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おとぎ話


「先生、どうして私たちは前世の記憶を持って生まれてくるんでしょう」

 男は、カルテから視線をずらし、少女に視線を移す。


「どうしたんですか?いきなり。」


「私は前世の記憶のせいで時々、混乱しちゃうんです。今の常識と昔の常識って違ったりするし、考え方が古いって、言われるんですよ!

やっぱり言い伝え通り、神様の祝福に関連してるとは思うんですけど」


ははっ、と男が笑った。


少し考えるように手を顎にあてて沈黙した。


「これは、僕の個人的な考えなんですけどね。僕たちは、呼吸と同じように前世の記憶を持って、当然のようにそれを受け入れて、生きています。

もちろん、あなたみたいに、すんなり受け入れられない人もいますけどね。


 自分ではない人間の記憶なんて持ってきたら、混乱しますよ。普通。 あたりまえです。


おそらく、いまの人は類は、記憶の処理方法が進化したのではないかと。頭のなかにたくさんの本があって、パラパラと読んでいく処理方法なんですよ。前世の記憶をもつ、というより見てる感覚かな。

けど、ほら、君みたいに記憶ではなく、感情までも混濁してしまう人がいるんです。


そういう人は、前世の記憶に何らかの意義があるのかもしれません。その人たちのための、前世の記憶であり、それこそ神の祝福なのでしょう。」



ちらりと男が、視線を向けた先には、絵本があった。


納得しない顔で少女も視線を向ける。


「早く出会ってくれればいいのにね」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 むかしむかし、あるところに神に愛された少女がおりました。

少女が道を歩くと、どんなに萎れていた花や草も生気を吹き替えしました。

少女が手入れをした畑は、必ず豊作になりました。

少女が、手当てをするとどんな傷もたちまち治りました。

少女は、神のいとし子とされ、人々に尊ばれておりました。

そんな少女には、愛しい恋人がおりました。

町一番の力持ちで気立てのいい青年です。


ある日、少女の噂を聞きつけた王様が、少女を城に呼び寄せました。少女は、言うとおり王都に向かいました。もちろん青年も一緒です。


しかし、王都に到着した二人を待ち受けていたのは、ひどい仕打ちでした。

王は、少女を塔に幽閉し、彼女の幸運をすべて自分のものにしようとしました。

閉じ込められた彼女を救おうとして、青年は何度もとうに乗り込もうとしましたが、結局たどり着くことが出来ません。何度も何度も塔に挑み、そのたびに途中で力尽き、地面に落下してしまいます。


そんな日々が続き、国が徐々に傾き始めました。神の怒りに触れたと恐れをなした国王は、少女を解放することにしました。


少女は早速、青年の元にいきましたが、青年はなんと動けない体になってしまっていました。少女の力でもどうにもできません。

徐々に死期がちかづいていく中、青年は言いました。


「君を置いて行ってしまうことが、何よりも苦しい。最期にわたしにしてほしい事はあるかい?こんな体では、満足にできないだろうが君のためならやって見せよう」


少女は、こう答えました。


「それでは、約束してください。今の生が終わろうとも、永遠に私を愛し続けると。そして、また次の世で再会してください」


青年は笑いながら、言いました。


「お安い御用さ。それでは、君を私のことを見つけておくれ」


二人は約束し、青年は静かに息を引き取りました。そして、しばらくすると少女も天に昇って行きました。少女のことを見ていた神は、二人が約束を果たせるように、来世でも記憶が残るようにしました。

すると、何ということでしょう。すべての人間に前世の記憶が蘇ってきたのです。

神が言いました。


「二人が出会えるように、すべての人間に祝福を与えました。」


こうして、すべての生き物に前世の記憶が存在するようになったのです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 「この少女と青年が再会するまで続く、と言い伝えられていますよ。」


えーといいたげな少女は


 「その言い伝えって何百年も前から続いてるじゃないですか。まぁ、逆に記憶のない世界なんて、想像できないですけどね!」


 恨めしそうつぶやいた。


「よいしょ!じゃあ、行きますね!」


「ああ、もう大丈夫何ですか?」


男の言葉に、笑顔を向けて、


「先生と話したら楽になりました!」


じゃあね!そういいながら、去っていった少女に、今は届かないであろう呟きをひとつ。


「、、、普通は、混乱するんです。」





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