温泉回part2
後書きでお知らせがあります
「うぃー。何だか肩の疲れが取れるねぇ」
「お前はまだそんなに年をとっていないだろう。年寄りっぽく見せるもんじゃないぞ」
傍から見れば親子の会話である。その光景を見た残りのメンバーの話題は、よくある女子の会話へと移り…
「ウェイリィさんは気になる男の人なんて居るんですか?」
「ふぇっ!?わ、私ですか?い、いないですよそんな滅法もない!」
今の挙動不審な態度で何かを察したルリ。更に話題を引っ張る。
「ウェイリィさんの抜群のスタイルと整いに整った顔なら誰だってイチコロだって思うんですが…」
「なっなななな。わ、私はそんな…と、整ってなんて…いないですわ」
うわぁ……ウブだなぁ…
この対応っぷりには、ルリもイタチと同じくジト目で見つめてしまう。
「……私、好きな人いる」
「「っ!?」」
いつもならこんな話題に興味を示さないイタチが突然そんな事を口走り、ルリとウェイリィは驚愕する。
「ほ、ほほ本当ですの!?」
「誰ですか!誰が好きなんですかイタチさん!」
2人から肩をガッと掴まれ、前後にブンブンと揺さぶられるイタチ。ジト目のまま口をぽけーっと開けているイタチ。
「……頭がクラクラする」
その言葉にハットした2人、平常心をとりもどし、揺さぶっていた手を離す。
「……それで?イタチさんが好きな人とは誰なんですか?」
「わ、私達が知らない…こ、こここの世界の人だったりして…」
妄想に妄想を膨らませる2人。
しかし、イタチから帰ってきた解答は至って普通の解答だった……。
ウェイリィを除いてだが……。
「ハクリ」
「…………はい?」
たった三文字の言葉で伝えられた何の恥じらいもない応えに、ウェイリィとルリは惚けた顔をする。相変わらずなイタチは眠たげな目のまま…。
「えっと…それは兄妹の好きであって、恋人的な好き…ですの?」
コク。
無表情のまま頷くイタチ。
「…つまりイタチさんは、ハクリ君の事が恋愛的に好き……と?」
コク。
ざっぱぁぁぁぁん!
突如湯船から上がったウェイリィ。
ものすごい形相で浴場を後にする。それを背後から見つめていたルリは……。
「そういえばマスターイタチさんが妹だって誤魔化したって言ってましたね」
ボソッと呟いた後に、ルリも即座に体が動いていた。そしてその終始を、イタチは相変わらずの無表情かつ眠たげな目で見つめていた。
「あーいい湯だねぇ。他に誰もいなくなったから貸切気分だーね」
人が段々と減っていき、今に至っては浴場に1人のハクリ。長湯する方なので、今もまだ久しぶりの温泉を堪能している…………が、この長湯が仇となった。
ドグァァァァアン!
すごい音を立てて開かれた扉。何が起こったのか驚きの眼差しでそこを見ると、そこに立っていたのはタオル1枚に身を包んだウェイリィだった。
「……は、はっ!?お、お前何してーー」
「命あるものを無に帰し、生命無きものを地の獄へと葬り去る我が魔の力よーー」
「ち、ちょっと!?それマジで死ぬやつだよね!?やっちゃった♪レベルじゃないってっ!!」
突然現れたウェイリィは、ハクリの言葉を耳に入れる事を知らず、黙々と人を殺すための魔法を詠唱する。
「ちょ、ちょっと誰かァ!殺されるぅ!?」
「だ、大丈夫ですかマスターってウェイリィさん!?何してんですか!その詠唱の仕方はやばい魔法ですよねっ!?」
そして、詠唱を終えたウェイリィが銃のように手を象り、ハクリへと向ける。
その顔はもうご立腹だと誰でも分かる程だった。
「せっかく…やっと打ち解けてきたと思ったのに……っ!」
何故か目尻に涙を浮かべたウェイリィ。その顔を見て、ハクリは動揺を隠せない。
「ち、違うんですよウェイリィさん!イタチさんとマスターはその…なんと言うか…」
「良いんですルリさん。例えこの男が…あなたの主同然であるこの男が不純異性行為に至ったところで…あなたにはなんの罪もありませんわ」
「いや、話の意図が全く読めないんだが、誰か説明してくれよ……」
「既に我に慈悲なしっ!大人しく召されなさいっ!第二対人ーー」
「第八闇系魔法」
ウェイリィがハクリに向けて殺人魔法を放とうとしたその時、この3人とは別の誰かによってその魔法は解除される。
背後から聞こえた声の主、皆さん知ってのとおり……
「お ま え た ちぃぃい……っ」
「「「っ!?」」」
寒気が走った。先程まで湯船に浸かっていた者、現在進行形で湯船に浸かっている者でさえ鳥肌がたった。
ヤヨイが、殺意が入り混じった笑みを浮かべながらこちらを睨みつけている。
「ち、ちょっとヤヨイ先生?お、俺は何もしてませんよ?今回俺はなにも関与してないからね…ッ!?」
「それを聞いて安心したよ。なるほど、今回はウェイリィ君の差し金か…。事情を聞こう。どうしたのかね?」
「この男…アマタハクリは、事もあろうか妹に手を出そうとしていました。よって、私自ら彼を召してやろうと思ったまでです」
「いやいやいやいや!何だよそれ!そんなこと俺知らねぇからな!」
「そ、そうですよウェイリィさん!ヤヨイ先生!別にマスターはイタチさんにやましい事なんてこれっぽっちもしていませんから!」
「一体どっちを信じれば良いんだ…」
流石のヤヨイも、この件については頭を悩ませた。以前ウェイリィはハクリの方を睨みつけているが、ハクリには何が何だか分からない。
「元々怪しいとは思っていましたが、あなたには呆れました!いくらモテないからって妹に手を出すなんて…そんなの……そんなの…は、ハレンチです!」
「いやだから俺にはこれっぽっちも話が読めてねぇんだよ!……ルリ!説明してくれ!」
「じ、実はですね……かくかくしかじかーー」
そこで聞いたこの状況に至るまでの事柄。
最後まで聞き終えた頃には、ハクリは疲れ果てた顔でため息しかできなかった。
「…あのなぁ、よくよく考えてみろ。それを口にしたのはイタチだよな?それに、イタチは俺が手を出したなんて一言も言ってないだろ?」
「……確かに……」
突然小声になるウェイリィ。
我ながら早とちりをしたと今更になって感づき始める。
「……君はいつもそうやって早とちりをするな」
「うぅ…返す言葉もありません…」
顔を真っ赤にして俯くウェイリィ。
イタチを思っての行動だったのだろうと、分からないでもないが、少し理不尽である。
しかし、ハクリにはそんな事を気にしている暇はない……なぜならーー
「あ、あのさ…皆様方お服を着てくれませんかね…はい」
「……!?」
ヤヨイは服を着ているが、残す2人はそして気づいた…。今までは必死になり気づかなかったが、今自分達は事もあろうか男湯に、タオル1枚で訪れている。
何故かそこで、収まっていた怒りがこみ上げ……てーー
「第二雷系魔法!!!」
即座に放たれた雷の閃光は、真っ直ぐにハクリの元へと向かった。お湯に浸かっているがために威力はやばいくらいで…
「え!えええええっ!?り、理不尽だあぁぁぁっ!」
そしてハクリの意識は水中の中で飛ばされていった。
皆様お久しぶりです!石原レノでございます!
もう夏に入り始めた頃、暑すぎてぶっ倒れそうな私です笑
突然なんですが、明日から6月30日まで、投稿頻度を1~5日に変更したいと思います!
皆様には迷惑をおかけしますが、どうかご了承ください!
 




