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転生したら村人だったので、世界一の村を作ったら大都市になった  作者: レモンティー


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■第一話 人口三十七人の村

目を覚ましたとき、俺は見知らぬ天井を見ていた。

木で組まれた粗末な天井。

隙間から朝の光が差し込んでいる。

「……ここ、どこだ?」

身体を起こす。

ベッドではない。

藁を敷いただけの寝床だった。

「なんだ……これ」

頭が重い。

そして、奇妙な記憶が頭の中に流れ込んできた。

この世界の名前・・・アルバ村。

この身体の名前・・・カイル・アーベル

村の名前。

家族のこと。

そして――。

「……転生したのか?」

俺はしばらく黙り込んだ。

前世では、ごく普通の会社員だった。

特別な才能もなかった。

剣術もできない。

魔法も使えない。

英雄でもなければ貴族でもない。

そして、この世界でも同じだった。

俺は――村人だった。

「……村人か」

正直、少し安心した。

勇者になれと言われるよりはずっといい。

魔王を倒せと言われるよりはるかにいい。

王国を救えと言われるよりも気楽だ。

俺には戦闘能力も魔力もない。

ならば。

「普通に暮らせばいいか」

そう思って家の外へ出た。

そして、村を見渡した。

……。

「…………」

思っていた以上に何もなかった。

家が十軒ほど。

小さな畑。

細い道。

枯れかけた木。

遠くに森。

そして、小さな川。

村人たちが朝から畑仕事をしている。

「おはよう」

「おう、起きたか カイル」

「今日も畑だ」

「今年は雨が少ないからなぁ」

俺は村を歩いた。

しばらく歩いてから、村人の一人に尋ねた。

「この村(アルバ村)って、何人いるんだ?」

「何人って?」

「人口だよ」

「……三十七人だな」

「三十七?」

「そうだ」

俺は絶句した。

三十七人。

それがこの村の人口だった。

老人。

大人。

子供。

合わせて三十七人。

「……少なすぎないか?」

「何がだ?」

「いや……」

前世の感覚では、学校の一クラスより少ない。

これでは村というより集落だ。

しかも問題は人口だけではなかった。

畑を見ていると、さらに問題が見えてきた。

同じ作物を同じ場所で作り続けている。

肥料らしい肥料もない。

水は川から運んでいる。

雨が降らなければ作物が枯れる。

食料を保存する方法も乏しい。

病気になれば薬もない。

そして村人たちは、それを「普通」だと思っていた。

俺は畑の土を手に取った。

「……これ、毎年同じ作物を作ってるの?」

「そうだが?」

「肥料は?」

「肥料?」

「家畜の糞とか」

「畑に撒くのか?」

村人たちは不思議そうな顔をした。

俺は頭を抱えた。

「……なるほど」

この世界では、農業技術がかなり遅れている。

だったら。

「やってみるか」

俺は決めた。

魔法は使えない。

剣も使えない。

でも。

知識ならある。

まず最初にやったのは――井戸だった。

川まで水を汲みに行くのは大変だ。

しかも川の水は、生活排水なども流れ込む。

そこで村の中央近くに井戸を掘った。

最初は村人たちも半信半疑だった。

「本当に水が出るのか?」

「たぶん」

「たぶん?」

「出なかったら……別の場所を掘ろう」

「おいおい」

何日も掘った。

そしてザッ。

土の下から水が湧いた。

「……出た」

村人たちが固まった。

「水だ!」

「井戸から水が出たぞ!」

「川まで行かなくていい!」

村中が大騒ぎになった。

俺は苦笑した。

「いや……井戸なんだけど」

しかし、村人たちにとっては革命だった。

水汲みの時間が減った。

生活用水を確保できるようになった。

家畜にも水を与えやすくなった。

そして俺は次に、畑を変えた。

「この畑、毎年同じ作物を作るのをやめよう」

「どうしてだ?」

「土が疲れるから」

「土が?」

「同じ作物ばかり作ると、土の中の栄養が偏る」

俺は畑をいくつかに分けた。

麦。

豆。

根菜。

そして休ませる畑。

輪作だ。

「豆を植えると、土が良くなる」

「本当に?」

「やってみれば分かる」

さらに家畜の糞や植物の残りを集めた。

堆肥を作った。

「これを畑に入れる」

「……臭いぞ」

「まあ、臭いな」

「本当にこれを?」

「土にとってはご馳走だ」

村人たちは笑った。

だが。

翌年。

収穫量が増えた。

「……増えてる」

「去年より多い」

「麦が余ったぞ」

村人たちが驚いた。

俺も驚いた。

「思ったより効果があるな」

そして余った麦を見て、俺は次のことを考えた。

「保存しよう」

穀物を乾燥させる。

野菜を塩漬けにする。

肉を干す。

燻製にする。

果物を乾燥させる。

冬に備えて食料を蓄える。

今までは、収穫した食料を食べきれなければ腐らせていた。

それを変えた。

「冬に食料が足りなくなるから苦しいんだ」

「だから保存する」

村人たちは少しずつ理解していった。

さらに俺は、川から水を引いた。

「水路を作ろう」

「畑まで?」

「ああ」

「そんなことできるのか?」

「傾斜を利用すればできる」

木と土を使って簡単な水路を作った。

川の水が畑へ流れ込む。

「水が来た!」

「これで雨が少なくても作物を育てられる!」

村人たちの目が変わっていった。

そしてある日。

村長が俺を呼び出した。

「カイル お前に頼みがある」

「なんです?」

「次の村長にならないか?」

「…………」

俺は黙った。

「いや、待ってください」

「何だ?」

「俺はただ、生活を楽にしたかっただけですよ」

「だから村長に向いている」

「どうしてそうなるんですか?」

村長は笑った。

「この村の人口は三十七人だ」

「はい」

「だが、お前が来てから村が変わった」

「……」

「なら、村長になればもっと変えられるだろう」

俺は空を見上げた。

村長。

悪くない。

王様になるつもりなんてない。

英雄になるつもりもない。

ただ。

この小さな村を、もう少し住みやすくしたい。

「……分かりました」

こうして俺は。

人口三十七人のアルバ村という小さな村の村長になった。

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