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If.七種目の召喚者(イレギュラー)  作者: 石原レノ
始まりNew World
23/313

学園夜内食堂@ヒノン

「じゃあ皆寝ましょうか」

カチッとルリが電気を落とす。ハクリと同じく魔法が使えないルリは、この世界ではアナログな方法で電気を消した。

既に皆眠気が限界に来ていたようで、電気を切るとそれぞれスヤスヤと寝息を立て始めた。

ーその頃ハクリはー

「……眠れねぇ」

少女達が寝ている部屋とは勿論別部屋であるハクリは、隣の部屋から聞こえる寝息のせいで、眠気が吹き飛んでいた。

ここで寝込みを襲わないのはハクリのいい所なのだが、単にビビリなだけである。

「…少し歩くか」

体を起こし、上着を羽織ったハクリ。気づかれないようにそーっとルリの部屋を後にした。


「流石に夜中だと静かだよな…」

しんと静まり返った学園敷地内は、どこも明るい場所はなく、ハクリは自分が思った方へと足を運んでいった。

暗く染まった闇夜がハクリに僅かな恐怖心を植え付ける。

ハラハラする事が好きなハクリは、ある建物の前で足を止めた。

「……ここは」

ハクリの学園のいわゆる食堂と呼ばれる所だ。周りの建物とは一回り小さい構造なのだが、豪華なことに2階まである。

「……まさか開いたりなんて―」

冗談交じりに目の前の扉を押すと、ギギィという音を立てながらゆっくりと扉は開いてしまった。

喉を鳴らし、誰かに引き込まれているかのように中へ足を運ぶ。

ハクリのいる学校はとにかくバカでかく、ハクリ自身何が何処にあるかは定かではないが、食堂くらいは教えてもらいよく通っている。

その食堂が昼時の雰囲気とはうって変わって凄い不気味だった。

「昼とは全く違うな……早く帰って寝よ」

ーカチャンー

ビクッと身体を震わせ、音がした方を向く。この時間は食堂にいる担当の各種族のおばちゃん達はもちろん居ない。さらにはとっくに就寝時間を迎えているために生徒さえも居ないはずだ。

誰もいないはずの食堂から物音が聞こえた。

之だけでハクリの恐怖心と好奇心は一気に最高潮に達したのだった。

「…………」

無言で、そろそろと音がした方へと足を運ぶハクリ。音がしたのは生徒達が食事をする場所。そこが見渡せるような位置に移動し、物陰から様子を伺う。

謎の人影が席に腰掛けて何やらゴソゴソとしていた。

「この世界にもお化けなんているのか……」

「はぁ…」

「!?」

なんとハクリが見ているお化けが喋ったのである。思わず身を完全に隠しきるハクリ。謎のお化けはため息をこぼした後に独り言を言い始めた。

「ダメだなぁ。皆とお話ししたいけど勇気でないや…」

どうやら内気なお化けらしい。何となく気持ちが分かるハクリ。

「……だめだ。同感してしまう自分がいる…泣きそ」

「誰かいるの?」

ガタッと音を立てて驚いたように立ち上がるお化けは、物陰に隠れているハクリの方を向いている。

「(やべぇ(゜ω゜;))」

物音を立てずに立ち去ろうとした時―

「っ!あなたは―」

一瞬にしてハクリの懐へ接近し、なおかつハクリの名前を呼ぶ、猫耳がチャームポイントのメガネをかけた女の子。

「……ヒノン…さん?」

ヒノン・ミルモント。普段は一人教室の隅で本を読んでいる彼女は、大人しい性格で自分から話しかけている所をハクリはまだ見た事がない。

「な、何でここにいるの」

顔をほのかに赤く染めたヒノンは取り直すようにメガネを指で軽く押し上げる。

「いや何か眠れなくて……ヒノンさんは?」

ハクリがそう問いかけると、ヒノンは何故か落ち着いたように息を吐く。

「……私も…眠れなかったから…ここから夜景でも……見ようかと…」

「そ、そっか………じゃあ俺はこれで―」

この場から立ち去ろうとしたハクリ。しかし、ヒノンがそれを拒むかのように袖をつかむ。

「……えーっとヒノンさん?」

「…………嘘」

「……はい?」

「全部聞こえてたの!私の独り言聞いてたんでしょ!」

よっぽど恥ずかしいのか、顔を真っ赤に染めて大声を出すヒノン。

「い、いや何も聞いてないですよ僕は…」

そしてハクリの下手くそ極まりない誤魔化しも意味を成さず、逆にヒノンに自分の行動をばらしていた。

「ーーーーーっ!」

ぷしゅーっとハクリの袖を掴んだまま顔を真っ赤に染めて俯くヒノン。

「……あの〜ヒノンさん?」

「……って」

「へ?」

「早く帰って!」

「は、はいっ!」

怒号混じりの訴えにハクリは颯爽と食堂を後にした。

食堂に残ったのは顔を赤くしたままのヒノン。しゃがみこみ、頭を抱える。

「だめだだめだだめだ……また私あんな事言っちゃった……」

内気な女の子は友達が欲しい……一体誰が決めたラノベのタイトルだろうか……。

「はぁ……一体何だったんだ…」

食堂を出てもなお、寮に向かって走っているハクリであった。

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