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第13話 俺の想いを“相棒”へ

●


「モウ……無理デスワ……助ケテ……助……ケテ」

「まだまだーー!! 次はステーキとカツ丼を頼む!! 浴びるほど食うからなーー!!」

「ヒーーデスワーー」


 閉店後、売り上げを数え終えた俺たちは、寮の俺の部屋で打ち上げをしていた。


「柊様は残念ですわね。来ることができずに」

「アイツの新聞も飛ぶように売れてるみたいだからな、忙しいんだろうさ」

「二人とも絶好調ですわね。わたくしもお手伝いをさせていただいて良かったですわ」


 貴重な体験になりました、と微笑む雛子に俺は一言告げる。


「手伝い? 違うだろ雛子、お前は大きな勘違いをしてるぞ」

「勘違いですの?」

「前に言っただろ、俺たちは協力者なんだぞ。“お互いの利益のため”っていう共通目的で行動するんだよ」

「共通目的……」


 そうだ、雛子はそこを分かってない。

 三人でまだ数日だが、過ごしてどうだったよ?


「楽しかったですわ。この学園に入学して色々なことをできましたし……」

「俺も楽しかった。でも、この学園じゃなくてさ、俺は“お前と出逢えて良かったぞ雛子”」


 え……、と惚けた顔で俺を見つめる雛子。


「最初に会った時は変なやつだなって思ったぞ。なんせとうもろこし狂人だったからな」

「いえ、わたくしなんてまだまだですわよ……」


 別に褒めてないからな? “変なやつ”って言ったぞ?

 まあ、そこは今は良いか。今指摘してもキリがない。


「最初に会って以降、お前のことを調べたんだよ」

「え……わたくしのなにをお調べに……」

「誤解すんなよ!? 変なことじゃないぞ! ただ単純に黄金院の業績とかな」


 調べてみたら本当に凄い家だった。

 エネルギー産業や飲食はもちろん、化粧品と農業まで、他にも色々やっている。

 やってない事を探す方が難しいくらいだ。


 そしてなにより、


「ここ十年で黄金院家がやり始めたとうもろこし産業って雛子がやったんだろ? スゲーじゃないかよ」

「いえ、わたくしは……ただお父様や黄金院の役に立ちたくて……」

「じゃあ好きでもないことをしてたのか? 違うだろ? お前がとうもろこしを崇拝してるのは見ててわかるわ」

「……」


 薄々気づいていた。

 化粧水など様々な功績で、雛子は男女問わず人気がある。生徒以外にも先生からも。

 根が真面目? なのもあるが、金持ちなのに嫌味のないところが好印象なんだ。


 だが、


「わたくしはいつも一人でしたの……皆様を萎縮させてしまうわたくしなんて……これからもお役に立てるか……怪しいですわ」

「萎縮というか、みんなが陰ながらお前を慕っているだけなんだが……」

「嘘を仰らないでくださいまし小鉄様」

「嘘じゃねぇって! えっとーーちょっと待ってろよ――あったこれだこれ!」


 荷物を漁り、真新しい新聞を雛子へ差し出す。


「これは……」

「さっき柊から渡された明日発行のひいらぎ新聞の見本だ。その下の記事を見てみろ、驚くぞ」

「驚く? 一体なにを――ッ!?」


 雛子が新聞に向けた目線を下に移動した時、目を見開いた。


 記事に書かれていたのはこうだ。


「“黄金院のお嬢様は優しさととうもろこし愛に溢れた女神”だとよ。柊もお前が一人なのを知ってたんだよ。だから少しでも雛子が馴染めるように色々してるみたいだぜ?」

「柊様……ッ!!」


 笑顔で接客している楽しそうな雛子の写真とともに、俺がゴリ先に歯向かっている写真も載せてある。

 記事には“先生にすら牙を向く獣を黄金院雛子が黙らせる!? 学園の平和は女神のおかげ”と――あれ? ちょっと柊さん?


 なんかこれだと、俺が問題児みたいじゃねぇか。


「柊は雛子のこと大好きだぜ? アイツは誰にとでも仲良くなりそうだけど、気に入った奴じゃないと自分から話に行ったりしねぇんだ」


 俺から言うので悪いけど、これからもアイツと仲良くしてほしい。


「えぇ……えぇ!! 言われなくてもわたくしたちはもうお友達ですわ!! この記事のこともお礼をしなくては!!」

「俺はこの記事の内容に文句を言ってやるけどな」

「今回はわたくしのためですもの、小鉄様には我慢していただきたいですわ!」


 いやーーし、しかしなー? 俺の評判に関わるからなーー……。


「お願いいたしますわ。わたくしの“お友達”なんですの。わたくしの顔に免じて」

「……そうだな、今回限りは柊を許してやろう」


 助かったな柊、雛子に感謝をしておくんだな。

 ま、でもさ、なにが言いたいかというとな?


「俺は雛子に出逢えて良かったぞ」

「小鉄様……」

「面白くて、良い意味で頭がおかしくて、常識知らずで、便利な青い子守り用ロボットみたいで、とうもろこしのことしか考えてなくて」

「こ……小鉄様?」


 でもさ――


「普通とは違う。そんな特別な雛子と会えて、俺はこの学園に来れて良かったわ」

「ッ!!?」


 こんな俺に協力してくれてさ、だってそうだろ?

 借金の話や理由を聞いても俺の側にいてくれているんだぞ? 普通なら距離を置くだろ。なのにお前は違った


 でも、それが良いんだよ。


「俺は金持ちの“黄金院雛子”じゃなくて“ただの雛子”といるのが楽しいんだよ。ありがとうな雛子」


 静かに告げる言葉、けれど、強い想いを乗せた。俺の偽りない気持ち。

 目を見開き、ゆっくりと瞳を閉じ、心に染み込ませるかのように、静かな沈黙の後、雛子は静かに言葉を紡いだ。


「……こちらこそ……ありがとうございますですわ……」


 思わず見惚れてしまうほど、綺麗な雛子に、俺の口調は早くなる。


「と、というか、俺一人じゃこんな稼げないしな!! 雛子がこれからもいてくれないと困るぞ!? なんたって俺たちは協力者であり、一蓮托生の“相棒”なんだぜ?」


 雛子みたいな言い方をするのなら――


 “とうもろこしの粒のように、離れないようにしっかりと隣にいてもらわないと困る”


 そうだろ雛子?


「……っ! えぇ……! そうですわね!!」

「泣くなよ。ハンカチでも貸そうか?」

「泣いておりませんわ……! これは……そう! 前に小鉄様が仰っていたでしょう? これは“ 魂が排泄しているんですわ”!!」


 あぁ、覚えてるよ。

 じゃあさ、その後お前がなんて言ったか言ってやろうか?




「汚ねぇなそれ」

「……汚くありませんわよ……おばか」




 お互いに笑い合う。

 俺ともあろう者が、随分恥ずかしいセリフを言ってしまった。忘れてくれ、顔が赤くなってきたわ。

 昔からの知り合いの柊にだって言ったことないのに。


「いいえ忘れませんわ。小鉄様の恥ずかしそうなお顔は、わたくしの思い出に大切にしまっておきますわね」









        ~おまけ~


「なんか良い雰囲気だなーー私はお邪魔かなーー? ねーねーコテツーー? 帰っていいかなーーー?」

 

 ぎゃぁぁぁぁぁ!? いつから見てたんだコラーーーー!!?


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