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雷魔法が最弱の世界  作者: ともとも
10/22

学校

モンスターを討伐した次の日。


セクアナは怪我が酷かったからベッドに寝込んでいる。

あの後、母に回復魔法をかけてもらったので、数日間安静にしているといつものように戻るだろう。

昨日はとても危なかった。一歩間違えると今ここにセクアナはいない。


もっと、もっと強くならないと。

こんなんじゃ魔王を倒す以前に魔法騎士になれない。


強く、強く。

自分の目標をイメージしながら修行した。

そして新しいを技を考える。


修行が終わると、セクアナの様子を見に行った。

朝と昼に見た時はずっと寝込んでいたから心配になる。

中に入ると部屋のど真ん中にベッドがあり、そこでセクアナの目は開いていた。


よかった、やっと目覚めてくれた。


ただ手や足がしっかり動いていなく、今までで一番元気がない。


「調子がはどう?」

そう言いながら、タオルを水で濡らしておでこの上に乗せる。

セクアナは、体のあらゆる場所に包帯が巻かれていた。

たくさんこけて傷だらけだったからだ。


「まだ全身が痛いかな。骨折や打撲はしていないからすぐいつものように動けると思うよ。だけど……」

俯き、震えた声が聞こえた。

「昨日の恐怖がまだ残っていて、少し怖いかな。いつものようにうまく笑えないや、ハハハハ」


昨日の猪の影が残っているのだろう。その通りだ、死にかけたのだから。

あの出来事を忘れようとしても印象が強すぎて無理だ。

何か楽しいこと、笑えることがあったらいつものように心が戻るかもしれないが。


「ねえ、今日はずっと一緒にいてくれない?」

「もちろんだよ」

僕が出来ることはセクアナに頼まれたことをやるくらいしかない。

あの時、セクアナと離れてしまったからあんなことになった。ちゃんと近くに居ればここまで怪我をしなかった。

僕のせいだ。

もう絶対に傷つけさせない。

強く決意を固めた。


ガチャ!


母も入ってきた。

「はい、今日の晩ご飯のおかゆだよ! 早く元気になりなさいよセクアナ。今日、トモヤなんてとても心配してご飯を残したんだからね」

「あー、もう、言わないでよ」

顔を赤くして母に怒った。

「アハ、ハハ」

やっぱりセクアナはいつものように笑えていない。


「でもよかった。無事に戻ってきてくれて。本当にびっくりしたんだよお母さん。

ただいまって言われたからドアを開けると傷だらけの二人がいたんだから」

僕は反省して自分の頬を掻いた。


「それにしても、あと少しで春が来るね。そっか、もう学校に行く季節かぁー」

「ん!!」

「ん!!」


僕とセクアナはその言葉に大きく反応した。


「お母さん! 今なんて言った?」

「学校に行く季節って言ったけど……あれ、言っていなかった?」

「聞いてません! それって七歳になってから行くの?」

「そうだね、だからあと4ヶ月後に入学するよ!」

「本当に?」

セクアナもこの話には食いついた。意外な話で、元気が少し戻ったかな。


それよりのちょっと待って。

この世界に小学校のようなものがあるのか。


えっ……異世界に来てまで勉強しないといけないの……

今まで異世界のことばかりだったかが、元の世界っぽいこともあり、気分が少し落ち込んだ。

まぁ小学生の低学年くらいなら簡単か。


僕はすこし嫌だったが、セクアナはとても喜んでいた。


「わたし、ずっとみんなで勉強したり遊んだりするのが夢だったの。だから嬉しい。やったぁぁぁ!」

この話で普通に笑えて、いつものセクアナに戻っていた。


ずっと天界で暮らしていたから、みんなで勉強という機会がなかったのかもしれない。

よほどうれしいのだろう。


「そのためにこれから準備しないといけないね。元気になったら手伝いなさいよ」

「うん!」


この話で盛り上がったから母の作ったおかゆは冷めた。


「ああ、ご飯冷めたね。もう一回温めようか?」

「そのままでいいよ」

「そう、じゃあ食べさせるから口を開けて。 あーーん」

「うん、美味しい!」


楽しそうだ。


「お母さん、今日はみんなで寝よ! 僕たちも無事に帰ってきたし、久しぶりに寝たいな」

セクアナは元気になった。それでもさっき怖いと言っていたのでそう提案した。


「そうだね、久しぶりにそうしよっか」


話が終わり、僕と母は布団を持ってきて床に敷いた。

そして仲良く川の字になって寝た。


ああ、なんだか温かいな。みんなの温もりが。



4ヶ月が経った。


学校には制服などはなく、持ち物は書くための鉛筆と、手提げ間くらいだ。


セクアナは大怪我をしても、五日くらい安静にしているとすぐに治った。今は学校が楽しみでぴんぴんしている。


「今日は入学式だからお母さんも行くよ。でも一回しか着いて行かないからしっかりと道を覚えてね!」

「はい!」

「特にトモヤ、あなたは方向音痴だから気をつけなさいよ。初めての道なら必ず変な方向に行くから」

「ギクッ、わかってるよ」


修行のランニングは、何回も走っているコースだから覚えて方向を間違えることはなくなった。

あっ、でも始めは道を覚えるのに苦労したな。

猪の討伐はセクアナが怖がって手を引っ張りながら入ったから迷わなかったけど、今から行くところは方向を間違えそうで怖い。

まぁセクアナと母がいるから大丈夫だろう。


「じゃあ出発するよ」

「行ってきます!」

みんなで声を揃えて言った。


ここは田舎で学校までが遠い。

母の話によると3キロメートルくらい離れているらしい。


「あっ、セクアナったら手ぶらじゃない。鞄どこに置いたの?」

「えっと、忘れてた」

「まったく、一緒に取りに行こう。悪いけどトモヤ、あとで追いつくから真っ直ぐ進んでてくれない? すぐ戻るから」

「はい! 真っ直ぐですね」

僕は言われた通り真っ直ぐ歩いた。


歩きながら自然を見るとやはりここは豊かだと思う。木も植物も動物も言われた、生き生きしている。


「……」

しばらく歩いていたが、二人はなかなか追いついてこない。

全く何をやっているんだ。


「トモヤ……どこー?」

近くでセクアナたちの声がした。やっと見つけた。

一応僕は耳がいいから、遠くの声も聞き取れる。


「おーい! やっと見つけた。全くどこ行ってたの? お母さんたち行く方向間違えないでよ……」


空手チョップを頭に当てられた。

「痛たぁぁぁぁ!」

「はあー、トモヤはどうしてなの? 真っ直ぐ進んでって言ったのになんで曲がったの?」

「あれ?」

僕の中でまっすぐ進んでいたのになぜか右に曲がっていた。

ああ、これが方向音痴か。

自分で認めざるを得なかった。


この後、母に手を繋がれていたから迷うことなく学校に着いた。

「やっと着いた! 結構距離があって疲れた」

「何言っているの。明日からもこの距離を歩くんだよ」

「嫌だな、これを毎日か……」

ウキウキしているセクアナを横目で見ながら、ため息が出る。


学校は田舎だから木造建築で、歴史を感じる建物だった。

しばらくをれを見て中へ入った。

僕たちは、入学のために名前の手続きや、これからすることなどを簡単に説明してもらった。



そして入学式が始まる。


「スーーー、ハァーーーー」

「緊張してる?」

「そりゃそうでしょ。だって待ちに待った学校だよ。ああ、なんて嬉しい」

「フフフ、入場の行進で手と足が同時に出ないように気を付けてね。そんなことしたら恥だよ!」

「さすがに、そこまではしないよ。このために昨日練習したんだからね」

確かに昨日は家の中をよく歩いたり返事の練習をしていたな。

真面目過ぎてすこし笑えてしまう。


セクアナは学校生活を体験したことがない。

女神の頃はいつも一人で大変だったと聞いた。

真面目で、いつも努力しているセクアナだからこそ楽しんでほしい。

恥をかかないといいけど……


「新入生、入場!」

マイクのようなもので音が鳴った瞬間、並んでいた列が進んだ。

日本のように音は流れず、拍手が起こる中、歩いていく。

セクアナは僕の前だ。

緊張しているのかとてもうずうずしていた。


来た来た、そろそろ歩かないと……



あらら……


セクアナはあれだけ張り切っていたのに結局、手と足を同時に出して恥ずかしい歩き方をしていた。

緊張のせいでうまく体が動かないんだろう。


顔が真っ赤になっていた。

耳まで赤い。

いろいろ練習していたけど、ここで失敗してかわいそうだ。


それぞれ椅子の前に立ち入場が終わった。

「入学生の皆さん、どうぞお座りください」

みんな一斉に座ったが、セクアナは一人遅れて座った。

もう恥をかくのをやめてほしい。見てられない。


辺りを見渡してみると生徒は二百人くらい並んでいた。こんな田舎でも意外に生徒が多いことに驚く。


そんなことを考えていると、もう名前を呼ばれるところまで進んでいた。


「セクアナ・フローレス」


「っ! ……はッ……はい……」

「ぷふっ」

思わず笑ってしまった。

結局練習していたけど全て失敗したな。なんかもう面白くなった。


「トモヤ・フローレス」

「はい!」


「…………以上、入学生でした」


これであとは校長先生の話だけになった。学校でいつも見ている通り、始めに礼をしてマイクのような魔道具の前に立った。


「みんな新一年生として、入学おめでとう。これからも頑張ろう!

そして礼をして着席された。


えっ! おお!

この世界は校長先生の話が短いぞ。これはいい。やっぱり異世界はちょっと違うね。


「新入生、退場」


パチパチパチパチパチ、パチ、パチ。


こうして入学式は終わった。

そして僕たちは教室に案内された。

やっぱり、木造建築だから風情のある教室だった。


机に座ると同時にセクアナは、全身の力を抜いたように頭を机につけて倒れたていた。

「ぁぁぁぁぁぁぁ……!」

なんか怖い。変な呪文を言っているようだ。

「はぁぁぁぁぁ……死にたい……」

小さくそんなことを言っていた。


「ぷっ、あはははははははぁぁぁ。ハッハハハハハ! 面白かった。本当に面白かった。あそこまで入学式で恥をかいた人、初めて見たよ」

「おい……後で覚えておけよ」

これまで聞いたことのないドスの効いた声で言われた。


完全にキレてる……


その声を聞いた途端、身の危険を感じ、すぐに謝った。


「はぁー、それにしても悲しいよ。せっかくの入学式だったのに」

「残念だったね、初めてがあんな大惨事になるなんて」

「本当だよー」

いろいろ話していると他の生徒達が続々と入ってきた。

まだ小さいから入学式が終わると大体の子が親の元へ行っていたから、遅れているんだろう。


しかもその無邪気な子ども達はセクアナに追い打ちをかける。


「あっ、あの子、歩き方や返事が変だった人だ」

「グサッ」

「本当だ。面白い子だ」

「グッ」

「ねぇねぇ、あんな歩き方して恥ずかしくなかったの?」

「がぁはっ……うわぁぁぁ---ん……もう嫌ぁぁぁぁぁ!」

猛ダッシュで大泣きしながら教室を出ていった。


輝いた笑顔で無意識にそんなことを言えるから小さい子って憎めないよね。

ぷふっ、でも面白い。

おっと笑っているのがバレたら次は殺されるな。






「うわぁぁぁぁぁーーん、もう嫌。初日から大失敗した。早く帰りたい。お母さーーーーん!」

「うわぁ!」

「きゃっ!」


思わず誰かにぶつかってしまった。泣いていたから前を見ていなかった。

「あっ! ごめんなさい、ごめんなさーい」

謝りながら逃げていった。


ああ、最悪!



私は誰もいなさそうな場所を見つけ、体操座りをして縮こまった。


恥ずかしいよーー。

せっかく練習したのに。

忘れたい。

しばらくそこに座って気持ちを落ち着かせていた。

でもなぜだろうか。私はとても落ち込んでいたのに自然を感じているとすぐに開き直った。

そよ風や揺れる草木が私の気持ちを吸い込むように。


クヨクヨしていてもしょうがないと思い、勢いよく立った。


「よし! 教室に戻るか」


古い木だがピカピカになっている廊下を力強く歩いた。


「あのっ・・・このハンカチ落としましたよ」

「あっ、ありがとう」

「さっきぶつかった時に落としちゃったから、ちゃんと渡せてよかったよ!」

「ごめんなさい。あの時いろいろ考え事をしていたから周りをみえてなくて……」

「いえいえ、大丈夫ですよ」

「ありがとうね!」


青色の瞳でまっすぐ見て言う。そして綺麗な青髪を揺らしながら通り過ぎた。


(美しいな……)



「あっ、やっと戻ってきた。もう心は落ち着いた?」

「落ち着くわけないじゃん、あんな恥ずかしいことをしてしまったんだから。でもメソメソしているとダメだなと思って。それにこのまま帰ったら、それもそれで恥をかくから」

「それもそうだね!」


色々あったがクラスは全員が集まった。残りは先生を待つだけだ。

僕の前にセクアナの席があった。番号順で並んでいるらしい。

また生徒は田舎ということもあり、数が少なく十九人だった。


「あっ! 君このクラスだったんだ。よろしくね! 名前なんて言うの?」

辺りを確認していると、セクアナがいきなり知らない人に話しかけたからびっくりした。


すごいな、もう友達が出来たんだ……

なんか羨ましい。


「ぼっ、僕の名前はカナメです」

「そっか、カナメ君か。席も隣だし、よろしくね!」

「うん、よろしくお願いします」

彼の顔が少し赤くなりながらも笑っていた。

僕と同じように初めての人には喋りにくいのかな。もしそうなら僕ともいい友達になれそうだ。


「その子、誰なの。知り合い?」

「今さっきハンカチを親切に拾ってくれたの。誰かと違って優しかったなー」


笑いながら地味に嫌味を言われた。

まぁ、和めてよかった。


そうこうしていると先生が来た。ガタイがいい男の先生だった。

怒ったら怖そう……


「よーし、みんな集まっているかな。今日から担任になるイーグル・キャンベラだ。よろしくな! 今からホームルームを始めるぞ。今日はめでたい日だからこの話が終わったら下校だ。しっかり聞いとけよ」


この学校のことやお祝いの言葉そして、明日の持ち物のことなどを話していた。最後に魔道具のような小さなペンダントを2つもらった。

エメラルドのような綺麗な石が埋め込まれていた。


こんなの小さい子に持たせていいの?

壊したりしないのかな。


なんだか不思議なものだった。


「今からとっても大事なことを話すから聞いておけよ。これは、自分の魔法を少し使う代わりに身体能力が上がる道具だ。遠いやつもいるし、これを靴につけて歩くと楽に、かつ速く歩ける。明日から遅刻しないように気をつけろよ。以上だ。では帰りの挨拶だ。始めは俺が言おう」

「さようなら」

「さようなら!」


今までの話は真面目にしていて、怖がっている子もいたが最後の挨拶だけは最高の笑顔で先生は言った。

正直その笑顔はギャップがありすぎて可愛かった。


学校が終わり母の元へ戻った。まだ先生の可愛い笑顔が頭に残る。


その話は置いといて、早速今日もらった魔道具を使ってみた。


カチャ、カチャ


靴につけた途端、魔石が強く光りだした。


「うわぁ! お母さん綺麗だね」


セクアナも僕と同様につける。

「楽しそうね。明日からはちゃんと二人で行くのよ。特にトモヤ! あなた一人で帰ると迷子になるからセクアナと一緒に帰りなさい」

「はーい」


僕達は歩き出した。この魔道具のおかげで足が浮くかのように軽くなった。魔力をちょっとしか使わないから持続もできる。

とてもいい道具だ。

行きは少し疲れたけど、これをつけていると疲れる気がしない。


今日はみんなと手を繋ぎながらほのぼのと帰った。



帰った途端、

「オラァァァァァ!」

ドッカン!!


恥ずかしかったことの腹いせにセクアナは強力な魔法を石にぶち込んでいた。


うわ……

怖いな。できるだけ近づきたくない。

バレないように家の中へ入ろうとしたが呼び止められた。


「さあ! トモヤも修行修行! みっちり鍛えるからね!」

「ちょっと今日は疲れたから少し休ませてくれない……」

「何言ってんの? 早く始めるよ!」

「ええ……」


今日のセクアナはめんどくさそうだ……


嫌な予感を感じた。

それは的中し、この日の修行はセクアナの気分が晴れる夜遅くまで続いたのだった。


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