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15話

 




 フードを下ろした途端、広大な室内に地を這うようなどよめきが広がった。


 尖った大きな耳、残虐性を孕んだ瞳、そして鋭い牙が覗く歪んだ口元。何より異様なのは、その生々しい桃色の肌だ。どこからどう見ても人外であり、ただそこに存在するだけで見る者を本能的に恐れさせる異形の相。


「……本当にお前に、これが治せるんだろうな?」


 フリードの放った、強い意志の籠もった低い声が、室内のざわめきを切り裂いて鎮めた。


「もちろん治せます。しかし、それは決して簡単ではありません。正直に申し上げて、私が今まで見てきた中で、あなたは最も強い業を背負わされている。……これはもはや、呪いと言っていいでしょう」


「御託はいい、早く治してくれ。こんな姿とは一刻も早くおさらばしたいんだ」


「やってみましょう」


 エンヤは微笑んだが、その口元はどこかぎこちなく歪んでいた。


「本来であれば、聖水を使い時間をかけて浄化するのです。しかし、それほどの重症となれば、私が直接触れて治すしかありません」


「直接触れる……?」


「私が天界から授けられた聖なる力を初めて行使したのは、六歳の頃でした。死の淵にいた生まれたての仔馬を、私はとっさに摩りました。すると、仔馬は徐々に力を取り戻し、立ち上がったのです。この治癒は私の体に多大な負荷をかけますが……あなたを救うには、それしか道はありません。それでも、完治には三年か五年はかかるでしょう」


「頼む、治してくれ。何でもする!」


「分かりました……」


 エンヤはゆっくりと立ち上がると、獲物を追い詰める蛇のような足取りでフリードの元へと歩き出した。

 その時。

 静まり返った部屋の中に、鋭い咳払いの音が響いた。


「――ゴホン! 失礼……」


 エリトンの声だった。その瞬間、事前に決めていたルールがフリードの脳裏を鮮烈に過った。


(『毒の臭いがしたら、咳払いで教える』……!)


 フリードの前でエンヤが立ち止まり、その手を伸ばした。


 だが、その死の抱擁を遮ったのは、喉元に突きつけられた一筋の冷たい輝きだった。


「それ以上ご主人様に近づくな。――下郎」


 そこには、狼のような鋭い眼光を放つマリーゴールドが立っていた。その手にしたナイフは、迷いなく教祖の喉元を捉えていた。





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