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Red.  作者: れむ
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第七章 生命の天秤(はかり)

俺ってば勘よすぎ。

自分の瞳の先で風空の剣先が鈍く反射して光る。本日二度目の、命の危機。


「まあまあいとこだからいいんだって、千桐は」



いつの間に移動したのやらすっかり食べ終え、ソファーで寝転んでいたらしい琴鶴がひょっこり顔を出してなだめてくれる。けど、目の前の風空は相変わらず表情を変えずに刃を向けて琴鶴の方を向くこともなく淡々と答えた。



「琴鶴が言っても聞かない………今度は…」



そういって口をつぐんで、目先に向けていた刃を一瞬の内に移動させ、椅子に座ったままの俺の背後に立つと、鋭く冷たい鉄の先を喉に押し当てる。息をのむような小さな動きでも動こうものなら軽く切れてしまうであろうほどの向けられた刃先と喉の距離。驚きと死への恐怖から漏れそうになった声を、俺は必死で堪えた。


「フーク!」


「…………」


 あまりに本気なその姿に琴鶴が思わずそう叫んだ。が、当の本人は無言のままでぐっと柄に力を込めるのを肌に押し当てられた刃から感じ取った時だった。


「じゃあもうツナ缶没収するからねっ!!」


 突然、この状況にはまったくふさわしくないであろうセリフが耳に飛び込んだ。


「……!」



そして、また風空の耳が髪の隙間から現れて、琴鶴の方を振りかえる。その目線の向こうでは琴鶴がツナ缶を揺らせて誘うようにしながら頬を膨らませていた。



 俺と、ツナ缶。


二つを見比べて、どっちをとるべきか真剣に悩んでいる。ところで風空にとっては俺の気持ちなどどうでもいいことなのだろうけど、正直悩むのならまずこのぶっそうなものをどけてからにしてほしいと思う。

(つか、なんで俺こんな状況に落ち着いてんの…)




――――…カキン。

状況を理解していないのか、したうえで冷静でいられるのか。おかしな自分自身に呆れていると風空は再び剣をしまい、急に解放された俺はバランスを崩して椅子から落ちかけるが、椅子の背もたれを掴んでなんとかとどまる。そして、ツナ缶へと向かって歩いていた風空は少し歩いて立ち止まると振り向かずに小さくつぶやいた。


「…きみは」


「ん?」


「どーでもいいや……」


「は?どーでもいいって…?」



さっきまで異常に殺すことにこだわられてただけに……怖い。

(なんだなんだ、次は一体どういう方法で惨殺する方法を考えてる?心理戦か?ツンデレの逆みたいな要領で、優しくして油断したところを精神から破壊するつもりなのか?)

 大きな刀を斜めに背負ったその背中をそれはもう疑わしそうに見つめていると、その背中がくるんと振り返ってこちらを見て続けた。



「だってきみ、弱そうだし…」


「は?」


「ぼくの使命は琴鶴を護ることだけど…きみならいざ襲ってきても敵じゃないからね。

……けど、ツナ缶のない人生は…勘弁………」


「……~っ!!あっそ!!」



なんだか腹が立ってならない。けれど、助けてもらったのも事実だし。 第一、強さに反論ができない。悔しいけど、宿確保のために我慢だ。






そうやって命がけでなんとか宿を確保して俺はすぐ布団に入った


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