第1話 そうだ、税金から逃げよう!
――結論から言おう。異世界は、税金地獄だった。
剣と魔法のファンタジーに『勇者』として召喚されて早2週間。俺――金好円は、衝撃的な事実に気付いてしまったのだ。
この世界では、冒険者がモンスターを倒すと報酬がもらえる。
ここまではいい。命を張ってるんだ、対価を受け取るのは当然の権利。
――問題はその先だ。
報酬の4割。
ギルドを通して国に持っていかれるのだ。
4割だぞ、4割! ショトク税、冒険者ホケン料、ギルドネンキン、チイキフッコウ税――名前だけは立派な項目がズラリと並ぶ報酬明細。
さらにだ。
武器を買えば1割取られる。宿に泊まっても1割。命を守るポーションにすら容赦はない。
おまけにホケン料は毎月きっちり引かれるくせに、大怪我してヒーラーのところに行くと『この治療は適用外です』とか抜かしやがる。
バカじゃねーの? 何のためのホケンだよ。完全に払い損じゃねーかッ!
しかもな? 去年たくさん稼いだ冒険者には、翌年ジュウミン税の請求が来やがる。今年の稼ぎがゼロでも関係ないんだと。
引退レベルの怪我と引き換えに多額の報酬を得たやつの中には、翌年のそれが払えなくて借金生活、なんてのも珍しくないらしい。
なんだこの制度、考えたヤツ絶対頭おかしいだろ。
さらに、最悪なのはこれだ。
『累進課税』
稼ぐほど税率が上がって、サボってる奴と大して手取りが変わらなくなっていく。頑張った者が一番損をするシステム。
……舐めんなっ!!!!!
前世でも大っ嫌いだったよ、これ。思い出すだけで胃が痛くなる。
中小企業の営業マンとして毎日走り回って、手取り24万。控除欄のほうが支給欄より長い明細を毎月睨んでいた。
んで、たまに競馬で1発当てたら確定申告で持っていかれるのに、負けた分は自業自得。何の保証もない。
"勝ったら税金、負けたら自腹"。お上の邪智暴虐っぷりがハンパないよな日本も。
そうそう、そんな俺と言えば、稼ぎも少ないのに株やらFXやらで500万近く溶かしたり、消費者金融に手を出したりで、そのまま過労とストレスによる心臓発作でおっ死んだんだった。
――で、気付いたら異世界に「勇者」として転生して、今ここ。
25歳くらいの若い身体にチート級の戦闘力。夢にまで見たファンタジーライフ。
そりゃ最初はテンションもぶち上がったさ。
「異世界だッ! あらたな伝説のはじまりだァアアアア!!!!」
ってな。
そう叫んだのも束の間。ギルドに登録して最初の報酬明細を見た瞬間、俺の華やかな冒険者生活の夢は打ち砕かれたのだった。
あ、そうだ。つい、先日も許せんことがありまして……
特別指定モンスター、Aランクのネームド『災厄の黒竜グラヴァス』を討伐してきたんだ。
まぁ仮にも俺は『勇者』ですから? ありえんチート級の力を持ってたもんで、戦闘自体はぶっちゃけ楽勝だったし、ギルドに戻ったら特別討伐ボーナスも貰えて超ハッピー!!!
……はい。察しのいい皆さんならもうお気づきかと思いますが、
当然、ここからも引かれました! それはもうがっつり。
街を焼き尽くすレベルのモンスターを倒したんだぜ? 俺。
そんな英雄から普通容赦なく税金なんて取れますかねぇ? はぁーほんと、信じられませんわ!
手元に残ったボーナスを見た瞬間、呆れて静かに悟ったね。
ああ――この世界、前世(日本)とまったく同じなんだ、と。
ならば、すべきことは単純にして明快。
「――そうだ、税金から逃げよう!」
てなわけで、俺はこの剣と魔法のファンタジー世界で、脱税してやることに決めたのだ!!!
そうと決まればまずは"アレ"を探さないとな。この世界にもきっとあるはずだから……




