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聖剣を継げなかった少年は、魔剣と契りて暴君を志  作者: 南木
第3章 ミュレーズ家からの招待状
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第68話 大儲け!

 あまりの変わりように、シャルンホルストも目の前の紳士然とした人物がガムランだとはにわかに信じられない様子だった。


「そ、そうか……痩せてよかったな。今の見た目のほうが有能そうに見えるぞ」

「はっはっは、お褒めにあずかり光栄でございますな。ですがシャルンホルスト様、某はまだまだ痩せますぞ! なんならこの身が朽ち果てるまでは!」

「さすがにもう十分じゃないかな……とりあえず、詳しい収支を教えてくれるかな」

「はっリクレール様! 取引額はこちらの書類にまとめましたぞ! 某的には見るだけで笑いが止まりませぬ!」


 リクレールはガムランから書類を受け取り、取引結果を一通り眺めたが…………


「お金って……こんなに簡単に儲かるものなんだ」

「俺も見ていいか? どれどれ…………」

「へぇ……木綿と絹って、こんなに高く売れるのね」


 リクレールは商人ではないので、品物を遠くに運ぶだけでどれくらいの儲けが出るのかいまいちピンと来ていなかったが、書類に記載された取引後の儲け額を見て思わず感嘆してしまった。

 オクシタニア地方では穀物が育ちにくい反面、代わりに綿花や桑を大量に作付けしており、服の素材となる繊維類が比較的安価に調達できた。

 これに加え、服を染めるための良質な染料――――藍や紅、紫根、緑土も西帝国でしか産出しないので、繊維と合わせて東帝国の市場に卸すことで、仕入れ値の3~5倍というとんでもない利益を生み出したのだった。

 帝都アルクロニスは日々人口が増大し続けており、日用品の価格高騰がとどまることを知らず、特に服の原料は職人たちからすれば喉から手が出るほど欲しかっただろうから、アルトイリス家行商団は彼らにとってまさに天の恵みと言ってよかっただろう。

 また、繊維や染料だけでなく、少量ではあるが、片っ端からかき集めるようにして仕入れたダイヤモンドの原石が、仕入れ値の約20倍近い価格で売れたため…………交易品を仕入れるために使った軍資金は、最終的に5倍近い金額が返ってくることとなった。

 手伝ってくれたゼルモスとカドマー兄妹に割合で手数料マージンを支払う必要があるが、それを差し引いても尋常ではない儲け額であった。


「すげぇな……士官学校じゃ金の稼ぎ方なんて教わらないから、行商がこんなに儲かるものだったとは知らなかった」

「とりあえず、これだけあればしばらくはお金の心配はいらないかな? とはいっても、農地の拡張進めたらあっという間になくなっちゃいそうだけど」

「リクレール様、勘違いしてはなりませんぞ! この儲けは、まだ始まりに過ぎませぬ!」

「えっ?」

「売買の傍ら市場の価格を調査いたしましたが、木材の価格が大幅に高騰しております。どうやら、建築や武器製造の需要に輸送による供給が追い付いていないようですな。幸い、北に5日ほどの地方に木材の供給地がございますので、ひとっ走りして木材を大量に仕入れてまいりますぞ! 某が戻るころには、リクレール様のご用事も終わっていることでしょう!」

「そ……そうか。ガムランさんの手腕に任せるよ」

「にょっほっほ、お任せくだされ!」


 すでに十分な量の軍資金を手に入れたというのに、ガムランはまだまだ増やす気満々のようだった。

 リクレールは少々嫌な予感がしたが、とりあえず増やした軍資金の半分をガムランに預け、さらなる儲けに期待することにした。

 張りきったガムランは、次の日の朝にはドワーフの兄妹やコンクレイユ家騎士団の一部を護衛に借りて、意気揚々と木材の仕入れに向かっていったのであった。


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