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22.2 葛藤はいつだって

「おはよう、来ちゃった」

姿を現したのはマナだった。昨日は夜勤で遅くまで仕事をしていたせいか、家には帰らずにGIAの施設で寝泊まりさせてもらっていた。

このまま学校へ行こうと考えていたが制服がないことに気がつく。

仕方がないか。


「道久がここにいるって聞いたからちょっと様子を見に」

マナはもちろん制服に着替え終えている。ちゃんと俺よりしっかりとした生活ができているようだ。


「すまん、学校なんだが先に行っていてくれ。一度着替えに戻る必要もあるし。それと、もう少し目を瞑っていたいような…」


「道久、私もお仕事頼まれたんだ。道久を学校まで連れていくミッションなんだけど」


「え、ええ…」

明らかに嫌そうな声がマナにダダ漏れだった。

一体誰だよ。マナを使って学校に行かせるやつなんて。

マナじゃなかったら、ただこねれたのに。


「何?私じゃ不満なの?はやくいくわよ。服はあるから」


「は〜い、準備がいいようで。ありがとうございます」


「ねぇ、そんなに嫌そうなら私が着替えさせてあげる」

マナの爆弾発言によって場の雰囲気が一気に凍りつく。

周りにはほかの人も、多数いるというのに、マナはそれをお構いなしに切り込んできた。


「!、、、、!!お前、ちょっ!!」これには流石に動揺してしまった。聞いてきた本人は何がおかしいのかさっぱりわかっていないようで…


「何?なんか変なこといった?理央さんはいつもやってあげてるんじゃ…」


その口が最後まで話す前に俺は慌ててその口を塞いだ。

「いつもなわけないだろ!、。!?!!、!あれは怪我していたからもあって、仕方がなく理央に手伝ってもらっただけだって」


「そうなのか…。それじゃあ、私じゃ不満なのか?」


「?、あーーもう違うって。別に誰かってことじゃなくて。その…恥ずかしいからなきまってるだろ!、マナもこんな同世代の男の服を着替えさせるなんて恥ずかしいだろ。」


「…//./,..././////!!!ぷしゅ〜…。そうです」

マナもようやく気がついたのか、顔を赤らめて恥ずかしいそうに顔を手で隠してしまった。

「それじゃあ、はい。これ制服」


マナからきごちなく制服を受け取ると急いで着替えるために…別室へ向かった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「あ、おかえり」

戻ってくると、マナはきごちなく言葉を交わした。


「その、マナ。別に気にしてないから。あんまりぎこちなくされるのも困る」


「う…それはそれでなんか…。でも、」

がらりと変わり、彼女の表情はむすっとしていた。

なんか、一緒に登校するのが気まずい。

ひとまず外には出てみたが、隣で歩くマナは何も話さない。まるで自分を避けているように。


プルルルル…、プルルルル…、プルルルル…、プルルルル…、プルルルル…、、プルルルル…、

「道久でないの?、その電話」


「う、ん…、こっちは個人用の電話だし、べつにいいかなって…。」


「でも、ほら名前でてるじゃん。別に、迷惑電話じゃないんだし…」

マナの視線からでもわかるスマホに映し出された苗字。それは道久とおなじものだった。

別に出たくなくてそうしているわけじゃない。出ようと思っていても…その指先に神経がとっていないかのように指先は動こうとしてくれなかった。


「マナは先に帰ってて、ちょっと取り込むかもしれないから」

せめてのものだと思って、仕方がなく先にマナを帰すことにした。一人っきりじゃないと気持ちの整理がつかない。そんな状況に今、いや、いつも悩まされている。好きとか嫌いとか、そういう問題ではなかった。別に父さんのことは好きでも嫌いでもない。


身内同士の内密な話なんて他人にきかれるのはあまり好ましくない。それに、たまには親子で話す時間を作ってあげないと…よね?

「うん、わかった。それじゃあ。」


「気を付けて、マナ…」

マナの後ろ姿を見つめ、遠く、見えなくなったところでもう一度画面をみる。

写真とかは一切なく、名前だけが映っている。


道久は鳴り続けるスマホに嫌気がさしたのか、画面をスライドさせて通話のボタンに手をかけた。

「道久だけど、どうかしたか、いつもはこっちの携帯にはかけてこないだろ…。かけられないはずでは?」


電話の相手はしばらくの沈黙があった。いつもはかけてこないから気まずいのだろうか。いや、そんなことあの人には一切関係ないだろう。だってなんでも一人で行動してきた人だ。多少の間があったとしても大した変化はあるわけない。


「…。正面だ」


「…え?」

通話は聞き返す前に切られていた。

そして、今。目の前にいる男性。その男がいつのまにか目の前に立っていた。


「こちらの方が安全性が高い。仕事用の通話は軍と協力関係をむすんでしまった以上安全ではなくなった」


一瞬、頭の上にはてなマークがとんだが、理解するにはあまり時間がかからなかった。

「…。わかった。そうじゃないと連絡なんてしてこないよな…。それで何をしにこられたのですか?わざわざ俺に。絵里さんか凛を通してもよかったんじゃ…よかったのではないですか?」


「まぁ、そうかもしれないな道久。あの二人なら信用に値する」


「それ以上に、なにか問題でも?あるみたいですね」

父の表情そのものは変わらないが、この長い付き合いだはなんとなく察してしまう。


「簡潔に言う。組織内にスパイがいる。まだ見つかっていないそうだ」


(ふーん…。一瞬、驚きがあったがこんなことにいちいち驚ていていられない)それと、父さんの前ではそんな表情なんて晒したくない。

「そのために、わざわざやってこられたと」


「そうなるな。もっと驚くかと思ったが、そうでもないか…。」


スパイ…。組織から情報が抜かれている。この前の待ち伏せの件など、心当たりがないわけではない。が、実態についてはあまり調べようとしてこなかったことが裏目に出たのかもしれない。

「それで、自分になにか関連があると」


「まぁ、そういうことだ。何者かがデータベース上に侵入した疑いがある。そしてそれに対して侵入できるのは内部コンピューターのみ。外部からバレずに内部に侵入したという可能性は考えられない」

「つまり、身内に紛れるスパイがやった犯行とみて間違いないと今の段階では踏んでいる。そして、盗まれたデータ、侵入者が閲覧したと思われるファイル、そのなかにお前のデータがあった。」


「俺の情報が抜かれている…、いったいそれは…」心当たりなんて…。


パーン、 

パン。

パン。

耳に透き通る破裂音に似たものの何か、発射音ともいうべきか。それは急に現れた。

「おい、ふせろ」


実の父に肩を強く握りしめられそのまま地面に思いっきり伏せた。最初に聞いた一発は頭上を通過して空を切った。

すかさず5,6発の弾丸がこちらに向かってくるのを確認した。相手は4名、でも何かおかしい。一人、一人、いや。あれはもう人間なのか…。四足歩行であるく怪物。俺にはそう見えた。

いったいどこから…。視線では360度あたり全体を見渡す。黒いワゴン車、運転手を含めてちょうど4人乗れるサイズ。あれか…。

ひとまず…遮蔽物か何かの影に…


「道久、ひとまず遮蔽物に。体制をたてなおす」


その声をきいてすぐに目の前の横たわる車の背後に飛び込む。弾丸の一つや二つ、外してもいいような弾幕。あたり一面が吹き飛び、残骸が散乱していた。

(相手は見た目とは裏腹に素人なのか?いやしかし…)


敵は圧倒的に近距離戦特化、それに加えて装甲か?かなりの厚みがあるアーマーを、備えている。ここまで普通対策してくるかというほどの近接での強襲。こちらの手の内はもうすでにバレている。

意図的に狙ったものであることは間違いない。あきらかにこちらの対策を練ってきたに違いない。(情報が流れたのはここか)


「父さん、いや総司令。相手はあきらかに俺狙いらしい。」


「そんなのわかってる。だからってわたしがきたのだから。想定内だ。」


「それはそれは。準備とタイミングがいいことで」


「父を恨むなら目の前のことを処理してからだ。私が隙を作る。接合部に打撃を与えてくれればそれでいい」

そう言って、こちらに拳銃を投げ渡してくる。


「弾丸は6発。フルだな」


「薬莢回収はあまり手間をかけたくない。無駄撃ちするなよ」


「わかったって、この国の悪いところだろ」


弾幕の雨の中、一瞬だけの弾倉の切り替え。敵の装填、それがコンマ数秒のタイミングで

…。…揃った。


発射と同時に手元から響き渡る轟音は、空気の層を突き破り一直線に放たれた。

現在目視で把握できる四名、そのうちの後方二名に照準を定めて。


「総監、あとは頼みますよ」

自らが放った弾丸に期待と自信をこめ、あとは父さん、総司令官に全てを投げる。別に無茶を言っているわけではない。これぐらいはやってもらわないと困るというメッセージに近いものだ。


その言葉の意味を理解しているのか、はたまた相当の自信があるのか。言葉を発すると同時に姿はさっきまでいたところにはおらず、すでに弾幕が止んだ俺たちと敵との交戦領域に飛び出していた。


「道久、その言葉は聞かされるまでもない」

いくら全身を覆ていたとしても、手と胴体、頭と首のような接合部には可動域が求められ全てが鋼鉄でおおわれることはほぼない。とりわけ、この動き、この銃の不慣れさ、相手との装備さは目に見るがままに歴然だが、経験の差と本来の純粋な肉体ということを考えれば圧倒的な差があることは分かりきっていた。

敵の視野角では入りきらないであろう機体下方からの頭部と胴体との接合部への掴み、そして勢いがついてそのまま地面へと倒しこむ。

敵2名は瞬く間にバランスを崩し、イメージ通り、計算通りに倒れこんだ。

そして残りはチタン弾を全員に一発ずつぶち込んだらそれで終わりだった。


父はすました顔で周囲の状況を確認したあと、本部と連絡を取っているのか通話をしている。

あいにく周りには敵意らしき人物は他には現れず一息つくことができた。

結果としてはこちらの圧勝。とくに手こずることはない。

たとえ俺一人だったとしても逃げるだけならばできていたのかもしれなかったが、総監のタイミングがよかったのか現地で始末することができた。

(それにしてもすさまじい力だ。あの肉体は)


「総監、ご苦労様です」


「ああ、お疲れ。結果的に私が直接きてよかったか…」


「そうなりましたね…」

今の自分だけでは成し遂げられなかったことは、正直しかたがないとおもっている。それが今の現実だ。だが、

「容疑者を全員皆殺しにする必要はなかったのではありませんか?」

俺自身は銃弾を当てたが殺してまではしていない。だが、最後。総監はその場の全員にとどめをさした。

「容疑者からなにか情報を聞き出すことぐらいできたのでは…」

自らを狙ったやつらに有効価値があったか、…。


「あの素人の動き。相手は殺しの理由なんてものは知っていない。おおかた、何かのつけがめぐり合って仕事の任務遂行が唯一の手段だったのだろう」


「しかし、…それはあくまで総監の架空の話であって」


その言葉を遮るかのよう、総監はピクリとも動かない死体の頭部のヘルメットを足でけり上げた。ヘルメットの中から出てきた血だらけの人の頭部。

外見はよくみる一般人。とくに闇組織などに繋がりが感じ取られないごく普通の風貌。しかし、その人には口がなかった。正確に言うと口が顔の一部のように一つのものとしてつながっていた。今の医療技術ではもうどうしようもない。まるで人体実験の副産物のように。敵の悪魔とも思える思考が読み取れた。


「結果的にはこういうことだ。こいつらは何も情報なんてものはくれりゃしない。ただの雇われだ。それにこんな裏に潜む悪魔が情報を易々と渡してくれることなんてありゃしない。

道久、それか、まさかこいつらに同情したのか?」

総監の言葉は鋭い言及にかわった。


一瞬言葉に詰まりそうになるが、こういう状況に何度も慣れている。父さんから何度も注意されてきた。それはもう洗脳のように。

「いいえ、有効的価値が見分けられていなかっただけです」


「そうか…」

総監はそう一言だけ返した。

ピりついた空気がまたもや漂ってしまった。

「道久、あの”死神”は特例中の特例。普通はあんなもの殺してしまうのがこの組織の常識だ。昔はともかく、今の時期でそんな思考は通用すると思わないことだな」


まるで自分の心を見透かすように総監は付け足した。

たしかに俺は、前科者だ。

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