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第29話「港町の漁場を荒らす巨大クラーケン。〜塩分濃度を操作(浸透圧ショック)して、極上の海鮮丼の具にしてやった〜」

空飛ぶキャンピングカーでの快適な空の旅を満喫すること数時間。

俺とクレアは、大陸の南端に位置する活気ある港町『サウスポート』に到着した。


「潮の香りがしますね、レン様! 海です、海ですよ!」

「ああ。今日は新鮮な魚介を山ほど乗せた『海鮮丼』を食うぞ。醤油とワサビ(に似た香辛料)はすでに錬成済みだからな」


俺たちはキャンピングカーを町外れの空き地に停め(もちろんステルス迷彩機能つきだ)、意気揚々と魚市場へと向かった。

しかし――。


「……なんか、活気がないな」

「はい……。お魚も、全然並んでいませんね」


市場の生け簀はどこも空っぽで、漁師たちは頭を抱えて座り込んでいた。

たまらず、近くにいた筋骨隆々の漁師のおっさんに声をかける。


「すいません、新鮮な魚はどこで買えますか?」

「ああ? 見りゃわかんだろ、今日はボウズ(収穫ゼロ)だ。いや、今日だけじゃねえ。ここ一週間、まともな漁に出られてねえんだよ」


おっさんの話によると、数日前から近海に『暴食の海魔クラーケン』というBランク上位の巨大なイカの魔物が住み着き、網を破るわ、魚を根こそぎ食い尽くすわで、港町は干上がってしまっているらしい。

討伐隊を出そうにも、相手は海の中。船を近づければ巨大な触手で沈められてしまうため、手が出せないのだという。


「海鮮丼が……食えない、だと?」

俺はギリッと歯を食いしばった。


スローライフにおいて、食事の妥協は一切許されない。

俺の海鮮丼を邪魔するなら、そいつはフェンリルと同じ「ただの害虫(食材)」だ。


「クレア、車に戻るぞ。ちょっとイカ釣りに行ってくる」

「は、はいっ! レン様のお顔がマジです!」


◆ ◆ ◆


数分後。

俺たちの乗るシルバーのキャンピングカーは、港町の近海、波打つ海面から数メートルの高さをホバー移動していた。


「この辺りだな。ソナー(魔力探知)に巨大な反応がある」

『グルルルルォォォォ……ッ!!』


俺が海面を見下ろした直後。

海が大きく盛り上がり、キャンピングカーの数倍はあろうかという巨大なイカのバケモノ――クラーケンが姿を現した。

太い触手がムチのようにしなり、空中にいる俺たちの車を叩き落とそうと迫ってくる。


「きゃあっ! レ、レン様! 触手が!」

「落ち着け。ただのタコ(イカだけど)の足だ」


俺は運転席の窓を開け、海面に向かって右手を突き出した。


「土魔法の本質は、大地とそこに含まれる『ミネラル』の操作だ」


海に溶け込んでいる無数の成分。その中で最も多いのは『塩化ナトリウム』、つまり塩である。塩は立派な鉱物(岩塩)の一種だ。

俺はクラーケンの周囲半径100メートルの海水から、瞬時に「塩分」だけを抽出し、空中に巨大な塩の結晶として固定化した。


「【土魔法・塩分抽出ソルト・エクストラクト】からの、【浸透圧ショック】だ」


「ギ、ギィィィィィッ!?」


その瞬間、クラーケンの動きがピタリと止まり、苦悶の悲鳴を上げた。

無理もない。

海の生き物の細胞は、海水の塩分濃度に適応している。そこへ突然、周囲の海水が『純度100%の真水』に変わったらどうなるか。

細胞の内側と外側で塩分濃度に極端な差が生まれ、それを均一にしようと大量の真水がクラーケンの細胞内に一気に流れ込むのだ。


「ぷ、ぷぎゅるるるるっ!?」

細胞がパンパンに膨れ上がり、クラーケンは完全に白目を剥いて海面にプカプカと浮き上がった。

理科の授業で習う『浸透圧』の恐ろしさである。


「よし、これで下処理(塩抜き)は完了だ。あとは――」

俺は浮き上がったクラーケンの眉間(?)めがけて、抽出した巨大な塩の塊を弾丸のように射出した。


ズガァァァァァンッ!!


「ギョベェッ……」

塩の塊がクラーケンの急所を正確に撃ち抜き、巨大な海魔はあっさりと息絶えた。


「ふぅ、大漁大漁。クレア、新鮮なイカが手に入ったぞ。イカ刺しと、イカリングの唐揚げだな」

「れ、レン様……。魔法で海をお水(真水)に変えてしまうなんて、神様でもしませんよ……?」

「ただの理科の実験だよ」


俺はクラーケンの巨体を亜空間収納ポーチに放り込み、港町へと車を戻した。


その後、クラーケンがいなくなった海で漁師たちがいそいそと網を引き、大量の魚(マグロやサーモン似の高級魚)をタダで譲ってくれたのは言うまでもない。


その日の夕食。

キャンピングカーのダイニングテーブルには、炊きたての白米の上に、新鮮な魚介と透き通るようなクラーケンの刺身が山のように乗った『究極の海鮮丼』が鎮座していた。


「〜〜〜ッ! レン様の手作りお醤油と、このお魚の脂が合わさって、ほっぺたが落ちそうですぅぅ!」

「ああ、美味いな。やっぱりイカは新鮮なうちに限る」


防壁を直せずに泣いている元の王国など知る由もなく。

俺たちは海を眺めながら、極上の海鮮丼で腹を満たし、優雅な空のドライブ(スローライフ)をさらに満喫するのだった。

お読みいただきありがとうございます!


「クラーケンが出た? 浸透圧でふやかして海鮮丼の具にしました」

塩分濃度を操作するという、土魔法(理系知識)ならではのえげつない倒し方でした。

新鮮なイカ刺しと海鮮丼、深夜に書いている作者も飯テロのダメージを受けています(笑)。


【★読者の皆様へお願い★】

現在、本作は「ネトコン14」および「春チャレンジ」に参加しております!

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