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雷魔法が最弱の世界  作者: ともとも
9/22

モンスター討伐

次の日。

今日も朝早く起きた。最近、早起きに慣れて全然眠くない。

「おはよう、今日も早いね。また素振り?」

「おはよう。うん、今日も素振り」

「おはようトモヤ!」

「おはよ……」


今日はいつもはない、第三者の挨拶が聞こえた。

「えっ、セクアナ!?」


前を見ると、とても元気なセクアナが立っていた。

「いつも起こされないと起きないセクアナが、早起き! 風邪でも引いた?」

「ひどい言い方だなぁ。確かに早起きは得意じゃないけど……」

「じゃあ、どうしたの……やっぱり風邪?」

「君にとって、私の早起きイコール風邪ってどうなの!」


ムスッとしながらそっぽを向く。


「まあまあ。なら緊急のことでもあるの?」

「んーー、緊急と言えば緊急かな」

何をするのかわからず、首を傾ける。


「モンスターの討伐に行こう!」

「えっ、ええええーー!?」


急すぎて、とても驚いた。



朝ご飯を食べ終わると、僕たちは軽く魔法の修行をしてから森の中へ入った。装備はお互いに木刀を持っているだけだ。

生身だからできるだけ安全に倒したい。


そう思うと同時に異世界っぽいことをするから、心が高揚していた。

どんなモンスターを倒すのかな。

ちゃんと倒せるかな。


不安もあるけど楽しみだった。


母もいきなりのことだったが、修行を手伝うために、弁当を作ってくれた。


「あっ、トモヤ、セクアナ。決して軽い気持ちで戦ってはダメだよ。最悪の場合死んでしまうこともあるから。怪我しないでね」

母の爽やかな笑み受け取って、家を出発した。


僕とセクアナは今、森の奥深くにいる。


奥に入るほど光が差さなくなり、暗かった。

途中からセクアナが少し怖がっている。

「わっ!」

「キャァァァ!?」

「クスクス」

「ちょっとー!」


大きな声を出しただけでここまで驚くなんて、本当にビビりなんだなぁ。


「大きい声出さないでよ、馬鹿」

そう言いながら涙目になっていた。


「クスクス、いやー、緊張で体が硬くなっていたからほぐそうと思って。ガチガチの状態で、魔法なんて使えないでしょ」

「確かに緊張が少しほぐれたかも。でもちょっと声は大きすぎない?」

「そうですか? まぁ緊張がほぐれたならいいと思うけど。

それよりどんなモンスターを討伐するの? 何も聞いていないから、分からないんだけど」

「そうだったね」


何も教えていないことに気づくと、目の前を人差し指で刺した。

「私たちが討伐しようと考えているのは、あれだよ」

指の先を見ると、そこには猪がいた。


大っきい。

昔テレビで見たことある猪を思い出したが、それとは比べ物にならないくらい。4、5メメートルの体長だ。


「あれはよく田んぼや畑を荒らすから、みんな迷惑しているの。今日、お母さんに相談したら迷惑だから倒してって賛成してくれた。だから倒すよ!」


あまりの大きさに肩をすくみながらも近づく。

軽く作戦を立てたのち、深呼吸した。


「じゃあ作戦通り、私が始めに攻撃するね。ふっ、ふっ……だだだだいじょうぶ、ぶ、私は出来る」

「落ち着いて下さい、もしもの時は電気で痺れさせれるので」

「は、はいっ」


どうにか落ち着かせようと試みるが、セクアナの手が震えている。

「アクアカッター!」


スパ!


落ち着いていなかったせいで、猪ではなく近くの木に当たった。そして猪は僕たちに気づいて、

突進してくる。


「ブモオオオオオオオオオオ!!」


ヤバイヤバイ。

「セクアナ、どうしたらい……あれ?」

横を見るとセクアナがいない。


「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!?」


後ろの方で大声が聞こえた。逃げ足では速く、いつの間にか30メートルくらい離れていた。


「置いて行かないでー。ちゃんと説明してよ! ていうか助けてぇぇぇ!」


セクアナと離れていたから声は届かない。そのおかげでセクアナは安全だからよかった。


「ブモオオオオオオオオオ!」


ってそんな呑気なこと言っている暇がない。

「助けてぇぇぇぇぇぇぇ!!」


全力で、とにかく全力で走った。


「はぁはぁはぁ、よかった。どうにか逃げ切れた。それにしてもセクアナはどこ行ったのかな……」

バラバラに逃げたからはぐれた。


それにしても怖かった。

やはりでかい。


全力ダッシュで体力がほとんどなくなった。だから少しでも回復するために木にもたれかかって休憩する。

それでも危機的状況は変わらない。セクアナが襲われていたら大変だ。

少し楽になるとすぐに立ち上がった。


危険ではあるが、セクアナを探すために再び歩みだす。

「おーーい、セクアナーー。どこーー?」







はぁはぁ、ここまで逃げると猪に出会わないかな……


セクアナもトモヤとはぐれて森の中で迷っていた。


ダメだな私。

初めてのモンスター討伐だから、ちゃんとトモヤに教えないといけないのに、怖がって逃げてしまった。それに木刀もどこかに落としてしまったし……


木にもたれながら、自分の不甲斐なさに後悔する。


「くねくねしててもしょうがないし、怖いけど探すしかないね!」


グッと拳に力を込めて、立ち上がろうとした。


ドサッ、ドサッ


だがそうしようとした時、すぐ近くに猪は来ていた。


えっ、どうしよう、どうしよう。

何でここまでついてこれるの?


あっ、もしかしたら私の落とした木刀の匂いを嗅いで……

確かに鼻がよく効くのは分かるけど、こ、ここまで!


どうしよう、死んじゃう。助けて助けて。


両手を合わせて、こっちに来ないように祈ったが、その願いは届かなかった。


バキ、バキバキバキ。

「きゃっ!」

猪はセクアナが隠れていた木を倒して、目の前まできた。また衝撃が強く、後ろに吹き飛ばされた。


「ブオオオオ!」


こんな距離で魔法を放とうとしても、撃つ前に殺される。それに攻撃したところで倒せるかもわからない。


ああ、殺される。

本当にこれが最後なのかな。

ごめんトモヤ、あなただけでも生きて……


「約束してよ」

その言葉をふと思いでした。


違う!

最後まで諦めない。

約束したじゃない。

生きることを諦めちゃダメだ。


とにかく逃げろ。今の私にはそれしかできない。

今さっきの衝撃で足を傷つけたが、走れる。

たくさん鍛えてきたんだ。


決意を固めると、すぐに立ち、全力で逃げた。猪も止まっていたせいですぐに動けず、立ち上がることは簡単に出来た。だがスピードは速く、逃げ切ることは出来ない。とにかくトモヤを見つけるまで走り続けないと。

必ずトモヤは倒してくれる。


はあっ、はあっ。

汗が顔からたくさん垂れ落ちた。


バキバキ、ドッカン

「うわっ!」


ドテッ

「きゃっ!」

猪はたくさん木にぶつかり、潰した。

私もその衝撃でたくさんこけた。


痛い、苦しい、しんどい。

でも諦めるな。楽な方に逃げたらダメだ。


ドッカン、バキバキ!

ドテッ!


「ブオオオオオオ! ブオオオオ」


すぐに立ち上がれ。まだだ、まだまだ。

走れ、走れ、走れ、走れ走れ走れ走れ走れぇぇぇぇぇぇ!?


「セクアナ!」

「トモヤ」

やっと見つけた。

トモヤはもう戦闘態勢に入って電気を体の周囲に纏わせている。


よかった、やっと会えた。


今までの苦労をすべて詰め込んで、大きく一歩を踏み出した。だが、ずっと逃げていたせいでセクアナの足は限界がきていた。


バタン


大きな音を立てて倒れた。

希望が絶望に変わった。


「はぁはぁはぁはぁ」

呼吸がとても荒い。


思わず涙を流していた。

「どうして、どうしてこのタイミングで足が動かないの。ねぇ、ねぇ、動いてよ。ねぇ……

生きようと……頑張ったのに……死にたく……ないよ。助けて……トモヤ」







ドッカン!

大きな音がした。


猪が暴れている?

はっ! もしかしたらセクアナが追いかけられているかも。速く行って助けないと。

でも遠いな……


方向音痴のせいで、結構距離が離れていた。


これまでの修行を今、活かさないと意味がない。

急いで音のするところまで行った。

また、すぐ戦えるために準備もする。


「はぁぁぁぁ!」

電気を体に纏わせる。

魔法の調子よし。


そんなことをしていると音が大きくなり、すぐ近くまで来ていた。


バキバキ、ドッカン


「セクアナ!」

横を見るとボロボロになりながら逃げていた。

猪も猛スピードで突進している。あと20メートルくらい。

これなら大丈夫かな。


「速くこっちに……」


バタン……


倒れてしまった。

セクアナを助れる希望が見えた時、彼女は倒れこんでしまったのだ。


ヤバイヤバイ。


倒れたことにより、猪との距離が縮まった。

今から魔法を出しても間に合わない。なによりもセクアナを助けられない。


「約束ですよ」


この窮地の中、その言葉が脳裏に浮かんだ。


そうだ約束だ。

助けないと。

絶対死なせない。

守る。


猪がセクアナに突進する。


間に合わない、この距離なら絶対に間に合わない。でも一歩前に、ちょとでもいいから前に出て守らないと・・・


「私は生きたい」

「セクアナを守る」


「生きろ!!」


ビリッ、シュ……


バキバキ、ドッカン


間に合った?


目を開けると僕の前にはセクアナが仰向けに倒れて、押し倒したような状態になっていた。


なぜか光速で動くことができて、セクアナを守れた。


「セクアナ、セクアナ生きてる? 僕の声が聞こえる?」

「ゴホッ、えほえほ」

「わっ! よかった! 生きてる。ちょっと待っててね。今からあいつを倒してくるから」

僕は安心させるように満面の笑顔でそう言った。


立ち上がり、猪を強く睨んで対峙する。


「いくぞ、モンスター。お前を一撃で倒す」

手を大きく開いた。


「はあぁぁぁぁ、集まれ僕の雷」


圧縮、圧縮、とにかく圧縮。今まで出した雷魔法で最大の威力を。


「はあぁぁぁぁ!」


ビリッ、ビリビリビリ、ビキ。


「最大火力、電気ショック!!!」


バリバリ、ドッカン、ビリ、ビリビリ。


猪はまる焦げになった。






私は目を覚ました。

日の光がこの森を差した。

木が潰され、土には血や泥が混ざってボロボロになっている中、一人、日に照らされて気高く立っていた。


ああこれが、この世界を変える男の姿なんだろう。

その姿はいつまでも忘れないと思う。

私の命の恩人……


「セクアナ、目を覚ました?」

激闘が終わった後だが、とても爽やかな笑顔でこちらに来た。


「もう全て終わったよ! さあ帰ろう」

そう言っておぶってくれた。


その言葉を聞いて安心したのか、大量の涙が目から流れ落ちた。

「ひぅっ……! うわああああぁぁ……!? やっと、やっと終わったんだね。

……怖かったよよょょょょ!」

叫びながら、力強く抱きしめた。

トモヤの背中に顔をうずめる。

泣いていると片手を握ってくれた。

温かい。


「よく頑張ったよ。セクアナはよく頑張った」

優しく、安心できるようなゆっくりとした言葉が聞こえる。


「えっと、ありがとうセクアナ。約束を守ってくれて。セクアナが頑張ったからこそ今生きているんだ。だから、その……ありがとう!」


泣きながらも、トモヤの耳元に口を近づけた。


「ひぅっ……! ぐすん、ぐすん」


「トモヤ大好き!!」





いつの間にかセクアナは寝ていた。あれだけ頑張ったなら当たり前だろう。


今日の出来事で、もっと強くならないといけないと自覚した。

明日からの修行をもっと厳しくしないとね。


反省をしながら、きれいな夕日が沈みゆくところを、ゆっくり歩いて帰った。



帰ったら母に長時間、説教されたのは、また別の話である。



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