいているのを私は感じた。

「でも、会いたいんでしょう?」

「…………」

 ゼシカくんは溜め息を吐くと、微かに苦笑した。

 認めたのか、私がしつこくて呆れたのか、それ以外か。

 ゼシカくんは、また何かを書いたメモ帳を私に渡すと、歩いていってしまった。


『特に俺の好みではなかった。だが、彼女の金髪は誰よりも、綺麗だった』


 私の入る隙は無いな、なんて、思わせるには充分だった。

 そして同時に、私がどうして、彼の会いたい人が気になったのかを分かってしまい、居た堪れない気持ちになってしまった。



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