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Dear  作者: 雨神
優しすぎる保護者
13/62

2-4

 むっくぅ……と頭を擦りながらゆったりと起き上がった優は「えー……」と不服の色を混ぜた声を吐きながらとろりと笑った。


「だって眠るばかりじゃ優さん暇なんだよー。元が元気の塊なんだから。インドア違う。アウトドア派なんだよ優さんは」


「虚弱体質が何を言うんですか。蓮、優さんにデコピン一発な」


「うん」


「蓮っ!?こう言うときばっかり律の言うこと利かない……ったぁっ!」


 はぁ……と全力で溜め息を吐いた律に全くの同感だった蓮は一切の迷いなしに優の額にばっつんとデコピン一発を贈った。


 ばちん、ではなくて、ばっつん。


 跳ねるような軽い音ではなく、めり込むような重たい音はより痛みが重たいことがよくわかる。


 自分がしておいてなんだが、額を押さえて前のめりに「ううぅ……」と痛みに堪える優を見ながらこの一発を自分は浴びたくないな、と思った。


 律と蓮の育ての親である、優。


 額を押さえてうずくまる彼こそがふたりの唯一のひとであり、悪魔を『散らす』と言う仕事に置いて重要な役割を担う存在だった。


 重要と言えば蓮の役割も律の役割ももちろん重要ではあるが、優の役割は『悪魔の存在を感知する』ことだった。


 命に関わるほど、ではないにしろ優はあまり体が丈夫な方ではない。


 だから悪魔を『感知する』と五感のバランスが崩れ、必ずといっても過言ではない程に倒れる可能性は高い。酷いときは何日もの高熱に襲われることだってある。


 五感のバランスを崩す上に体力まで消耗してしまう。だから蓮も律も口を酸っぱくして横になるようにしつこく言っているのだが、この保護者はそれを華麗にスルーする傾向にあった。


 普段なら悪魔を『散らす』仕事をするために外へ出たふたりを迎えに家から出ていることが多いことを考えると家にいた本日はまだましなのかも知れない。


 が、そんな人間が外に出てこなかったと言うことが律の不安を煽っているのだろう、と


 同じく煽られた蓮は表面上は呆れながらも胸のうちは不安の靄がかかる。


 いつもより体が怠いんじゃないか、とか


 もしかしたら熱があるのではないか、と。





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