第32話 文化部の方が運動量えぐい時ない???
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「おら雛子ーー! キリキリ走れーー!」
「ヒィー! ヒィー! し、死にそう!! ぐっ、苦しいですわぁーー!!?」
「へばるのは早いぞーー!! あと五周ーー!!」
「ヒィーー!? 鬼コーチですわぁーー!?」
レッスンニ! お次は体力増強メニュー! これが地味にしんどいんだ!
その名も――
「地獄“走り込み”だ!!」
「お、こんなところにいたんだね。銭原」
「ん? あれ? 自分こんなところでなにしてん?」
雛子のレッスンのためにグラウンドに来たが、少し興奮して声を上げ過ぎたわ。
嫌に目立っちまったか。誰だいきなり?
「お、真波と──あ、あれだ。競泳水着を愛する“変態”の光鳴先輩じゃないか」
「柊さんに聞いてきたよ」
「あれ? 今自分、変態って言うてへんかった? え、こんな滑らかに貶されることあるか普通?」
「良い意味で、な。良い意味で」
「それ言ったらなんでも許される思うとるやろ!?」
思ってない思ってない。ほら、よく言うじゃんか?
「ベーシストとか、やばい奴らには“変態”って、褒め言葉らしいぞ?」
「そんな特殊性癖の奴らと一緒にすんなや!!?」
アンタ特殊性癖だろうが、なにを言ってんだよ。自分を見失うな。
変態はどこまで行っても変態なんだよ。一度なったら進化はしても退化はできない暗黒進化だろうが。
「心外すぎやわ。ここまで侮辱されたの人生初」
「じゃあ光鳴先輩はここでなにしてんだよ」
「自分? 自分は――教えてる水泳部の連中を、競泳水着姿で走り込みさせる計画練り中ぅーー」
「あ、もしもし? ゴリ先?? 女子生徒にセクハラを計画してる変態を捕まえて欲しくてぇ」
「あぁぁぁ!? 待ってぇ!? ほんまに待っ――ゲフッ……」
お、凄え。神速のゴリラがやってきて光鳴先生を攫っていきやがった。
さすがだぜゴリ先。味方ならこんなに頼もしいことはない。
さてと、で、だ。
「真波はなんでこんなところにいるんだよ?」
暇なのか? と付け足す。
「部活だよ部活、基礎練の走り込みだね」
「お、なら雛子と一緒だな。一緒に走ってこいよ」
「そうだねーー……よっこいしょ」
「おい、平然と隣に座んなよ。サボり魔」
「ちょうど水分補給休憩なんだよね」
なるほど、それなら仕方ないな。
偶然俺の横で水分を補給するだけなら止める権利はないな。
「君の楽しい話でも聞いて潤うとするよ」
「物理的に水分摂ってこい!!」
面白いものでも見るように、ニヤニヤ気分の悪い笑い方しやがって! こっちは本気でやってんだぞ!?
てか、水分補給はしないといけだろ。今の時代は暑いんだから――
さらに言葉を続けようとした時、一人の女子生徒が真波のそばに近づいてくると、
「行人君!! これ! 受け取ってください!」
「ん? あ、丁度喉乾いてたんだよね。麦茶だぁ、ありがとう」
「は、はい! 光栄です!!」
女子生徒は真波にドリンクを渡し終わると、顔を真っ赤にして走り去っていった。
もしや、あれが真波ファンクラブの奴か? 遠くで他の女子生徒たちとはしゃいでるから、おそらく間違いないだろう。
モテるイケメンはすげぇな。
「ねね銭原、君さ、これいる?」
「はぁ!? お前さすがにそれは失礼過ぎるだろ!? お前への好感度下がるわ!!」
ファンから貰ったものをそんな扱いって、それは相手が可哀想過ぎるだろ!?
「銭原さ、よくこの麦茶を見てよ」
「あ? いったい何を言って――」
真波の言動に呆れながら、ペットボトルの麦茶に目を向けると……何故か大量のワカメのような物が沈んで――って!?
「うぎゃぁぁぁ!? なんだそれ!? か、髪の毛ぇ!!?」
なんでそんなもんが麦茶の中にあんだよ!?
「これがファンがいる側のリアルだよ……」
「警察に届けてこいアホ!!!」
そんな呪物みたいなやつ人様に見せるんじゃねぇ!! リアルな現実を見せるな!
……ん? いや待て?
「現役女子高生の髪の毛入り麦茶? ……金の匂いがする!!!」
「字面汚くないよ? それ」
真波は後で処分すると、ポケットに閉まってしまった。
あぁ……俺の金が……、高額オークション品が……。
「銭原……君さ、そんな露骨に凹まないでよ。それで? 君はここで何してるのかな?」
「ん? あーーあれだよ。雛子の演技指導」
「なるほどね、演劇とかも走ったりするからね。なんなら運動部よりハードな所あるからね」
分かる。演劇に限らず、吹奏楽部とか恐ろしく過酷なパターンあるよな。割とマジで。
文化部で楽しようって、不純な動機で入った人は絶望するだろうな。
……まぁ、過去に似た経験をしたことあるから、よく分かるんだが……。
「それで? 黄金院さんと、一緒に走ってる柊さんはどうなの? だいぶ疲れてるみたいだけど? 体力無い感じだったのかな?」
「残り五周だな」
いや、今目の前を通っていったから、あと四周か。
ん? 走り始めてまだそんなもんなのかって? いや……あのな?
「百周まで……あと四周だな……」
「あ、あれ!? 二人とも!? そんなに走れたんだね!? 俺より体力あるんじゃないかな!?」
「片方は“帰宅部”、片方は“新聞部”だぜ? アイツらオリンピックを狙えるだろうよ」
冷静に考えてみろよ?
アホみたいに広い面積の畑仕事したり、新聞のネタ集めに学園内を走り回ってるやつだぞ?
そんな奴らがさ、体力無いなんてありえねえよ……。
「やる意味あったのかい? これ」
「やめろよ。そんなこと言うな」
もう授業料は貰ったんだよ。
やる意味なかったなんて、口が裂けても言えないわ。
「あと三周ですわぁぁぁぁ!!!!」
「うりゃぁーー!! 負けるかぁーー!!」
アイツら凄くね? 無茶苦茶元気じゃん。
~おまけ~
「そもそもなんで柊も走っているか、だって?」
おら、答えてやれよ。柊。
「なんか走ってる雛子ちゃんを見てたらさ!! なんか走りたくなっちゃって!!」
「な? さすが犬っころだろ?」
「誰が犬だってぇ!!」
ほら、撫でてやろうか? よしよし。
「うにゃーー」
「小鉄様!? なにやってますの!!? ムキィーー!!!」
なに叫んでんだよ……ムキィーーって、そんな漫画的表現を言うなって……。




