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Village vigilante army

matoba's side_


……………………………………………

……………………………………………………


「ボーチャードピストル。……これならどうだい? 君の要望道理、連続発射式らしいが」

「……少し触ってもいいか?」

「勿論だ」

 森近の秘密の倉庫に連れられた俺が見た物は、銃の山だった。

 これほどまでの武器を集めていたとは……。

 確か、無縁塚だっかた?

 行ってみる価値があるかもしれん。


 ……ただ、流石に古い銃が多い。

 一応、外界でも現役の物もかなりある。

 あと、フレームがブローバックするリ ボ ル バ ー やH&KのG11(暴発事故発生装置)などの珍銃も多々ある。


 俺の予算は500円。外界物価で1000万円。

 外界で一千万つったら、一個小隊規模の装備が装具込みで揃えられるが……。


「……部品多すぎ。故障直行だろこんなん。もっと新しいの見せてくれ」

「それは残念だ。……じゃあこれならどうだい? ベレッタのM92。八十円でいい」

「駄目だ。それスライド引っ張ったら取れるんだよ。M92Fはないのか?」

「あるよ。値段は張るが……」

「お、いいじゃないか。いくらだ?」

「……二百円だよ」

「はぁ?! ふざけんな!」


 こんな感じだ。

 足元見やがって……と地団駄を踏みたいところだが、仕方ない。

 元々、この世界では銃自体が貴重らしく、値もヤバイ事になっている。

 金はある。だが、現状無収入の俺にとっては、「…………」みたいな感じの値だ。

 拳銃選びでこのザマか……。

 ……先が思いやられる。


 結局、拳銃はM1911のプロト(百円)と45APC弾二百十発(二十円)と弾倉四つ(八円)。

 小銃は5.56mmのM855弾六百発(六十円)とAK47(二百十円)。7.62×39mmを三百発(五十円)と弾倉四つ(四十円)。

 しめて507円のお買い物。

 ……オーバーの七円はツケよ、ツケ。

 他にもめぼしい物があったが、試射はダメらしいので有名どころを買っておいた。

 ホントはSIG552(二千円)とUMP45(千二百円)とか欲しかったが。

 まぁ、金は大事。

 仕方ない。

 尤も、この世界では銃が破損しても治せる奴がいないので、頑丈と名高いこれらの銃を選んだ事は間違いではない……はず。

 あと、中古なので外観はいいが、中身が腐っている場合もある。

 使用には入念な点検と点検射が要求されるだろう。


「……君は、この世界に残るのかい?」

「ん? まぁな。諸事情あるんだ」

 俺は自前の弾倉に、M855を装填しながら、そう答えた。

 ……この弾は八九と互換性はあるが、国産の実包とは中身の火薬や構造が若干ちがう。

 いきなりジャムったら嫌だな。

 俺はフル装填はせず、28発ずつ弾倉に入れていく。

 規制子(ガス圧)の調整は後でいいだろう。

「何故だい?」

「諸 事 情 だ。詮索すんなって言ったろ」

「……すまない。ま、気を悪くしないでくれ。外来人の軍人が武器を買いあさってるんだ。気にもなるさ」

「それは、分からんでもないけどな……。終わったぞ。店に戻ろう」

「あぁ。君のおかげで大分懐が温まったよ。……あと老婆心ながら忠告しとこう」

「……?」

「君がどうしようと僕には関係ないし、興味もない。だが、過度な干渉はしないことだ、この幻想卿に」

 と、ラノベの重要人物みたいな事をぬかした森近に俺は苦笑いを浮かべた。

「んなことしないさ。ただ、ちょっと暮らしやすくするだけだ。……人間がな」

 俺はそう言うと、弾薬とM1911を背嚢にぶち込み、最後にAK47を突きさした。



……………………………

…………………………………………


「……以上がこの幻想卿の内情。ここまではよろしいか、的場君?」

「はい、掌握しています。続きを……」

 俺の言葉に、慧音さんは徐に頷くと、再び自身が手にしている資料に目を落した。

 

 これでも、重苦しい雰囲気には慣れているつもりだ。

 演習や災害派遣前の状況付与に似ている。

 違うのは、ここにいる人間との接点や設備くらいか?

 まぁ、『失敗は許されない』という点については同じだろう。


 人里の役場の一室。

 そこに集められたのは、俺と四人の自警団幹部と里長。

 あとなんかの村の村長、三人。

 以上の九名が二コリともせず、慧音さんの声に耳を傾けている。

 その中には勿論、西村司令の姿もみえる。


 ……………超緊張すんだけど。

 あ、何か冷や汗でパンツ濡れて来た。

 何が「続きを……」だ。

 頭が良いフリなんて、柄じゃねぇのになぁ。


 西村司令との会談を慧音さんに頼んだはいいが……あの狸オヤジ。

 俺の同意もなく、里長とか連れて来やがった。

 いや、自分で自分を褒めてやりたい。

 今、カジノのポーカーで役無し(ブタ)でも、足組んで鼻クソをほじりながら相手に中指を立てれる位の能面を保っている。

 兎に角だ、残念ながら役者は揃ってしまった。

 俺は何とかして人里の軍事権を掌握しなければいけない。

 そんな奴が取り乱してたら、話にならないだろう?

 尤も、俺の渾身の虚勢如きではどうにもならないこともあってだな……


「馬鹿を言わないでくれ! それでは我々が妖怪に戦いを挑むのと同意だ」

「そうですよ。もっと平和的に思案しましょう。大量の死者を出したいのですか?」


 人里も一枚岩ではない。

 発端は慧音が読み上げた、ある『提案』に対し、二人の村長が声を荒げた事か……。

 慧音さんは退出していったが、彼女の心労を考えると正解だったな。


 さて……ここで、分かりやすくこの場の組織図をぶった切ってみよう。

 俺を含む、西村司令以下が改革派。

 その他は基本的に、現状維持でなんとかしたい派。

 里長は一番重要な役割のはずだが……ぶっちゃけどっちに付きたいのか分かんね。

 何かさっきから一人で瞑想している。

 おい爺さん、……息してんのか?


 兎に角、人里がヤバいんだから理論武装でゴリ押しで「俺に軍事を任せろ」って言いたいが、そうもいかない。

 俺らは言うなれば野党。

 里の政治に意見はできるが、介入はできない。


 それはいいとして、何か話が段々とずれていっている。

 妖怪の対策会議がいつの間にか、税金の話になっていっとるが……。

 ……オメェ等の内政なんか知るかよ。

 俺は日本の……日本人の為に動くだけだ。


 ちょっと眠くなって来た俺は、わざとらしく両手を叩き、彼らの注目を浴びる。


「まぁまぁ、皆さん。私も外来人ゆえ、胡散臭いと思われるのも無理はないとは思います。ですが、このままでは妖怪によって人間は手痛い……甚大な被害が……」

「分かっている! だが、考えてみてくれ。君に全てを任せては、西村さんのメンツが……」

 その言葉にすかさず西村司令が嚙みついた。

「そんなこと気にはしないよ。第一、貴方達が的場さんを否定する理由が分からない」

 で、俺もすかさず便乗する。

「お願いします。ここは外界とは切り離された世界なれど、同じ日本。仲間が殺されるのを見て自分は黙ってはいられない!そのためにはより強力な組織が……『人里自警軍』が必要なのです!」

 ……などと、臭いことを言ってみたりするが、会議は一向に終息に向かわない。


「……まぁまぁ、皆の衆。落ち着きなさい」

 

 と、段々と皆ヒートアップして来たところで、聞きなれない声がこの場に響いた。

 俺含め、その場の全員、声がした方向に首を向けると、そこには非常にもっさりとした動作で自分の髭をいじる里長がいた。

 ……まだいたのか、あんた。

 つか、生きてたのか。


 彼はゆっくりとした動作で椅子から立ち上がると、何やら思案している様子で窓の外を見ている。

「西村君」

「はい、(おさ)

 いきなり、西村司令を名指しした。

「君は、ここ一月で妖怪に殺害された被害者の数を知っているかね?」

「二百五十二名です」

 その言葉に、場は静まり返り―――――

「は?」

 俺は半分素に戻って、間の抜けた声を上げた。

 バカな、なんでそんなに増えてんだ!?

 風俗の件で百人超。昨日の襲撃で百四十八……。

 ……………………まさか。

「そうだ、西村君。『今朝の襲撃』でさらに被害者が出た。遂に自警団員すら、彼奴らの毒牙にかかってしまった」

 俺は里長の目を盗んで、横にいた西村司令に問いかける。

「西村司令、それは―――――」

「長の言葉道理だよ」

 彼はそれだけ言うと、それっきり黙ってしまった。

 ……確かに、現状自分は部外者だし、恐らくその時間に俺は香霖堂にいた。

 俺には何も言えない。言う権利がない。

 だが、俺の心には禍根が残る。


「一度、振り出しに戻そうと思う。これは、この里の責任者としての『提案』だ」

「振り出し? とは……」 

 先程まで西村と口論していた村長が切り返す。

「我々に力はない。賢者様……『八雲 紫』様からの返答もない。博麗はこの幻想卿の均衡を守る一翼であって、『人間の味方』ではない。……これは詰みだよ」

 ……まどろっこしいな、この爺さん。

「どうするおつもりです? 具体的にお願いします」

 俺はこの場の全員の気持ちを代弁するつもりで、里長に問うた。

「案ずるな、外界の兵士よ。私は君たちにこの件を一任しようと思う」

「…………!! では―――――」

 俺は口を開けて呆然とする村長その他を捨て置いて、里長の、里の最高権力者からの言質を取ろうとする。

 

 だが、


「あぁ。『君達の世界』の力を望む」

 俺はその言葉を一瞬理解出来ず、呆然とし、そしてやっとこさ理解した瞬間、とてつもない寒気に襲われた。


「いけません、里長! 博麗や八雲が黙っていませんぞ!」

 例の村長の言葉を矢切に、白然としたこの場に熱気が戻って来る。

 そうだ、何言ってんだクソじじい!

 俺はそれを阻止する為に……外界を守る為に、この場にいるんだ!

 おう、いいぞ村長、もっと言え!!

 尤も、里長以外の全員の声は否定的で、俺が出る幕はなさそうに思えた。

 あの西村すらも、苦虫を嚙み潰したような顔で里長をみている。


 だが、里長はそんな批評などどこ吹く風、と言った様子で、静かに口火を切った。


「では、我々はどうすればいい? 感情論ではなく、明確に示してほしい」

 そう言われれば、この場の全員に反論の余地はなかった。

「……ですが、どうするのです? 外界との接触の仕方だって……」

 このまま黙っていれば『飲まれる』。

 そう直感した俺は、苦し紛れに反論する。

「『何とかする』さ。博麗の巫女は多少苦労してもらうが……」

 こいつ!?

 平和のためには暴力も辞さないってか……。

 正直、嫌いじゃない。

 やるね。

 こんな境遇じゃなけりゃ、この人とは馬が合いそうだったが……。


 もう場は大混乱だった。

 まぁ、人数が小規模の会議で助かった。

 しかし、どう収めるつもりなんだ?

 

 俺は内心冷や冷やしながら事の成り行きを見守っていると―――――


「頼む、後生だ!」

 里長はいきなり頭を下げた。

 そして、

「今まで二百五十二人の尊い命が奪われた! 老若男女関係ない、乳飲み子だっていたのだ! そこには私の……私の………………!!!! ……………この幻想卿が出来て何千の何万の命が奪われてきた!? 何が起こったかは知らんが、たった一月でこのザマだ。 もう、安全などない。……もう、我慢出来ん。この幻想卿は平等に『自由』な世界だ。……ならば、我らも『自由』の権利を今こそ行使しようではないか。……妖怪の為ではない人間の自由を!!!!!!!!」

 

 彼の、里長は目にいっぱいの涙を溜め、そう言った。

 その場にいた者全員の心に、殴りつける様な教示。

 流石に全員を決意までには至らせないまでも、それまでの理念を揺らがせるのには十分な威力であった。


「今、決めろとは言わん。だが、各々心に留めておいて欲しい。外界に助けを求めるか、己で正すかを。それから、的場さん」

「……はい」

「これが『可決』すれば、色々と手数をかけることになる。だが、どうぞよろしくお願いいたします。我々を人の楽園へ……」


 里長は深々と頭を下げた。

 俺は助けを求める様に、周りを見渡すが、全員虚空を見つめ自分の世界に入っている。


 そして、俺はひりつきそうな喉を無理矢理こじ開けて、普段の俺からは考えられない声色で――――



「………無理です」



 その時の里長の表情は最高に面白かったよ。

 いや、多分俺も今、脂汗と緊張で負けてない位の変顔だったんだろうが……。

 でも残念ながら、俺はその時の場の空気で意見を変えるタイプの人間じゃないんだ。

 悪いな。

 

「は……? 的場さん、今なんと?」

「無理だと言いました、里長」


 俺は一回深呼吸する。

 気分は正に最悪だ。

 だって、外界に助けを求める事に否定的だったこの場の連中まで、「何を言ってるんだ?」的な面を下げてやがる。

 

「何故ですかな、的場さん。貴方の力を軽んじているわけではない。だが、哀れな幻想卿民を救うには、もう貴方と我々だけでは力不足だ。外界は平和だと聞く。どうかよく考えてくれないか」

 里長の一言一言が俺の心をえぐる。

 ……ここで「はい」、と肯定してしまえば、俺はどんなに楽だろうか。

 それどころか、この幻想卿の人間を救い英雄になれるチャンスかもしれない。

 そうすれば……、俺はまだ陸上自衛官を続けられるかもしれない。

 俺は……………………。


「……外界を舐めるなよ」


 ……………いつだったか?

 フランさんに言われた『ありとあらゆる者を切れさせる能力』だったか?

 的を得ている。とても……。


「な、何を……」

 俺は里長とその他の人員を睨み付ける。

 それで動揺する里長を尻目に、言葉を続けた。

 そうだ、これでいい。

 こいつらにどう思われようと、俺の知ったことではない。


「アンタらは、俺の国が何の代償も払わずに平和を掴み取ったと勘違いしてないか? ……人間の業を舐めんな。この幻想卿と外界を繋げちまったら諸外国から目ェつけられて、一瞬で資源戦争よ」

「せ、戦争? そんな馬鹿な……」

「あるよ。今の外界の情勢はなぁ、複雑なんだ。各想定国の間で、世界は脆弱なバランスを保っている。今の日本だってそうだ。第一な、俺らを巻き込むんじゃねぇよ。種族ってのは互いを牽制し合うもんだろ? その中で平和を求めるなら、相応の覚悟がいるんだよ!」


 ……演技じゃない。段々と本気で腹が立ってきた。

 俺が巻き込まれる。……それはいい。

 だが、絶対に日本人をお前らのいざこざには巻き込ませない。 

 

 まぁ、相手も必死な様子。

 引く様子はない。


「だから、頭を下げている! 我々は自分達ではどうしようもないからこうして……」

「はぁ!? だから、俺が自警団に助言するって言ってただろ。何もしないで、勝手に諦めて……我がだけか?! たかだか、数百人死んだくらいで喚くな、鬱陶しい! 今の日本はなぁ!! ウン百万人の旧日本軍人の死体の上に成り立ってんだよ!!! なのに、また戦争が起こる可能性を無視して、お前らを助けろだぁ! 厚かましいんだよ、ボケ!!」 


 一次、二次大戦の人的損失、実に約一億一千万人。

 この世界の住人は生まれて、『妖怪』という明確な敵がいた。

 だから、憎悪も怒りも、奴らに向けられる。

 こいつらは、人間の恐ろしさを知らない人間だ。





………………………………

………………………………………


 どうすればいい?

 どうすれば………。


 会議がやっと終わり、俺は咲夜とフランさんが待つ旅館に足を進めた。

 冬特有の、乾いた風を全身に受けつつ、フラフラと旅館に入る。


 会議は終わった。

 俺は里長の主張を全力で跳ね続けたが、結果は変わらず。

 里長はただひたすら「よろしく」を連呼すると、その場から姿を消した。

 あれ程、外界との接触を危惧していた村長達も、里長の案になびいている様子だった。

 唯一の望みの西村は………どうなんだろうか?

 彼は終始何も言わなかった。


 最悪だ。

 このままでは日本が、俺の故郷が、親が、兄弟が、友が――――――


 堂々巡りとはこのことだ。

 立っているのに、宙に浮いている感覚。

 ひどく怒られた時に似ている。


 啖呵を切ってみたはいいが、俺は所詮外野。

 奴らは、一度事が決まれば、やりたい様にするだろう。

 もう、いっそ力ずくで―――――


「どうしたの、ゼン君? 遅かったね!」

「……あ、あぁ。フランさんか」


 ハッとして眼を前に向けると、いつもの金髪の吸血鬼が、サイドテールを揺らしながら俺に近付いてきた。

 周りを見渡すが、咲夜は……いない。

 

 ………………………………そうだ。

 

 俺はフランさんを見た瞬間、頭に鋭い閃光が走った。

 ある、あるぞ。

 この世界の住人が、外界と接触することを阻止する方法が……。 


「お話合いどうだったの?」

「いやぁ、あんまりうまくいかんかったっす」

「そうなの? だから、元気ないの?」

「えぇ……。で、フランさん。俺を元気付けるつもりで、一つ……、いや、二つだけお願いを聞いてくれませんか」

「えー? へ、変なことじゃなきゃいいよ?」

「……しねぇっすよ」


 俺が、『その事』を話すとフランさんは、何の疑問も抱かず、楽しそうに、無邪気な笑顔で、快諾してくれた。 

 ……ゴメン。ゴメンなぁフランさん。

 こんな事に巻き込んじまって。

 

 この世界に来て、俺は短い。

 あなたはこの幻想卿で、数少ない友人……ってのも変だが、大切な人だ。

 それは間違いない。

 自信をもってそう言い切れる。



















 でも……、あなたより大切なものは、他に沢山あるんだ。

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