表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/231

村でお泊まり

その日はそのまま村で一泊して、明日の朝早い時間に出発すれば、陽の高いうちに隣の町に着くそうです。

村には宿は無いですし、一番大きな村長の家でも、2DKほどの広さしか無いので、私達はバラバラで、村人の家に泊めてもらう事となりました。


アインは村長の家へ、ブルースは肩車をしていた男の子が引っ張って行きました。

シナトラはネコ獣人の家へ、チャックはサルの獣人のお家で泊めてもらう事になりました。


そして私なのですが………。


「いやーー!

おじちゃんは私の家にとーまーるーのー!!」

「ダメ!!私なの!」

「おじちゃんは女の家なんて泊まんないよね?

俺の家に来るよね⁈」

何と、子供達から争奪戦をされています。

本当に可愛過ぎて困りますねえ。


「ちょっとニヤケ過ぎ。

あんたこの村に来てからまともな顔してないよ」

おお…チャックに指摘されてしまいました。

顔が緩んでいる自覚は多少ありましたけど、どうもニヤニヤが止まりません。

そんな私に、「フンッ!」と鼻を鳴らしてチャックは今夜泊めてくれる方の家へ行ってしまいました。


結局私はヤマイヌの獣人さんのお宅に泊めていただく事となりました。

ヤンチャな男の子のお家です。

食事もそれぞれのお宅でいただく事となっていますので、朝まで皆とお別れです。

ちょっと寂しいですね。


食事……そう、食事です!

何とこの世界では、主食の一つとして、ご飯が有るんですよ!

正確に言うと【お米のご飯】ではなくて、ススキの様に生える草の実?なんだそうです。

元は雑草で、大飢饉の時に麦に代わる食べ物として、雑草の実?を茹でたところ、腹持ちする食べ物だと判明したそうです。

元々雑草で、彼方此方に勝手に生えて居る多年草なので、手軽に入手出来る事から、麦と同じ程の主食となったそうです。


でも、大きな街の地位の高い人々の間では、雑草を食べる事に嫌悪感を持つ人も居るそうです。

主義主張はそれぞれですから、食べる食べないは本人の勝手ですよね。

ただ私は食に貪欲な日本人ですから、何でも食べますよ。

そりゃあ美味しいに越したことはありませんけど、貧乏暮らしも経験済みですから、粗食なら粗食でも構いません。

結婚当初、近くのベーカリーで分けてもらったパンの耳で生活していた情けない時期もありましたしね。


「あんた蛇の獣人なんどって?

なら肉食べるわよね?」

この家の奥さんに聞かれて、そういえば訂正していないと気付きました。

「私は人間…人族ですよ。

雑食ですから何でも食べます……けど、生焼けはご遠慮させていただきたいです」

「おや、人族かい?

珍しいねえ、こんな端っこの村まで来るなんて。

冒険者なのかい?」

「いえ、まだ無職なんです。

冒険者ギルド?とか言うところで登録しようと思ってはいますけど」


アインに聞いたところ、人属の多く住む町などでは、身分証明書が必要なんだそうです。

そりゃあ無職のホームレスが町中をウロウロしていたら不安ですからね。

キチンと仕事に就かないと。


「ああ、それなら隣町にはギルドが有るから、行ったら登録すればいい。

立派な冒険者になって、私らの依頼も受けてくれ」

「お手伝いできることがあれば良いのですが、まずは実力を付けて出直してきます」

「あはははははは!

楽しみに待ってるよ!」


肝っ玉母さんの様な奥さんですが、見た目は二十歳そこそこなので、ギャップがありますねえ。

ご主人さんはそんな奥さんのおしゃべりを、ニコニコと笑って聞いています。

お子さんはさっきから私をジャングルジムに見立てて、よじ登ったり、肩から飛び降りたりしています。

とても暖かい一家ですね。


おしゃべりをしているうちに日が陰って来ました。

ふとした違和感に、家の壁を見ると、来た時より木の隙間が狭くなっている様なのですが、気のせいでしょうか?

「どうしたんだい?」

奥さんに聞かれて、隙間の事を尋ねてみると、呆れ顔をしながらも説明をしてくれました。


どうやら家に使われている木材は【陽のひのき】と言う魔樹まじゅだそうで、名前の通り、お日様の出ている間は引き締まっているそうなのですが、日が陰ると膨張する不思議な樹なのだそうです。

日が暮れたり、太陽が隠れて雨が降ったりする時には、膨張した樹が隙間を無くし、雨風をふせぐそうです。


この樹は魔素を取り込み、引き締まったり膨張したりするそうで、完全に枯れるまでの50年近く、僅かな魔素で膨張を繰り返すそうなのです。

なので森や山で暮らす方々は、この陽の樹で家を建てる事が多いそうなのですけど、町ではプライベートを考慮して、あまり使われないそうです。


そうですよね、お日様の出ている限り、家の中を覗かれ放題なのですから。

住人皆家族、と言う様な考え方の、大らかな人々でないと、とても使う気にならないでしょう。


「通気性もいいし、雨にも丈夫、加工もしやすいし、人気がないから安く手に入る、田舎もんには大助かりの樹なんだけどね。

人に見られて困る様な生き方しなきゃ良いんだよ」

…言いたいことは分かりますが、そう言う問題では無い、とも思います……。


壁が完全に塞がったらご飯の時間です。

丼にご飯を入れて、塩を振り、その上にハーブを刻んで乗せ、ハーブの上にこれでもか!と肉を盛られました。

大食いチャレンジのステーキ丼の様な見た目です。

後は丼に入った木の実のスープと、ごろっとそのまま果物。

豪快且つ大量です。


丼を持ち食べ始めましたけど、肉、肉、肉でなかなかご飯に辿り着けませんでした。、

それでもこの世界に来て初のご飯の食感は、タイ米に近いですけど、ご飯と言うだけで大満足です。


明日出発の前に、お米を手に入れようと心に決めて、ヤマイヌさん家族と夜を過ごしました。


本日よりクリスマスまで毎日投稿致します。

また明日お会いしましょう〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ