第91話 メイド三姉妹
タウンハウスに戻る前に、さっそくレイを伴って彼女が一時的に滞在していた宿泊施設に立ち寄り、レイの言っていた妹二人と合流した。
「改めて自己紹介させていただきます、ご主人様。私はレイ・ブローニュと申します」
薄い青髪で高身長の長女、レイは改めて深々と頭を下げて挨拶をした。
「姉さんだけでなく、私たちまで雇っていただけるとは、恐悦至極に存じます。私、ユナ・ブローニュはこのご恩に報いるべく努める所存です」
黄緑色の髪をサイドテールにした、背丈がリクレールとほぼ同じくらいの次女、ユナがテキパキとした所作で頭を下げた。
「私は、メル・ブローニュです! まだメイドになったばかりですけどいっぱい頑張ります!」
最後に桃色髪の短髪で、少しだけリクレールよりも身長が低い三女、メルがはきはきとした態度で挨拶をした。
タウンハウスに戻る道中でお互いの自己紹介がてら3人の出自を聞いてみると、リクレールが予想した通り彼女たちは元々とある伯爵家の令嬢三姉妹だったが、その伯爵家がある日突然没落して、一家離散になってしまったそうだ。
長女のレイは妹たちを養うべく使用人として働くことを決意し、必死で労働したことで今の技術を身に着けるに至ったが、そんな姉だけに苦労させるわけにはいかないと、妹たちも同じ使用人として働き始めたのだった。
「先ほどご主人さまには、以前のご主人様のお話をしましたが……私たちは元々その方に望んでお仕えしていたわけではありませんでした」
「初めに仕えていたご主人様は厳しい方ではありましたが公正でした。しかし、ご高齢だったため昨年天に召されました。そのあと家を継いだのが、初めのご主人様の甥にあたる方で…………その、前々からよくない話は聞いていたのですが、爵位を得たことで我が物顔で家を私物化し、私たちにも手を出そうとしたのです」
「姉さんたちがあんな金の亡者の毒牙にかかるなんて、絶対に許せなかった!」
「そっか……貴族の代替わりはどこも大変なんだな」
金の亡者と聞いて、リクレールは何となく、現在北方地方に買い出しに行っているガムランの顔が思い浮かんだが、彼の奥さんはとてもおっかない人だと聞いたことがあるので、女性関係でこじれることはないだろうなと思い直した。
そんなこんなで、夕方になる直前にタウンハウスに戻ってきたリクレールだったが、玄関の前に何やら神妙な顔をしたヴィクトワーレが立っているのが見えた。
「む、やっと帰ってきたわねリク」
「あれ、トワ姉どうしたの玄関の前で? 鍵が開かないとか?」
「リクあなた、エレノアさんになんて格好を…………って、その三人のメイドはどこから連れてきたの!?」
「どこからって……九花亭で雇ってきたんだけど、それがどうかした? っていうかエレノアさんに何かあった?」
「ねえリク……ひょっとして、メイド服に興奮する癖とかあるの?」
「はい!? なんでそうなるの!?」
突然ヴィクトワーレから意味不明なことを言われて、リクレールは大いに困惑した。
雇ったばかりのメイド三姉妹も、先ほど話していたことがことだけに、少しだけ不安な表情を浮かべていた。
「と、とにかく詳しい話は中で聞くから! いったん家に入ろうよ!」
「あ、ちょっとリク!?」
果たしてリクレールが玄関の扉を開けると、そこにはあまりにも想定外のものが待ち受けていた。




