第448話 アマンディの攻城戦 5
そしていよいよ、港町アマンディ攻略作戦が開始された。
初めのうち、アルトイリス軍3000人は、北、中央、南と三方向から城塞に迫るように動き、西側が完全に海に面しているアマンディを陸上三方向から攻撃する正攻法を取るように見せた。
アルトイリス軍の最前列にいる兵士たちは、ここ数日の間に急いで森林を伐採して用意した丸太を縦に並べて束ねた木の板に、戦いでボロボロになって使い物にならなくなった盾を雑に張り付けた、急造の可動式防護壁を必死に押しながら、スコーピオンのボルトを防ぎながら前進し始める。
対するアマンディの守備隊も、500人ほどの守備兵をおおよその数で3分割し、それぞれ城壁に配置してアルトイリス軍を迎え撃った。
「あのような粗雑な防護壁では、我らのスコーピオンから身を隠すことなどできぬ。各自、射程に入り次第発射せよ!」
守備隊長のモルジヴは、中央の防衛塔から各部隊に指示を出している。
彼の指示で、3基のスコーピオンが唸りを上げ、次々とボルトを射出し、そのうちのいくつかが防護壁に突き刺さって、乾いた音を立てていた。
「ふふっ、相手の将はそれほど防衛戦が上手ではないようね。防衛兵器はしっかり射程の奥深くまで待たないと、敵に有効射程を教えてしまうし、効果も低いわ。まあ、これが魔族のような突撃一辺倒の軍なら話は違うかもしれないけど」
馬に跨って戦場を俯瞰するウルスラは、そう言って不敵な笑みを浮かべる。
油断は禁物であるが、やはり守備側の部隊は本格的な防衛戦の経験が乏しいようで、せっかくの兵器を有効活用できているとは言い難かった。
「今よ、リクレール君、合図を」
「はいっ!」
交渉から戻ってきたリクレールは、懐からホイッスルを取り出し、甲高い音で味方に合図を送る。
その合図とともに、サンシールがブレヴァン軍の捕虜たちにゴーサインを出した。
「さあ諸君、行け! 自由を勝ち取れ!」
『おーっ!!』
武器を持たず、土嚢を担いだ元ブレヴァン軍の兵士たちは、サンシールの合図とともに城塞の最南端に向って一斉にダッシュする。
それを見た南側の守備兵たちは驚愕し、必死にスコーピオンを巻き上げてボルトを発射するとともに、弓やクロスボウを持つ兵は必死に矢を浴びせかけたが、なにせ数が数なので、全く撃退出来る気がしない。
「た、隊長っ! 大変です、南側の城壁に大勢の敵兵が殺到しています!」
「なんだと……ならばスコーピオンを南側優先で狙わせろ!」
「し、しかし、あの位置では……南側の1台以外は届きません! ほかの城壁にいる弓兵を南側に回してください!」
「だ……ダメだっ! そのようなことをしたら、他の城壁に接近されてしまうぞ! とにかく、手の空いている者は弓が持てなくても石でもなんでも投げつけろ!」
モルジヴが気付いた時にはすでに手遅れだった。
元ブレヴァン軍の捕虜たちの大半はボルトや矢をかいくぐって濠まで到達すると、土を詰め込んだ麻袋を次々に投げ込んでいく。
それらはあっという間に濠を埋め、正午になる頃には濠は埋まってしまった。
足場が十分になったと判断したウルスラは、満を持して破城槌に前進命令を出した。
「あのスコーピオンがある塔に向って前進! 根元から崩してやりなさい!」
「しかしリク、この短期間によく破城槌を用意できたな」
「本当は帝都の攻略に備えて発注したんだけどね……無駄にならなくてよかったよ」
頑丈な屋根に、両側面に4輪ずつの車輪、そして先端が金属に覆われた太い丸太が吊り下げられた破城槌が、大勢の兵士たちの手で押されてゆく。
帝都無血開城で使い道がなくなりかけた攻城兵器は、新たな敵を得て獰猛に進んでいった。




